擬天黙示録<ギテンモクシロク> 第六話 従者と罪

マルコキアス♂ 26歳 悪魔、ソロモンが一柱、グレモリーの臣下、激情家、竹を割ったような性格。真名はカミール。
アスモデウス♂ 25歳 悪魔、七つが大罪の色欲、思考回路の殆どが性欲、絶対自分至上主義。
グレモリー♀ 26歳 悪魔、ソロモンが一柱、妖艶な女性、皮肉屋、マルコキアスに絶対の信頼を寄せている。真名はサフィ。




マルコキアス♂:
アスモデウス♂:
グレモリー♀:






グレモリー「リリース・・・・、ぐっ、うぁぁぁああ!っく、はぁ・・・はぁ・・・・、
      ふふっ・・・、思っていたより堪えてるわね・・・・」

アスモデウス「ソロモンが56位ともあろう者が情けない姿だな、この俺が介抱してやろうか?」

グレモリー「あら色欲、貴方もなりがよれよれじゃない、嵐に巻き込まれでもしたのかしら」

アスモデウス「あぁ、そうなのだよ、やはり四大天使の名は伊達ではないらしいな」

グレモリー「無様にやられて帰ってきたというのに、情けないのはどちらかしらね」

アスモデウス「ふっ、俺はまだ余力を残している、明らかにくたびれているのはお前の方であろう」

グレモリー「きっと貴方も人の体に戻れば同じよ」

アスモデウス「そんな物はとうに忘れたな、俺は力の消費よりも供給の方が多いのでなぁ」

グレモリー「下衆ね、私からの供給は期待しない方が良いわ、見ての通りよ」

アスモデウス「そのようだ、が、関係ないな」

グレモリー「どういう・・・・、っ、汚らわしい、その手を離しなさい」

アスモデウス「嫌ならば払いのけてみろ、そんな力が残っていればの話だがな」

グレモリー「何を考えているの、今の私を抱いても力の足しにすらならないわよ」

アスモデウス「ずっと惹かれていた、抱きたいと思った女は抱く、なんとしてもな、
       力になろうがならまいが、構わん」

グレモリー「ふふっ、抱きたいと思った女?目に付く女の間違いじゃなくて?」

アスモデウス「俺とて見境が無いわけではない、ただこの世にはイイ女が多すぎる」

グレモリー「そ、興味ないわ、多いのなら私じゃなくてもいいでしょう」

アスモデウス「極上の女を目の前にして去れと、冗談ではないなぁ」

グレモリー「っ・・・・、調子に乗らないで、早くその手を」

マルコキアス「その手を離せアスモデウス!」

アスモデウス「・・・・・・主の危険を嗅ぎ付けたか、犬」


グレモリー「擬天黙示録 第六話 従者と罪」


マルコキアス「その手を離せといっている色狂い、そのマラ、二度と使い物にならぬ様切り落とすぞ!」

アスモデウス「よく咆える駄犬だ、グレモリーよ、犬はちゃんと犬小屋に繋いで置かぬか、
       躾もなっておらん、飼い主の程も知れるぞ」

グレモリー「ふふっ、貴方の愛馬に比べたら大人しい物よ、不能になる前に手を離しては?」

アスモデウス「あぁ、そうさせてもらう、こう獣臭がするのでは気分も乗らぬのでな」

マルコキアス「グレモリー様、ご無事でしたか」

グレモリー「ありがとうマルコ、いい頃合だったわ」

マルコキアス「ありがたきお言葉」

アスモデウス「ふん、気に食わぬな」

マルコキアス「それはこちらも同じだ、主の許可さえあれば今すぐにでも切り殺している」

アスモデウス「ほぅ、俺はグレモリーの口から殺すな、とはまだ聞いていないがな」

マルコキアス「我が主は無駄な殺生が嫌いなんだ、例え相手が下衆だろうとな」

グレモリー「そうなの、ただ、無駄に生かすのも好きではないのだけれどね」

アスモデウス「この俺の生が無駄だと?」

グレモリー「そう言ったつもりだったけど、分からなかったかしら」

アスモデウス「他の悪魔が際限なく減らす人口を、増やす事に貢献している俺が無駄だと、
       ふっ!ならば世の中の童貞どもは更に無駄だなぁ」

マルコキアス「貴様の脳は性器に付いてるとしか思えないな、やはり切り落としておくか?
       そうすれば多少は頭で思考できるようになるだろう」

アスモデウス「貴様こそ、古典的条件付けでもされたか、さっきから同じ様な言葉ばかりだ、
       面白みに欠ける、それでは女にもてんぞ」

マルコキアス「ふん、女になぞ興味はない、我が忠誠を誓うはグレモリー様のみだ」

アスモデウス「あぁそうであったな、正(まさ)しく飼い主を盲信する犬ころだな」

グレモリー「そろそろ我が臣下を愚弄するのはやめていただきたいわね」

アスモデウス「ほぅ、これはまた悪魔らしくない言葉だ」

グレモリー「そうかしら」

アスモデウス「欲望、執着、盲信、依存、探求、慢心、人を悪魔たらしめる物は様々だ、
       その成り立ちが故に他を思いやらぬ者も多い、だが貴様らのように、
       自己犠牲をしてまでも守ろうとする者がいる、俺にはそれが理解できぬ」

グレモリー「貴方、生涯に一度でも何かを守りたいと思った事は?」

アスモデウス「愚問だな、無かったからこそ全てを捨て、我は欲を体現するまでに至った」

マルコキアス「なら一生理解できないな、俺達はお前の持ち合わせていない物の為に悪魔となった、
       そしてそれは、お前では今後手に入れることの出来ない物だろう」

アスモデウス「だとすればそれは俺の関心を寄せるものではないな、
       俺は欲しい物は必ず手に入れてきた、これからも変わらん、
       ならば、それは俺には不必要なものだ、腹の足しにもならぬ」

グレモリー「そう、ならこれ以上語らう必要はなさそうね、お互い、相手から得るものはなさそうよ」

アスモデウス「あぁ、語りからはこれ以上進展はなさそうだ、ならば後は力尽くで喰らうだけよ」

マルコキアス「っ、貴様、まだ言うか!」

アスモデウス「それこそが俺の存在意義!求め喰らうことを止めては俺ではなくなる」

マルコキアス「ならば今ここで存在を消してくれる!」

グレモリー「マルコ、およしなさい」

マルコキアス「しかし!」

グレモリー「マルコ」

マルコキアス「・・・・・・畏まりました、グレモリー様」

アスモデウス「どうした、俺に抱かれたくなったか?」

グレモリー「そんな訳無いでしょう、ただこのままでは埒があかない、
      だから条件をあげるわ、それを超えたら体を許しましょう」

マルコキアス「なっ、グレモリー様!」

アスモデウス「黙っていろ犬!飼い主の言うことが聞けぬのか?」

マルコキアス「くっ、貴様に言われる筋合いなど・・・・!」

グレモリー「マルコ、話が終るまで待っていなさい」

マルコキアス「・・・・仰せのままに」

アスモデウス「それで、条件とはなんだ、グレモリーよ」

グレモリー「貴方がマルコを倒す、それが条件よ」

アスモデウス「ふっ、シンプルでいい、ならば早速・・・・」

グレモリー「待ちなさい、戦闘は明日以降からよ」

アスモデウス「何?」

マルコキアス「何故ですか!今なら難なくこ奴を切り伏せることも可能だというのに!」

グレモリー「貴方たち、今情勢がどうなってるか理解できてるのかしら?
      停滞を続けていた物が突然動き出した、我々悪魔だけじゃなく天使だってきっと動き出すわ、
      ならば戦いは熾烈を極めるでしょう、ならば一人でも戦力は多いに越したことは無い、
      いいのよ、私としては、いつどこで貴方が朽ちようと。
      ただそれでは全体が困るから言ってるのよ」

アスモデウス「全体の事など知ったことか、俺は俺の欲望にしたがうまでだ」

マルコキアス「一時の激情に身を任せ出来ることを棒に振るか、それで構わないのであれば付き合おう、
       分かっているだろう、今のお前では俺に勝てぬことぐらい」

アスモデウス「やってみなければ分かるまい」

グレモリー「でも勝ち目が薄いことくらい分かるでしょう、いいのかしら?ガブリエルを物にする前に朽ちても」

アスモデウス「む・・・・・・・・・、よかろう、この場は預けよう」

マルコキアス「はぁ・・・・・」

グレモリー「分かっていただけたようで」

アスモデウス「いや、俺は奴に約束したのだ、必ず迎えに行くとな!」

グレモリー「あら、悪魔風に言うのであれば約束は破るものではなくて?」

アスモデウス「相手は天使だ、守ってやるのも一興だろう」

マルコキアス「貴様がそれでいいのならいいのだろう、さぁ気が済んだのならさっさと帰れ」

アスモデウス「そうさせてもらう、体を休め一日でも早くガブリエルを迎えねばならんのでな!
       あぁ愛しのガブリエルよ!待っているが良い!はっははははは!」

グレモリー「・・・・・・・・行ったわね」

マルコキアス「お疲れ様です、グレモリー様」

グレモリー「貴方こそ、苦労かけるわね、カミール」

マルコキアス「苦労だなんて、俺はそんな事微塵も思ってませんよ、サフィ様」

グレモリー「いいえ、貴方には助けられっぱなしだわ、人であった日からずっと」

マルコキアス「勿体無いお言葉です」

グレモリー「ふふっ、そういう所にも救われてるのよ、あの時からずっと変わらないその在り方に」

マルコキアス「変わりませんよ、サフィ様が望む限り」

グレモリー「ありがとう・・・・」

マルコキアス「いいんですよ、貴方が望むものは俺が望むものなのですから」

グレモリー「なら、これからも側で支えていて、私に残された守るべきものは貴方だけなのだから・・・・」

マルコキアス「はい、一生お側でお守りさせていただきます」


アスモデウス「次回予告」


グレモリー「本部を出立したミカエル達」

マルコキアス「見識をもっと深めるべきだ、というサンダルフォンに率いられ統治外の地域へ足を踏み入れる」

アスモデウス「次回、擬天黙示録 第七話 堕天せし者が守る村」

グレモリー「植え付けられた常識、それは簡単に崩れ去るものなのである」




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w