擬天黙示録 第五話 大罪を抱きし者

サタン♂ 25歳 魔王、悪魔の首領、七つの大罪を率いる者。
普段は落ち着いているが感情の起伏が激しい。真名はルーク。
ベルゼブル♂ 年齢不詳(見た目は青年) 残酷なまでに無邪気、無邪気であるほど残酷。七つの大罪、暴食を冠する。
アモン♂ 26歳 悪魔、サタンの友人。常に冷静で何を考えているか読めない性格。義に厚く、情は薄い。
リリス♀ 25歳 悪魔、魔王の妻。落ち着いていて許容の大きい性格。
七つの大罪、怠惰を冠する。真名はイヴ。




サタン♂:
ベルゼブル♂:
アモン♂:
リリス♀:



サタン「アモン、珍しいな、お前がここに来るとは」

アモン「友人に会いに来ることが不思議な事か?」

サタン「いいや、それに関してはなんら変わったことではないな、
    だがお前は用も無しに来る事はないだろ?」

アモン「そうだな、まずは確認だが、我々と奴らの間で大きい戦闘が二つあったのは知っているな?」

サタン「アスモデウスとグレモリーだな」

ベルゼブル「なら話は早い、君はこれからどうするつもりだい、サタン」

アモン「ゼブル、来てたのか」

ベルゼブル「当然だよアモン、こんなわくわくするのは久しぶりだからね!
      っで、サタン、どうするんだい、僕はどうしたらいい?」

リリス「ゼブル、首領の御前という事をお忘れかしら、少しはしゃぎ過ぎよ」

ベルゼブル「リリス、興が冷めるような事言わないでくれよ、僕は久しぶりに楽しいんだからさ」

リリス「楽しいのは貴方だけでしょ、それに、魔王だと言うのであれば相応の落ち着きを身につけたらどう?」

ベルゼブル「そろそろ黙れよ怠惰、背負った罪らしくどっかでサボってろ、
      それか模した悪魔らしく男の上で腰振ってなよビッチ」

サタン「黙るのは貴様だ暴食、五月蝿い羽を千切って捨てるぞ、蠅めが!」

ベルゼブル「蠅?今僕を蠅呼ばわりしたな、たかが堕天使如きが僕を蠅と呼んだな!?」

サタン「蠅を蠅と呼んで何が悪い」

ベルゼブル「っ・・・・!開き直るかよ、いいじゃん、そんなに死にたいなら殺してやるよ!」

サタン「それはこちらの台詞だ、蟲如き叩いて潰してくれる!」

ベルゼブル「やれるもんならやってみろよ!」

サタン「あぁやってやろう、自らの軽口を後悔しろ!」

アモン「よせサタン!ゼブルも落ち着け!」

ベルゼブル「何アモン、僕を敵に回すつもり?」

アモン「落ち着けと言っているんだ、ここでどっちが滅ぼうが知ったことではない、
    だが一時の感情で好敵手を殺して後が楽しいか?」

ベルゼブル「・・・・・分かったよ、ここは君に免じて収めてあげる」

サタン「貴様、リリスを愚弄してただで済むと思っているのか」

リリス「貴方、落ち着いて、私は気にしてないわ、だから」

サタン「・・・お前がそう言うのであれば、命拾いをしたなゼブル」

ベルゼブル「そういう事にしとくよ」

アモン「・・・・・おいリリス」

リリス「なぁにアモン」

アモン「本題に入る前から疲れたぞ」

リリス「あら、悪魔なのに生真面目なのは大変ね」

アモン「原因を作ったのはお前だろ・・・・・」


リリス「擬天黙示録 第五話 大罪を抱きし者」


アモン「本題に戻していいか?」

サタン「あぁ、すまなかった」

アモン「構わない、質問自体はゼブルと同じだ、サタン、これからどう動くつもりだ?」

サタン「俺自身はしばらく様子を見るつもりだ」

ベルゼブル「へぇ、意外だね、すぐにでも本拠地を潰しに行くものだと思ってたけど、
      奴らに対する怒りはそれ程でもないのかな、憤怒」

サタン「そんな訳あるものか、憎いからこそ苦しめる、すぐ終らせてしまっては満足出来ないからな」

リリス「手は打つつもりよ、折角本拠地が分かったのですもの、
    また雲隠れされてしまっては色欲の働きが無駄になってしまうわ」

ベルゼブル「あれ、あの戦闘はアスモの独断だって聞いてたけど」

サタン「あぁ、独断だ、俺は一切関与していない」

アモン「リリスの手回しでも?」

リリス「もちろん違うわ」

アモン「だとするとかなりの功績だな、膠着状態を脱せたのは大きい」

ベルゼブル「流石だと言うべきかな、背負った罪に恥じない行動原理だよね」

サタン「確かに、あれの動機はガブリエルへの執着のみであろう」

アモン「個人の欲で全体の利益を生むか、・・・・なんとも言えないな」

リリス「悪魔らしくていいんじゃないかしら、本来あるべき姿だとは思うわ」

サタン「どこぞの誰かとは大違いだ」

ベルゼブル「確かに大喰らいではないけどね、僕は美食家だから」

アモン「嘘を付け、一国の食料を食い潰した悪魔が何を言っている」

ベルゼブル「そんな事あったっけ?」

リリス「可愛い顔してても悪魔は悪魔ね」

ベルゼブル「やだなぁ、褒めても何もでないよ」

リリス「良かった、褒めてないもの、褒め損にはならないわ」

サタン「話が反れているが、もう終わりで良いのか?」

リリス「私は構わないわ」

アモン「怠惰、お前には聞いていない」

ベルゼブル「そうだよ、メンドクサイだけでしょ君は」

リリス「そんな事無いわよ、私は聞きたい事が無いだけ」

アモン「あぁそうだったな、四六時中サタンと一緒にいるからなお前は」

ベルゼブル「考えは大体聞いてるだろうしね、それはどうでもいいんだよ、
      明確な道筋が見える環境になって、それに対してどう動くか、
      そして僕は動いて良いのか、それが重要なんだけどね」

サタン「本拠地に乗り込むのは駄目だ」

ベルゼブル「言うと思ったよ、僕が攻め込んだら終っちゃうからでしょ」

サタン「そうだ」

ベルゼブル「なら誰を送り込むのさ?」

サタン「レヴィアタンを考えている」

ベルゼブル「それ、変わらなくないかな、僕と」

アモン「あいつでもすぐ終ってしまうのは変わらないだろう」

サタン「俺が滅ぼすなと言えば滅ぼさない、あいつはそういう奴だ」

ベルゼブル「何を考えているのかな、アレを送り込んで中途半端で終らす?
      何の意味があるんだい」

リリス「抑止力になればいいのよ、攻めるのに全精力を込めさせず、なおかつ回復する余地を与えない、
    かと言って滅ぼしてはならない、であればあの子は適任よ」

アモン「手を抜いても負けない程度の力を持っていて、なおかつお前に忠実な僕か」

サタン「適任だろう、ゼブルでは手を抜いていたとしても滅ぼしかねんからな」

ベルゼブル「高評価ありがとう、確認だけど、出し抜いて手柄独り占めだなんて考えてないよね?」

サタン「俺が手柄を立てたとして何の利益がある、これ以上の地位はない、領地も必要以上にある」

ベルゼブル「あぁそうだったね、あぁあ、興醒めだよ、僕は帰る」

アモン「ならば俺も最後に一つだけ確認をして帰るとしよう」

サタン「なんだ?」

アモン「本拠地に攻め込む以外は、どう動いても良いのか?」

サタン「あぁ、構わない、本拠地も壊滅させなければ問題はない」

アモン「分かった、ありがとう、では失礼する、またな」

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ベルゼブル「あぁー!面白くない、面白くない!」

アモン「待てゼブル!」

ベルゼブル「ん、何ー?僕帰ってご飯食べたいー」

アモン「確認をとった、本拠地を落とす以外は好きにしろ、だそうだ」

ベルゼブル「ふぅーん、それじゃあ、遠征隊は潰して良いって事だよね?」

アモン「そうなるな、何か掴んでいるんだろ?」

ベルゼブル「当然だよ、使い魔でちょちょいとね」

アモン「なるほどな、で、何があるんだ?」

ベルゼブル「サンダルフォンだよ、あいつが戻ってきたんだ、戦線にね」

アモン「へぇ、あいつがか」

ベルゼブル「ミカエルやウリエルと遠征に出るらしい、マルクトも一緒だって!
      ふふふっ、本拠地に攻め込むよりきっと楽しい、楽しいよ!」

アモン「はぁ・・・・、やっと機嫌を戻してくれたか・・・」

ベルゼブル「さぁ!帰るよアモン!楽しくしてくれたお礼にニクロスの料理をご馳走するよ!」

アモン「珍しいな、お前が食を他人に分けるとは」

ベルゼブル「だって、君が確認をとってくれなかったら町を一つ滅ぼしてる所だったもんね、
      もーあいつ、腹いせで食い散らかすと怒る癖にさー、中途半端に規制するんだから」

アモン「あぁそうだな、やってられないな」

ベルゼブル「そうだろ!君もそう思うよね!」

アモン「ゼブルの言うとおりだ、それよりも、お前の八つ当たりは相変わらずだな、
    もう少し規模を抑えられないのか」

ベルゼブル「え、大分抑えてる方だよ、これ以上人が減るのは良くないからね、
      もう国は滅ぼさないから安心してよっ」

アモン「あぁ、用心しとく」

ベルゼブル「えぇー!信用ないなぁ」

アモン「安心してくれ、これ以上ない程信頼してるぞ」

ベルゼブル「本当に?」

アモン「お前なら必ず何かやらかすだろうという鉄の如き信頼だ」

ベルゼブル「なんだってー!?」

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リリス「帰ったようね」

サタン「全く、騒がしい奴だ」

リリス「まぁ、たまにはいいじゃない」

サタン「たまにであればいいんだけどな」

リリス「そうね、彼はいつでも騒々しいわ、悪い子ではないんだけれどね」

サタン「悪魔にいい子がいるものか、執着し、捨てたからこそ、ここにいるのだから」

リリス「ルーク・・・・」

サタン「いいんだよイヴ、俺は後悔なんてしていない」

リリス「分かってるわ、分かってるけど、貴方の羽を黒く染めたのは」

サタン「お前のせいじゃない、原因はお前を追い詰めた奴ら全てにある、
    だから、それ以上自分を責めるな」

リリス「ありがとう、ルーク・・・」

サタン「構わないよ、復讐はまだ始まったばかりなんだ、これからだから」

リリス「私は、いいのよ?貴方さえいれば」

サタン「俺だってそうさ、けど世界がそれを許さないなら、俺は全てを敵にしたって構わない」

リリス「私も・・・、貴方と一緒にいられない世界なら、いらないから、だから、離れないでね・・・」

サタン「当たり前だ、家族も、友も、全てを捨てて今ここにいる、俺にはもうお前しかいないから」

リリス「ふふっ、ただ、ただ一緒にいられるだけで良かったのにね」

サタン「世界は残酷だな」

リリス「そうね、それなら、私たちはそれ以上に残酷にならなくちゃね」

サタン「あぁ、俺たちの愛を殺そうとするのなら、それ以上の報いを・・・・」


ベルゼブル「次回予告」


アモン「諍(いさか)いは天使と悪魔の中だけではなかった」

リリス「どんな組織であろうと、真に一枚岩である事は難しいことなのである」

サタン「次回、擬天黙示録 第六話 従者と罪」

ベルゼブル「そもそも悪魔を組織化する事に無理があると思うんだけどね、僕は」




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w