擬天黙示録 第四話 負傷した翼の帰還

ミカエル♂ 24歳 大天使、軍全体の指揮官をしている、生真面目で融通の聞かない性格。真名はアーサー
ラファエル♂ 26歳 大天使、医療班の指揮官、温和で冗談好き、医療の腕は確か。真名はセシル。
ウリエル♂ 23歳 大天使、遠征隊の指揮官、気が早く荒いタイプ、だが隊長としての腕は一流。真名はレオン。
サンダルフォン♂ 35歳 先代の軍団長、豪快で面倒見がいい、戦闘力は絶大。真名はクラーク。
ガブリエル♀ 24歳 大天使、本部防衛班の指揮官、優しく個を大切にするタイプ。真名はアンジェリカ。



ミカエル♂:
ラファエル♂:
ウリエル♂:
サンダルフォン♂:
ガブリエル♀:




サンダルフォンN「ミカエル達の帰還、仕事を終えたガブリエル達は彼らに報告をしようと出迎える、
         お互いが持ち寄った報告、それは、どちらも悪いものであった」


ミカエル「擬天黙示録 第四話 負傷した翼の帰還」


ウリエル「悪いなラファエル、助かったよ」

ミカエル「すまない、同胞の骸すら救ってやれなかった、私は指揮官失格だな」

ラファエル「それは気負いすぎだよ、ミカエル、下調べが不足していたのも確かだけど、
      今回は相手が悪かった、それを言い訳にしても罰は当たらない」

ミカエル「だが、あれだけの戦士を失ったのだぞ、それも歴戦の勇者ばかりをだ、
     それを、おめおめと自分達だけ帰還するなど・・・」

ガブリエル「生き残るのも将の大事な役割よ、貴方の死は軍全体の指揮を下げる事に繋がるのだから」

ウリエル「あぁ、言っとくけどお前の代わりはやろうと思って出来るもんじゃない、
     生きてて貰わないと困るからな、使命感強いのは分かってるけど、辞めようだとか考えるなよ」

ミカエル「・・・・・すまない」

ガブリエル「それに、私たちだって取り返しのつかない事をしてしまったわ、
      貴方が責を負って辞めるのであれば、私たちも辞めなくてはいけなくなってしまう」

サンダルフォン「おいおい、そしたら天使軍は誰が統率するんだよ」

ガブリエル「っ、その声は・・・!」

ミカエル「っ、サンダルフォン様!?」

サンダルフォン「よう、久しいな」

ウリエル「戻ってらしたんですね!お体はもう大丈夫なんですか?」

サンダルフォン「まぁな、あいつがここを出てったのももう大分前、休み過ぎたくらいだ」

ラファエル「そうは言っても、常人なら死んでた傷です、医師からすれば早すぎる退院ですよ」

サンダルフォン「あっははは!いい主治医を持ったからな、感謝してるぜラファエル」

ラファエル「いえいえ、サンダルフォン様の生命力の成せる技ですよ」

サンダルフォン「後遺症無くここに立ってられるのはお前の技術だ、謙遜してんじゃねぇよ」

ラファエル「ふふっ、いえいえ、と返したい所ですが敵いませんね、素直に受け取っておきましょうか、
      ありがとうございます」

サンダルフォン「三言くらい多いのは相変わらずか、素直じゃねぇな」

ガブリエル「表現も昔より遠まわしになりましたよ」

ラファエル「そんな事はありません、全てを話さないだけですよ」

ウリエル「それが回りくどいって言ってんだよ、なっ、ミカエル」

ミカエル「あ、あぁ、そうだな」

サンダルフォン「なんだミカエル、あの時の事まだ気にしてんのか?」

ミカエル「私が深追いなどしなければサンダルフォン様は今でもきっと第一線に立ってらっしゃいました、
     だというのにも関わらず、貴方は私を後任としてくださった、私は今でも申し訳なく思っております」

サンダルフォン「いや、お前はよくやってんよ、俺じゃあそこから立て直すのは無理だ、
        ミカエル、お前だからこそ付いてきてる奴らがいるのを忘れるな」

ミカエル「サンダルフォン様・・・・」

ガブリエル「そうよ、ミカエル、少なくとも私たちはね」

ミカエル「すまない、ありがとう・・・」

ウリエル「そういう訳だ、これからも頼むぜ、ミカエル」

ミカエル「あぁ、こちらこそ頼む」

ガブリエル「所で、サンダルフォン様、貴方が来たという事は、何かあったのですか?」

サンダルフォン「防壁、壊されたんだろ、戦闘が激化するのは火を見るより明らかだ」

ガブリエル「・・・・申し訳ございません」

ラファエル「まさかあんなに呆気なく破られるとは夢にも思ってませんでしたから・・・」

ウリエル「単騎でこの被害だろ、七つの大罪とソロモンの72柱、単純計算79人はこんなんがいるんだろ」

ミカエル「力の大小はあるだろうが、あれらが最強クラスだとも限らん」

サンダルフォン「ソロモンは詳しくないが、七つの大罪はかなりの粒揃いだ、
        なんせ筆頭はサタンことルシファーだからな」

ミカエル「ルシファーの・・・・」

ラファエル「彼の選りすぐりの7人か、あの性格を考えると、近いレベルが集まってると考えても良さそうだね」

ウリエル「ラファエルとガブリエルは大罪の一つ、アスモデウスと戦ったんだろ、どうだったんだ?」

ガブリエル「気持ち悪かったわ」

ウリエル「は?」

ガブリエル「あ、い、いえ、強かったわよ、あれが複数人いると思うと気が滅入るわね」

ミカエル「攻撃力を考えると侮れんな、防壁をいとも簡単に破れる程だからな」

ラファエル「そっちはカウンターが強かったみたいだね、どっちにしても厄介だ」

サンダルフォン「そこでだ、軍を率いず、少数精鋭で各個撃破を考えている、
        ルシファー離反時に軍を離れたものもいるからな、途中で拾ってくのもいいだろうし」

ガブリエル「ここの護りはどうするのですか?」

サンダルフォン「それは今までどおりだ、ここには一般人も沢山住んでいる、留守には出来ないからな」

ウリエル「なら俺は今まで通り外回り組だな、留守番とか性に合わないからな!」

ラファエル「それであれば、僕とガブリエルは守護ですね、防壁を維持し続ける必要がありますから」

ガブリエル「そうね・・・、襲撃が増える可能性を示唆すると辛いわね・・・」

ミカエル「私は・・・・」

サンダルフォン「どうするんだ、ミカエル」

ウリエル「一緒に行こうぜ、みんなの仇も討たなきゃいけないだろ」

ラファエル「そうですね、僕も医者として行く事をオススメしますよ、
      貴方の精神状態では引き篭もっていてはあまりよろしくない」

ミカエル「医者としてか、そう言われると反抗したくなる、人の心理というものは不思議だな」

ガブリエル「それは人ではなくて子供の心理よ、もう24なのだからお医者様の言う事は聞きましょう」

サンダルフォン「あっははは!まるで母親だなぁガブリエル!」

ガブリエル「っ、私はまだ独身です!それに伴侶がいたとしても、
      こんな世の中じゃ欲しくても安心して作れませんよ」

サンダルフォン「そうか、ならこの戦いも一年以内にケリをつけねぇとなぁ」

ガブリエル「何故ですか?」

サンダルフォン「ミカエルが24ならお前も24だろ、子供は若いうちに産んどくもんだぜ」

ガブリエル「なっ・・・・!?」

サンダルフォン「なぁラファエル?」

ラファエル「そこで僕に振りますか!僕だってまだ独身ですよ」

サンダルフォン「そこじゃねぇよ、若いうちの方がリスクも少ねぇだろ?」

ラファエル「医学的観点ですか・・・・!僕としたことが・・・・、そうですね、高齢になればなるほどリスクは増しますからね」

ウリエル「それに、戦いが終ってすぐ結婚できるとも限らないし、な、ミカエル?」

ミカエル「ウリエル、何故そこで私にふる」

ウリエル「さぁて、本気で分かって無いのか、はぐらかしているのか」

ミカエル「っ、ウリエル、貴様・・・・!」

ウリエル「うっわ、ミカエルが怒った、おっかねー」

サンダルフォン「どいつもあれから変わってねぇなぁ、懐かしいぜ」

ガブリエル「サンダルフォン様がいけないのです!あんな話題を出すから・・・!」

サンダルフォン「そろそろ考えても早すぎる年ではねぇだろう?戦士が剣を置ける世界を作らなきゃなんねぇ、
        苦労してんのはお前らだ、幸せになる資格は持ってる、だが、その世界を作るのはお前らだ、
        ならお前らがいつ幸せになれるかはお前ら次第なんだよ」

ミカエル「サンダルフォン様・・・」

サンダルフォン「だから、お前が決めたらいい、世界のタメにばっかりじゃ疲れちまうぜ?」

ミカエル「・・・・・ふっ、マルクト様とは上手くいってらっしゃるんですね」

サンダルフォン「おぅ、言わずもがなだ、今回は彼女も連れて行くからな」

ウリエル「この人おくびも無く惚気たよ、まぁ、そういう人だって分かってるからいいんだけどさ・・・」

ラファエル「ミカエル、サンダルフォン様に嫌味は効きませんよ、混ぜっ返されるだけです」

ミカエル「あぁ、挑んだ私が馬鹿だった、わかりました、私も行きます、ここでじっとしていても何も出来ない、
     手足のように尽くしてくれた彼らはもういない、ならば自らの手足で動かねばならない、
     彼らが望んだ世界を、そして私の望む世界をこの手で掴まねばならない」

サンダルフォン「お前らしい答だ、良いだろう、なら準備が出来次第出立だ、ラファエル!
        この二人の傷、サクッと治せぃ!」

ラファエル「はぁ・・・・現役を一度退いても人使いの荒いお方だ、
      さぁ、二人とも、ちょっと手荒になると思うけど、治療室に行くとしようか」

ミカエル「そうだな、頼むラファエル、次の戦いに支障が出ないようにしてくれ」

ウリエル「んだな、全力で動けるようにしてくれよ!」

サンダルフォン「いやぁ、数年ぶりだったが、元気そうで安心したぜ」

ガブリエル「サンダルフォン様の人柄の成せる技ですよ」

サンダルフォン「俺は形式上退役した天使だ、そんな肩肘張らなくていいんだぜ、アンジェ」

ガブリエル「クラークさん・・・」

サンダルフォン「アーサーは真名で呼ばれるの嫌うだろ、呼ぶのも」

ガブリエル「そうですね、あの人はミカエルという存在から自分を徹底的に排除してる、
      本当不器用、一所懸命なのは分かるんだけど、見てるこっちが不安になってしまう」

サンダルフォン「お前さんは優しいからな、あいつがあの様子じゃ進展もないだろうしな」

ガブリエル「そうですね・・・、って、クラークさん?」

サンダルフォン「安心しろ、周知の事実だ、多分アーサーも気付いてんだろ」

ガブリエル「でしょうね、はぁ・・・・、レオンの言うとおりだわ、
      きっと戦いが終ってもすぐは結婚なんて望めないだろうなぁ」

サンダルフォン「俺が復帰したからには現状維持じゃ済まさない、戦況も、お前らの恋もな」

ガブリエル「貴方のお節介も変わってませんね、戦況は期待してますけど、
      恋の方は程々でお願いしますね、きっとあの人意固地になるだけだから」

サンダルフォン「あり得るなぁ、あぁ、大丈夫だ、任せとけ、クラリスにも協力してもらうからな」

ガブリエル「クラリス様かぁ・・・・、うん、それなら大丈夫そうですね」

サンダルフォン「なんだぁ、俺だけじゃ不満ってか?」

ガブリエル「不満より不安です」

サンダルフォン「んだとぉ!」

ガブリエル「ふふっ、大丈夫です、気まずくなる事はあっても嫌われる事はないって信じてますから、
      クラークさんも大人だから引き際分かってるでしょうし」

サンダルフォン「アンジェ、それは褒めてねぇぞ、お前」

ガブリエル「褒めてませんよ、信頼はしていますけど」

サンダルフォン「・・・・セシルに似たか?」

ガブリエル「あぁー、一番一緒にいる時間が長いから影響されちゃいましたかね」

サンダルフォン「止めておけ、もてなくなるぞ」

ガブリエル「いいんです、私はアーサーがいれば」

サンダルフォン「あっははは!それもそうだ!さぁって、明日からまた忙しくなるぞ!
        ここもしばらくは戦闘が続くだろうからな、お前もゆっくり休めよ」

ガブリエル「えぇ、クラークさんもごゆっくり」


ウリエル「次回予告」

ラファエル「彼らの元上官サンダルフォンの復帰で戦況は大きく動こうとしていた」

ミカエル「長らく停滞していた戦争、それに光を見たのは天使だけではなかったのだ」

ウリエル「次回、擬天黙示録 第五話 大罪を抱きし者」

ラファエル「彼らがまだ天使だったのなら、この戦いも既に終わっていただろうに・・・」



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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w