擬天黙示録 第三話 襲来、アスモデウス

ラファエル♂ 26歳 大天使、医療班の指揮官、温和で冗談好き、医療の腕は確か。真名はセシル。
ガブリエル♀ 24歳 大天使、本部防衛班の指揮官、優しく個を大切にするタイプ。真名はアンジェリカ。
アズラエル♂ 26歳 天使の人事部管理官、冷静で現実主義、ラファエルとは旧知の仲。真名はクリス。
アスモデウス♂ 25歳 悪魔、かなり名の売れた悪魔で、女好きで有名。



ラファエル♂:
ガブリエル♀:
アズラエル♂:
アスモデウス♂:



ガブリエル「ねぇラファエル、ちょっといいかしら」

ラファエル「ん、どうしたんだい?」

ガブリエル「凄く、嫌な予感がするのよ」

ラファエル「神託の天使、ガブリエルの嫌な予感か、それは心穏やかじゃないね、
      でも、きっと、ミカエル達なら心配いらないよ」

ガブリエル「そう信じたいけど、けどそれだけじゃない気がするの」

ラファエル「それだけじゃない?」

ガブリエル「えぇ、もっと違う、何かが・・・・」

ラファエル「ふむ・・・・、っ、揺れたね」

ガブリエル「揺れた・・・・わね」

ラファエル「地震の揺れではないようだけど・・・」

アズラエル「セシル!いるか!?」

ラファエル「いるよ、どうしたんだい、アズラエル?」

アズラエル「ん、なんでそっちの・・・・、っ、ガブリエル様」

ガブリエル「こんにちは、アズラエル」

アズラエル「こんにちは、ガブリエル様、申し訳ございません、お見苦しい所を・・・」

ガブリエル「いえ、構いませんよ」

ラファエル「君が慌ててるとなると、いい予感はしないね」

アズラエル「正(まさ)しくその通り、ただ今、敵襲を受けています、この揺れは敵の攻撃が建物まで届いてる物です」

ガブリエル「なっ、ここに攻撃がですか!?」

アズラエル「はい、ガブリエル様、ラファエル様、お二方の防壁を貫通し、本部まで攻撃が到達しております」

ラファエル「よろしくないね、出よう」

ガブリエル「えぇ、久しぶりね、直接防衛に出るのは」

アズラエル「お供しましょう、たまには動かさぬと体が錆付いてしまうゆえ」

ラファエル「おや、君と肩を並べて戦うのは久しいね、楽しみだ」

ガブリエル「では行きましょう」


アスモデウス「擬天黙示録 第三話 襲来、アスモデウス」


ラファエル「・・・・・一人しかいないけど、あれで全てかい?」

アズラエル「あぁ、報告ではそうだな、反応は一、あいつのみと聞いている」

アスモデウス「ククク・・・・、アッハハハハハハ!やっと再会出来たな、ガブリエル!
       会いたかった、会いたかったぞ!」

ラファエル「・・・・ガブリエル、呼んでるよ、知り合い?」

ガブリエル「いいえ初対面です、貴方は誰、名を名乗りなさい!」

アスモデウス「名を名乗れ?フッ、冷たいじゃないか、夢の中ではあんなに素直だったと言うのに、
       だがいいだろう、この俺の名を知りたいというのであれば教えてやろう、
       我が名はアスモデウス、七つの大罪が一つ、色欲を冠(かん)せし者だ!」

アズラエル「・・・・・・これは、大物がいらっしゃってた様だ」

ラファエル「そのようだね、アスモデウス、僕の名前は・・・・」

アスモデウス「男は黙っていろ!用があるのは女だけ、即(すなわ)ち、ガブリエルだけだ!」

ラファエル「だそうだよ、ガブリエル」

ガブリエル「凄く係わり合いになりたくないわ・・・」

アズラエル「ただ、こちらの名すら聞いていただけないようですから、
      ガブリエル様が話されるしかないのでは?」

ガブリエル「・・・そうよね、分かったわ、アスモデウス、私が・・・・」

アスモデウス「おぉガブリエル、夢で聞いたとおり美しい声だ、
       そして自ら進んで我が前に出るとは、そんなに会いたかったか、
       あぁ、迎えに来てやったぞ、このアスモデウスがな!」

ガブリエル「・・・・・・私の話も聞いてもらえないようだけど?」

ラファエル「出迎えては、貰えてるみたいだけどね」

ガブリエル「嬉しくないわ、とても嬉しくないわ」

アズラエル「そうでしょうね、滅しますか?」

ラファエル「そうしよう、百害あって一利なしだ、聖なる風よ、我に仇(あだ)なす敵に神罰を、
      戦風・葬嵐<センプウ・ソウラン>!」

アスモデウス「ぬっ」

アズラエル「やったか・・・・? いや、ワザと当たったか」

アスモデウス「男・・・、貴様に用はないと、なんど言ったら分かる」

ガブリエル「そんなにお気に召さない?それなら私が相手をしてあげる、
      生命の水よ、牙剥きて天より打ち葬りたまえ、水葬・業雨<スイソウ・ゴウウ>!」

アスモデウス「っ、長旅の汚れを洗い流すには荒っぽいな、まぁ急ぐな、
       邪魔者なんぞすぐに消してやる、その後存分に堪能してやる、そう急ぐな」

ガブリエル「嘘、ビクともしない・・・?」

アスモデウス「さて、始めようか!ラスト・ヘクサグラム、リストリクションズ・ランス!」

ガブリエル「くっ、大きい、けど!神よ、信ずる者に救いの手を、神壁・昇滝<シンヘキ・ショウロウ>!」

アスモデウス「ほぅ、流石だなぁガブリエル、そんなに俺を受け止めたいか!」

ガブリエル「いや、あいつ本気で嫌」

アズラエル「同感です、真名が分からないと本気が出せないのだが、まぁいいだろう」

ラファエル「ん、アズラエル、あれをするつもりか」

アズラエル「障壁(しょうへき)が破られた、となれば敵全てにこの地が割れたも同然、
      なれば、あ奴を難なく殺しておけばあれより弱いのはそうそう来なくなる」

ガブリエル「なるほど、あれをここで殺す事には大きい意味がありそうね」

ラファエル「ふむ・・・、君の力はなるべく敵には知られたくなかったのだけれど、仕方が無いか」

アズラエル「・・・・ミカエル様に叱られそうだな」

ガブリエル「訳を話せばきっと理解はしてくれるわよ」

アズラエル「では、ガブリエル様の言葉を信じましょう、落ちし葉に記された名はアスモデウス、
      生命の書よ、摂理(せつり)に逆らい、彼の者の名をその身から消し去りたまえ!」

アスモデウス「っ、ぐぅぅぅぅぅうううううううう!?」

ラファエル「効いてる、あれなら・・・・」

アズラエル「いや・・・・、何か手ごたえが違う・・・・!」

ガブリエル「この術の手ごたえが・・・・?」

アズラエル「なんだ・・・・これは・・・・!」

アスモデウス「ぐ・・・・ぅ、ク、クククッ・・・・・、名を媒体に命を直接傷つけるか・・・・、中々やるな・・・、
       悪魔のような所業だ・・・、だが、真名を知りえぬ限り、俺にその術は・・・・・効かん!」

アズラエル「なっ、確かに今命を終わらせた感覚があった、なのに、生きているだと・・・・!?」

ラファエル「・・・・・まさか、悪魔信仰か」

アスモデウス「フッ、よく知っている、俺達悪魔を信仰する人間は腐る程いる、それも狂信的にな、
       数は貴様ら天使に負けるかもしれないが、深さでは我々には勝てない」

アズラエル「ならば、今俺が殺したのは・・・・」

アスモデウス「そうだ!俺を信仰し、アスモデウスの名を騙る一般人だ!」

アズラエル「やはり、真名を知らぬまま使ったのがまずかったのか・・・、
      無関係な者を無駄に死なせるなど・・・」

ガブリエル「そんな事ないわ、無駄にはさせない、させてはいけない!
      大地に染みた恵みの雨よ、世界に仇なす者を身元に帰し給え、吹泉・昇竜<スイセン・ショウリュウ>!」

アスモデウス「っ、ぐぉ!?」

ラファエル「効いた?」

アズラエル「やはりさっきので平気な訳が無いんだ、畳み掛ける、はぁ!」

アスモデウス「ぐぅぅぅ!」

ラファエル「巻き上る風は龍が如く、切り裂け、龍牙・竜巻<リュウガ・タツマキ>!」

アスモデウス「ぐぁぁぁああああ!」

アズラエル「やった!?」

アスモデウス「ごふっ・・・・・、なんてな」

ガブリエル「なっ・・・・、まだ、生きてるの・・・・?」

アスモデウス「俺達の体は丈夫だからな、伊達に人やめて無いからなぁ」

アズラエル「まさか名のある悪魔がこれ程とは・・・」

ラファエル「なるほど、人をやめると限界を超えても、
      顔色一つ変えれずに強がりが言えるようになるんだね」

ガブリエル「限界を超えても?」

アスモデウス「ふん、面白くない、流石は医術のラファエル、お見通しかよ」

ラファエル「あれ、興味ないとか言っておきながら、僕の事知ってるんだね」

アスモデウス「貴様らが俺たちを知ってるように、俺達の中で有名な天使だっている、当然だ」

ラファエル「これはこれは、光栄だね、それで、君はどうするつもりだい?
      強がった所で形勢が変わる訳でも無いでしょ」

アスモデウス「ハッ、悪魔を舐めるな、我は色欲を司りし魔なり、封じ込められた人の欲よ、
       解き放て、そして溺れよ、快楽の坩堝(るつぼ)へと!ラストイロウション《侵蝕する色欲》!」

ガブリエル「っ、ひ、っぅ、なに、これ・・・・・」

アズラエル「は、ははっ、舐めてるとしか思えないな、これは・・・」

アスモデウス「ククッ、あっはははは!天使と言えど人としての欲には勝てまい!
       堕ちるか?いいぞ、素直に従えば俺が喰ってやるぞ、糧としてやろう!」

ラファエル「ふむ・・・・・、脳内に興奮させる物質を過剰発生させる術か、これは思ったより効果的だね」

アスモデウス「・・・・・お前、面白く無いだろ」

ラファエル「いいや、僕は楽しんでるよ、人体の神秘、これ程興味深い事は中々ない、
      今だって自分の変化をどう医学的に止めようか悩んでいる所だよ」

アズラエル「よく、冷静でいられるな、ラファエル・・・・、楽しんでないで、早く、なんとかしてくれ・・・」

ガブリエル「ラファエル・・・、お願い、早く・・・・、こんなの、私イヤよ・・・・」

ラファエル「んー・・・・・」

アスモデウス「ハッ、なら、もっと早く全てを忘れさせてやろう、そぅら!」

ガブリエル「っくぅぅぅぅう!」

アズラエル「ぐ・・・・ぅ、まずい・・・・ぞ、これは・・・・」

ラファエル「あぁ、なるほど、色欲を邪魔してるのは知的好奇心か、
      ガブリエル、アズラエル」

アズラエル「なん、だ・・・?」

ラファエル「今やるべき事は欲情する事かい、戦うことでしょう?
      別の感情でその感情を塗り潰すんだよ」

ガブリエル「感情で・・・・、戦う・・・、あいつを、倒す・・・・・!」

アズラエル「なるほど・・・・・、これなら戦えそうだ・・・・・」

アスモデウス「・・・・・・面白くないな、だが、本当に戦えるのか?」

ラファエル「正直、難しいね、この体の状態だと、意思に抵抗できてもね」

アスモデウス「ならば好都合だ、俺は帰るぜ、遠慮なくな」

アズラエル「くっ、待て、ここで逃がすわけには・・・」

ガブリエル「ん・・・・・、だ、め、近寄っちゃ、保てなく、なるよ・・・・」

アスモデウス「よく分かったな、ガブリエル、やはりいい女だ、
       いつかお前を貰いに来る、その時まで待っていろ、必ずだ、いいな!」

ラファエル「・・・・・・うん、助かったね」

アズラエル「だが、ここで逃がしては・・・・!」

ガブリエル「はぁ・・・・・、足腰立たない・・・・、みんな無事だったから、それでいいのよ」

アズラエル「・・・・そう、ですね」

ラファエル「さて、戻ろう、仕事が山積みだよ、負傷者の治療、障壁の再生」

ガブリエル「先に休んじゃダメかしら・・・?」

ラファエル「んー、じゃあ一眠りしたらすぐ仕事だよ」

ガブリエル「えぇ・・・・・、そうよね、分かったわ・・・・」

アズラエル「はぁ・・・・、ミカエル様の怒る顔が頭に浮かぶよ」

ラファエル「そうだね、彼らが帰ってくる前に立て直すよ」

ガブリエル「了解」


アスモデウス「次回予告」

アズラエル「しかし、あんなのが他にもいると考えると憂鬱になるな」

ガブリエル「七つの大罪が一つ、って言ってたわね」

ラファエル「となると、あれクラスがもう六人いると考えても良さそうだね」

ガブリエル「ソロモン72柱というのも聞いたことがあるわよ」

アズラエル「ミカエル様方は無事ですかね・・・・・」

アスモデウス「次回、擬天黙示録 第四話 負傷した翼の帰還、
       ふん、今の所一勝一敗と言った所か、見ていろ、すぐに巻き返してやる」



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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w