箱庭の世界で 第六十六話 譲れぬ想い
          第六十七話 天使の過去と慰め

火炎♀ 18歳 (かえん)
スノウ♀ 18歳
イト♀ 20歳

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火炎♀:
スノウ&イト♀:



スノウ「悪魔覚醒《アオフヴェッヘン・トイフェル》、手加減はしないわ、この戦い、長引かせる理由なんてないもの」

火炎「私だって容赦しない、ウィップ・オン、スペルモードオン、BPM on 100、
   まずは、最短で貴方の心折ってあげる」

スノウ「やれる物ならやってみなさい、氷槍雨《アイスランツェ・レーゲン》!」

火炎「これなら、ネロ君のナイフの方がよっぽど避け辛い!」

スノウ「なっ、槍の雨を潜り抜けてくるなんて・・・!!」

火炎「今度は私の番、鞭奏アルペジオ!」

スノウ「この程度簡単に避けられ、っ、きゃあ!?」

火炎「簡単な訳無いでしょ、私の鞭は楽器であると同時に音そのもの、
   まずは音速を超えることをオススメするよ」

スノウ「くっ、大きく出たわね、ならこれでも本当に、付いてこれるかしら!」

火炎「翼で空に・・・、いいよ、得意じゃないけど、付いていってあげる、
   BPM on 200、さぁ、行くよ!」

スノウ「足元を爆破させその反動で空を飛ぶ、その程度の飛行法で翼に勝てると思ってるの?」

火炎「この程度で勝てるとは思ってないよ、だけどこの程度だと、思わないで!」

スノウ「っ、危ない、良く伸びるのねその鞭、まさかここまで届くなんて・・・」

火炎「フェルマータ、よっと、はぁぁぁあああ!」

スノウ「鞭の上を走って!?くっ、氷槍《アイスランツェ》!」

火炎「撃つのは一発でよかったの、かな!」

スノウ「う、来ないで、オーロラの盾《アオローラシルト》!」

火炎「エクス、プロード!」

スノウ「きゃあああああああああ!?」

火炎「やった・・・!」

スノウ「くぅ、調子に乗って、氷の弾丸《アイスゲショス》!」

火炎「っ、きゃあ!?」

スノウ「体勢を崩してしまえば、翼のあるこちらの物よ、吹雪《シュネーシュトゥルム》!」

火炎「くっ、バーン・ウォール・フォルテ!」

スノウ「前に気を取られて後ろがお留守よ」

火炎「っ!?」

スノウ「今度は逃がさない、氷槍豪雨《アイスランツェ・レーゲングス》!」

火炎「集中しろ私・・・、ここ、ぐぅ!」

スノウ「なっ、最初に当たった槍を掴んで・・・・!?」

火炎「このまま地面まで行けば・・・、ぐ、あぁ!ウィップ・オン、ぜぇぇええい!」

スノウ「あんな凌ぎ方・・・、あり得ない・・・」

火炎「あり得ない?レリクムさんならもっとあり得ない避け方してたよ」

スノウ「あの神父と、知り合いなの・・・?」

火炎「私をここまで強くしてくれた、お師匠様だ」

スノウ「くっ、あいつ、何を考えているの・・・!」

火炎「分からない、けど、あの方に言われたって教えてもらっただけだもん」

スノウ「あの方、まさかケイオス・・・、何よ、私の周り、本当に敵しか・・・」

火炎「スノウさん、迷ってたら、すぐに終らせちゃうよ」

スノウ「くっ、私の気持ちも知らずによくもそんな事を・・・!」

火炎「知らない、けど、私は迷ってない、焔を取り戻すためなら、なんだって関係ない!」

スノウ「焔・・・、そうだ、私には焔が、譲らない、焔は、私のだ!」

火炎「そうだよ、本気のスノウさんに勝たなきゃ、意味がないんだ!」

スノウ「迷いさえなければ、貴方になんて負けない、負けるもんですか、
    天災・雪の大嵐《カタストローフェ・シュネーゲヴィッター》!」

火炎「オーバービート・エクストラトーン、オーバーヒート・フレイムボディ、
   この炎が消える前に、抜け切る、はぁぁぁぁああああああ!」

スノウ「そんな炎で防げる嵐なん・・・」

火炎「どこを見てるの?」

スノウ「なっ、後ろ!?」

火炎「鞭奏バーンレクイエム、はぁぁぁぁあああああああ!」

スノウ「っ、きゃぁぁあああああああああ!」

火炎「はぁ・・・はぁ・・・、げほっげほっ・・・、お願い、立ち上がら、ないでよ・・・」

スノウ「づ・・・、ま、だ、まだ・・・」

火炎「っ、嘘・・・・」

スノウ「っ!・・・・体、うごか、ない・・・、嫌、こんな所で、負けるなんて・・・・!」

火炎「私の、勝ちだよ、スノウさん」

スノウ「まだ、まだ負けて・・・!」

火炎「鞭奏バーンシンフォニック」

スノウ「っぐぁぁああああああ!」

火炎「私の、勝ちだよ」

スノウ「ふ、ふふっ・・・・、変わった、のね、貴女も・・・・」

火炎「当たり前でしょ、私だって、負けるわけにはいかないの」

スノウ「・・・・分かったわ、負けを、認めるわ」

火炎「・・・・本当、に?」

スノウ「えぇ・・・、本当よ・・・、でも、一つ、先に教えといてあげる・・・」

火炎「・・・・何?」

スノウ「実は私も、貴女と暮らしてきた焔と、話したの」

火炎「何か、何か言ってた!?」

スノウ「色々と、でも、私の事、嫌いになれるわけ無いって・・・」

火炎「っ!?」

スノウ「私と過ごした焔には、貴女の記憶は無かった、けど、彼には私の記憶があった・・・」

火炎「・・・・・・嘘、だよね?」

スノウ「本当よ、本人に確認してみたら?もうすぐ、会えるでしょ?」

火炎「で、でも、それが本当だとして、気持ちまで残ってるなんて・・・・!」

スノウ「貴女達と引き離した私を、嫌いになれるわけないと言っているのに?残ってないって言うの?」

火炎「・・・・・・」

スノウ「まぁでも、負けた私が言える事じゃないわね、さ、仲間になればいいのでしょう?
    どうしたらいいのかしら?」

火炎「会長たちに結果を伝えてきて・・・、一人で、説得してきてよ・・・」

スノウ「私一人で説得に?本当にいいの?」

火炎「・・・・・いいよ、行ってよ」

スノウ「え?」

火炎「行ってって言ってるの!さっき言った通りなら、スノウさん一人で充分でしょ!」

スノウ「・・・・本当にそれでいいの?」

火炎「うるさい・・・、それ以上、聞きたくない・・・」

スノウ「・・・・・・えぇ、それじゃあ」

火炎「っ、ひっく、ぁ、うわぁぁああああ!」

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イト「どうしたの、火炎ちゃん」

火炎「っ、イトちゃん・・・、ぐすっ、大丈夫、大丈夫だから、みんなの手伝いに・・・」

イト「うん、みんなの手伝いをする為にここにいる、もう一回聞くよ、どうしたの?」

火炎「だから、大丈夫だって・・・」

イト「戦いの勝者が泣いてて、大丈夫?冗談も休み休み言ったら?僕を甘く見ないで、
   このまま居なくなろうたって逃がさないから」

火炎「っ、なんでそれを・・・」

イト「やっぱり、そんな事だろうと思ったよ、火炎ちゃん、心折れる度に思い詰めきっちゃうのやめなよ?」

火炎「・・・・・そんなの無理だよ、もう、目の前が真っ暗なの、どうしたらいいかも分からないの・・・」

イト「だからって戦わずに負けるつもりなんだ」

火炎「戦ったよ!戦って勝ったけど、だけど、焔がいなきゃ、何の意味もないよ・・・」

イト「戦ってないよ、火炎ちゃんはまだスノウを味方に引き込むって言う戦いに勝っただけだ、
   焔を取り戻すための戦いはまだじゃんか」

火炎「・・・・・・・・」

イト「らしくないよ、強くなったのは体だけ?」

火炎「そんな事、ない」

イト「ん?」

火炎「そんな事無い、そうだよ、こんな所で立ち止まってるわけには行かないんだ・・・」

イト「うん、それでこそだね、ただ、ちょっとだけ待とうか」

火炎「な、何?」

イト「勢いあるのはいいんだけどね、焦っててもいい結果は出ないからね」

火炎「でも、落ち着けって言われても何すれば・・・」

イト「よかったら思い出話に付き合ってくれない?」

火炎「思い出話?」

イト「そっ、思い出話、これからの参考になればいいなぁって、まぁならないだろうけど」

火炎「これから・・・・」

イト「うん、ほら、僕ってこれでも普通のハタチがしてないような経験一杯してるから、
   真似しろーなんて言わないし、むしろやめとけって言っちゃうけど、
   いい所だけ吸収してくれたらなぁって、火炎ちゃんならできると思ってるからね」

火炎「そっか、それじゃ、思い出話、付き合うよ」

イト「ありがと、火炎ちゃんはさ、セイントナイツの事、どんな風に知ってる?」

火炎「えっと、天界の騎士団、って事じゃなくて?」

イト「んー、もっとこう、歴史的な?」

火炎「歴史って言われても、天界の昔の事なんて、こっちじゃ調べようと思わないと分からないし・・・」

イト「なるほどね、じゃあ天界で世間一般どう思われてるかって所からなんだけど、
   僕達ってさ、圧政を布いてた暴虐の神から民を救い、新しい神、レスタの事だね、
   を今の地位に持ち上げた英雄、って認識なんだ」

火炎「へぇー・・・、英雄、なんだね・・・」

イト「ううん、そんな立派なものじゃないよ、実際はね、意地汚く生きる為に戦い続けたら、そうなってただけなんだよ」

火炎「生きる為に、でも、生きる為に戦うのって当然じゃないの・・・?」

イト「そ、でもそうじゃない人だって沢山いるでしょ、火炎ちゃんは生きる為に戦ってる?」

火炎「・・・・ううん」

イト「でしょ、僕達だって英雄になりたくて戦ってたわけじゃない、むしろ英雄になる為に、
   だったら途中で投げ出してるかな、死にたくなかったから最後までやってられたんだ、
   火炎ちゃんはさ、世界を救うためにって言われたらそこまで強くなれたかな?」

火炎「無理だったと、思う」

イト「うん、そういう事だよ、まぁ僕は元々騎士の町の出で、剣の道を志してたからってのはあるけど」

火炎「騎士の町、天界にそんな町が?」

イト「そ、今はもうないんだけどね、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんも、近所の皆も騎士だったんだ」

火炎「凄い町だね、きっとみんな強かったんだろうな」

イト「・・・・・うん、強かったよ、凄く強かった、だから、狙われた、皆、殺された」

火炎「・・・・・・・誰に?」

イト「神様、自らの地位を脅かされるのが嫌だったんだろうね、町の皆は意識も高かったから」

火炎「みんな、神様になりたかったんだ」

イト「神様になりたかった訳じゃない、苦しんでる人々を救いたかっただけなんだよ、
   そしたら、みんな、殺されちゃった」

火炎「イトちゃん・・・」

イト「お父さんやお母さんが逃がしてくれたんだ、生き残ったのはね、子供ばっかりでね、
   生きてくのも、一杯一杯だったんだぁ、追っ手と戦い続ける毎日、
   明日はベッドで寝れそうだね、お風呂入れそうだねって、そんな小さな願いで笑いあって、
   そんな話をしてる最中に、友達が、死んだりして・・・・」

火炎「っ、イトちゃん、大丈夫?」

イト「はっ・・・、っ、ぁ、あぁ・・・・」

火炎「イトちゃん!ねぇ、イトちゃん!」

イト「ごめ、んね・・・、ねぇ、抱きしめて・・・貰ってもいい・・・?」

火炎「うん・・・・」

イト「くっ・・・、はぁ・・・、はは、どっちが年上か、わかんないね、これじゃ・・・」

火炎「こんな時にまで強がらないで、年上だって、甘えたっていいんだよ?」

イト「ごめん、ね、っは、はぁ・・・はぁ・・・、くぅ・・・」

火炎「無理、しないで・・・・」

イト「うん・・・・うん・・・・」

火炎「・・・・・・・・・」

イト「・・・・・・ありがと」

火炎「・・・・・・・・落ち着いた?」

イト「うん・・・、ありがと、へへっ、かっこ悪いところ、見せちゃったね」

火炎「ううん、イトちゃんがこういう所見せてくれたの、初めてだったから、嬉しかったよ?」

イト「そっか・・・・、うん、そうだね、しまったなぁ、イン以外に見せちゃったー」

火炎「ふふっ、じゃあ第二号だね」

イト「おめでとー、よかったねー」

火炎「あれ、凄く心篭ってないよー?」

イト「ふふん、そんな事ないよー、さっ、人を慰められるくらいだし、もう平気だよね」

火炎「うん!」

イト「・・・・行こっか?」

火炎「うん、行こう」


イト「次回予告」


火炎「イトと火炎は心も新たに、場を飛び立つ」

イト「そして、時は少し遡る、崩れた教会に乗り込んだ空とフィオ」

火炎「二人がそこで遭遇したのは」

イト「次回、箱庭の世界で 第六十八話 二人の邪教徒と」

火炎「手心のない殺し合い、それは、とても壮絶な」


とぅーびー・こんてにゅーど




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w