箱庭の世界で 第五十七話 詰めし者たち

氷雪♂ 18歳 (ひゆき)
イン♂ 21歳
会長♂ 19歳 (かいちょう)
空♀ 15歳 (そら)
アンナ♀ 30歳

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氷雪♂:
イン♂:
会長♂:
空♀:
アンナ♀:




空「失礼します、始めまして、封印師の空です」

アンナ「いらっしゃい、死神統括のアンナよ、よろしく、
    いつもフィオが世話になってるわね」

空「いえいえ、こちらこそ、彼女には助けてもらってます」

アンナ「ふふっ、立ち話もなんでしょ、後ろの皆も入って、
    そこにかけてくださいな」

空「ありがとうございます、それじゃ皆」

氷雪「し、失礼しまーす・・・」

イン「何きょどってんだよ、しっかりしろよな」

氷雪「だって、死神の総本山だぜ?いろんな意味でおっかねぇ・・・」

会長「何を言っている、その死神に惚れているのはどこの誰だ?」

氷雪「う、うっせぇよ!」

空「はぁ・・・・、ウチの男連中は・・・・」

アンナ「これくらい元気な方が可愛げがあっていいじゃない」

会長「っと、これは見苦しい所を、私は邪学生徒会会長、会長と・・・・」

イン「あ、どうした?」

会長「う、美しい・・・」


イン「箱庭の世界で 第五十七話 詰めし者たち」


氷雪「は、お前何いってんの?」

会長「氷雪、お前はあの方を見てなんとも思わんのか!」

氷雪「あ、いや、美人さんだなぁとは思ったけど・・・・」

会長「それ以上の何が必要だというのだ!」

空「会長」

会長「なんだ!」

空「一人で帰らすよ?」

会長「っ!ま、魔界を一人では帰りたくない、あぁ、大人しくしていよう・・・」

イン「ったく、今回は真面目な話をしにきたんだっつぅのに」

アンナ「いいのよ、私なんて普段真面目な話しかして無いから楽しいわよ」

空「そう言って貰えると助かります」

会長「んんっ、このたびは我々との会談に応じていただき感謝しております」

氷雪「うわ、いきなり真面目モードに変わったよ」

イン「氷雪、帰らすぞ」

氷雪「いぃ!?ごめんって!」

アンナ「ふふっ、若い子は元気で良いわね」

氷雪「そういうアンナさんも若く見え・・・」

空「女性に年聞かないの、デリカシーないなぁ」

会長「そうだぞ氷雪、美しければ年なんぞ関係ない事を知れ」

イン「はぁ・・・・、こんなんで申し訳ない、いきなりですが本題に入ってもよろしいですか?」

アンナ「えぇ、構わないわ」

イン「では、まずはどこまでの事が共通認識なのか、これが分からないと話にならないので、
   邪教の事、焔、赤い悪魔と言った方が伝わりやすいですかね、どれ程の事をご存知ですか?」

アンナ「フィオの知ってる事は基本的には一通り、といった所ね、邪教の目的は邪神の復活、
    核となっているのは教祖マリス、裏で暗躍しているケイオス」

氷雪「じゃあ焔のことも?」

アンナ「分かってるわ、死神の集落を焼いた赤い悪魔が、一般市民として邪学に通っていた、
    あの後、地上で彼の痕跡が途絶えていたから、フィオに一任していたのだけどね」

空「一任、という事は、死神全体としてこの件に当たる予定は無い、と?」

アンナ「そういう事になるわね、魔王様からもその様に仰せつかっているわ」

会長「ふむ、フィオの行動原理は私怨だと思うのですが、それを死神の総意としている、
   という事ですか」

アンナ「いいえ、集団としての我々はとても物事に無関心なの、
    それこそ、邪神の復活なんてどうでも良いほどにね」

イン「なっ、邪神の復活がどうでも良いって!?
   世界がどうなるか分かったもんじゃないって言うのに!?」

アンナ「えぇ、だと言うのに、よ」

氷雪「何で!自分の身だって危ないんだぞ!」

空「二人とも落ち着いて、聞いたことがあります、死神は公的組織でありながら、
  魔界の王である彼の者の私兵団体であると」

アンナ「えぇ、その認識で間違いないわ、あのお方が白と言えば白、黒といえば黒、
    そういう組織よ、ここは」

会長「なるほどな、私兵だと言われれば納得がいく、何か無いと動かない、というのも」

イン「世界の存続が関わってるって言うのに、そんなんで良いのかよ・・・」

氷雪「集落での騒ぎで死人だって一杯出たんだろ、それなのに、
   あいつ一人に背負わせるのかよ!」

空「氷雪・・・・」

アンナ「あの事件での死傷者はそれほど多く無いわ、その中にあの子の兄がいたというだけ、
    敵の戦闘力から鑑(かんが)みたら被害は少なすぎるくらいよ」

イン「死者に多いも少ないもあるかよ、それに、邪教のせいでどんだけの人が死んでると思ってる」

アンナ「それは、貴方たちが戦うからよ」

イン「っ、ふざけんじゃねぇ!」

会長「イン!」

イン「俺達が戦ってなかったらこれ位の被害じゃ済んでねぇぞ、
   放置してたらもっと酷いことになってたのは間違いねぇんだからよ」

アンナ「えぇ、そうね」

イン「空の両親だって、ブレイドだって、その娘さんだって、みんな邪教の犠牲者なんだぞ!」

アンナ「ねぇ、ジェノって知ってる?」

イン「あ?」

アンナ「最凶と謳われた死神よ、それとキラーって知ってる?」

イン「それがなんだってんだよ!」

空「そっちは聞いたことがあります、正体不明の殺し屋だって、
  顔写真の無い手配書が私の所にも届いています」

アンナ「ジェノは、死神を裏切ったのよ、
    その時に、沢山の死神が殺されたわ、キラーにね」

氷雪「今、それを話すって事は何か意味が?」

アンナ「その二人は今、邪教にいる」

空「なっ、キラーが邪教に!?」

会長「そのキラーという殺し屋はそれ程なのか?」

空「うん、彼に狙われて生き残った人はいない、そう言われてる」

イン「そんなのよくある話じゃねぇか」

アンナ「今のフィオより強い死神数十人が彼に殺されたわ、それも一日でね」

氷雪「げっ・・・・、今のフィオよりも、かよ・・・・」

会長「ならば、何故死神は邪教に報復しないのです?」

空「簡単だよ、それをしようと思っても、出来る人がいないんだ」

イン「だからって、仲間の仇、ほっといて良いのかよ」

アンナ「私だって最初から放っておこうだなんて考えてたわけじゃないわ、
    何も出来なくさせられたのよ」

会長「余計な事はするな、そういう事ですか」

アンナ「それもあるけど、彼が裏切った時の任務、私が唯一の生存者だったの、
    個人的な交友もあったわ、だから疑われた、だから自由に動けないのよ」

イン「ちっ、糞みたいな組織だな、腹が立つ・・・」

空「言ってもしょうがないよ、古くて大きい組織だもん、天界みたいに統治者が変わりやすいシステムならまだしも、
  魔界は私たちが生まれる前から独裁政治だよ、それも一向に改善されない、ね」

氷雪「よく成り立ってるなそれ、革命とか起きないのかよ、不満爆発とかで」

アンナ「今の魔界で、あのお方に逆らおうなんて人いないわ、ねぇ、噂で聞いたこと無い?
    この世界を滅ぼすことが出来る者が何人かいるって」

会長「聞いた事はありますが、都市伝説や噂話の類かと」

アンナ「本当の話よ、その内の一人が魔王様なの」

イン「っ、マジかよ・・・」

氷雪「なら、なんでその力を人の為に使わないんだよ、マリス達ぶっ殺しにいかねぇんだよ!」

アンナ「興味が無いからよ、自分の身内の生死すら無関心なんだから、
    他人に興味を持つ訳が無いのよ」

空「はは・・・、規格外はどこまで行っても規格外って奴だね」

イン「なぁ、その魔王って奴、どこにいるんだ」

アンナ「やめといた方が良いわ、殺されるわよ」

イン「くっ、気に食わない奴も殴れねぇとか、ちっ・・・・」

会長「落ち着けイン、まずは我が身だ」

イン「分かってるよ!分かってるからイライラしてんだろうが!」

空「はぁ・・・、本当にここまで何しに来たんだか・・・・」

アンナ「いいわよ、人とこうして言い合うのも久しぶりだもの」

氷雪「納得行かないけど、楽しんでもらえたならそれでいいんじゃねぇの、イン?」

イン「自分で納得いってねぇ事で人を説得できると思うなよ、氷雪?」

会長「うむ、それもそうだな」

空「男連中は・・・、えっと、死神側の認識は把握しました、
  それでは、貴方たちは今後もフィオちゃん一人がこの件に当たる、でいいですね?」

アンナ「相違ないわ、邪教も赤い悪魔の件もどちらもね」

空「ありがとうございます」

会長「だが、それだと我々がここに来た意味がないのではないか?」

氷雪「それも、そうだよなぁ・・・」

空「初めから協力はあまり期待して無いよ、情報を貰いに来ただけだもん」

アンナ「そうね、それじゃ私達の掴んでる情報を今から話すわね」

会長「はい、お願いします」

アンナ「まず、主要構成、さっき話したマリス、ケイオスに加え、ジェノ、キラー、
    この二人も中心になって来てるみたいね、後は最近だとスノウ、
    彼女も核になる人物と関わりをもってるみたいよ」

氷雪「あいつも邪教なのか・・・・」

アンナ「そのようね」

会長「あの子のお家事情、貴方がたでも何か把握してるのでは?」

アンナ「・・・・貴方はどこまで調べた?」

会長「一家惨殺事件の犯人がスノウである事、そしてそれを引き起こした原因である婚約破棄、
   そして、その婚約したと言われている良家、これがでっち上げられたものだということ」

イン「っ、でっち上げられた良家って、それどういう事だよ」

会長「良家であれば何かしら記録があるはずであろう、長い歴史、
   もしくは一代で成り上がったのであれば輝かしい功績、
   それらしい物がなにもないのだ」

氷雪「それじゃ、まさかあいつも・・・・」

会長「邪教の犠牲者である可能性は高いな」

氷雪「マジかよ・・・・」

空「それじゃ、間接的だけど、焔やフィオもそうなるよね」

氷雪「じゃああいつらが争う理由なんてないじゃんかよ」

空「それは違うよ氷雪」

氷雪「は?」

空「いくらそれが第三者に仕組まれたものだとしても、殺したのはその人だもん、
  復讐なんてそんな物だよ、私だって、ケイオスが誰かに仕向けられてああしてたとしても、
  彼を殺したのは奴なんだもん、何があっても許せない」

イン「・・・・そうだな、そんな簡単に割り切れるものじゃねぇよ」

アンナ「そうね、人の心は複雑だものね、それはそうと、良く調べてあるわね」

会長「有難き幸せ、そちらの情報と相違は?」

アンナ「ないわ、推測も恐らく間違いないかと」

氷雪「天界だけじゃなくて魔界にまで手出してたなんてな、
   あいつらに死角なんてないんじゃないかって思えてくるな・・・」

空「事実ないと思うよ、強いて言えば今は天界が眼中にないくらいかな」

アンナ「魔界もね、最近何も動きを聞いて無いわ」

イン「完全に地上狙いか、舐めやがって」

会長「地上、というより私たち、だな、そうとしか思えない節がいくつもあるからな」

イン「余計に舐めてるとしか思えないな」

氷雪「・・・・そういえばなんだけど、あいつらって何で邪神復活させようとしてるんだ?」

会長「む、言われてみれば、シャドウからも何も聞いていないな」

イン「理由なんて関係ないだろ、ぶっ潰すだけだ」

空「そうだよ、そこにいい理由がある訳無いんだし」

氷雪「それもそうなんだけど、なんかしっくりこないな・・・」

アンナ「彼らの身の上、一つだけ分かってることがあるわよ」

氷雪「なんなんだ?」

アンナ「魔族だって言うこと」

イン「はぁ・・・・、魔族はどいつもこいつも化物ばっかりかよ、
   自分の身体に不満がある訳じゃないが、こんだけ強いのが集まってると流石に妬ましいな」

会長「私は地上でよかったと思ってるがな、波乱万丈、最初はいいと思ったが、
   ここまで来るといい加減にして欲しくなってくる、興味本位で首を突っ込むには大きすぎる案件だ」

空「巻き込んで悪かったとは思ってるんだよ?無理して最後まで付いてこなくていいんだし」

会長「ここまで知って引ける訳がなかろう、帰れと言われても最後までやり通すさ」

アンナ「私も手伝えたらいいのだけれど、もどかしいわね」

空「お気持ちだけでも、今は情報だけでも有難いですから」

アンナ「ありがとう、じゃあ後少しだけ、フィオの話だと、
    赤い悪魔とスノウの拠点は分かったらしいわ」

氷雪「っ、あいつ、また俺らにはだんまりかよ・・・・」

アンナ「あの子、あの件になると周りを見なくなるから、こっちに報告が入ったのも驚いてるくらいよ」

空「確かに、何か理由とか聞いてますか?」

アンナ「ケイオス達も一緒にいたらしいの」

空「・・・・それは、どこ?」

イン「聞いたら一人でも突っ込むつもりだろ、お前も人の事言えねぇぞ」

会長「同じ旗の下集まっているのだ、利用という形でも構わない、
   もう少し頼ってくれないか?」

空「・・・・・ごめん、分かった、もう少し冷静になる」

アンナ「話してもいいかしら?」

空「はい、お願いします」

アンナ「誰か地図、あるかしら」

氷雪「ん、大雑把なのだったら作れる」

アンナ「それじゃお願いしようかしら」

氷雪「了解、アイスクリエイト・マップ」

イン「おぉ・・・・・、これのどこが大雑把だよ」

氷雪「大雑把だろ、建物名とかが入ってない」

会長「そうか、ビルや道路まで再現して大雑把だと言い張るのであればもう何も言うまい」

アンナ「凄く助かるわ、この教会よ、ここに入っていくのを何回も見てるらしいわ」

空「ここ・・・、多分入り口だけだ、ここより少し離れた位置、この辺りの地下に違和感があるんだ、
  足元に何か気持ちの悪い、触れてはいけないような物が蠢いている様な感覚、
  そうか、あれ、あいつの作った結界だったのか・・・」

会長「空、どこからどの辺りまで違和感がある?」

空「え、うん、この辺りから・・・・この辺りまでだよ」

会長「ふむ、なるほどな・・・・、イン、氷雪、あの時の地図覚えているか?」

イン「それって会長の家で見たあれか?」

氷雪「覚えてる、同じマーキングできるぞ」

会長「頼む、今空の指したエリアも分かるように」

氷雪「了解、よっ・・・・・っとこんな感じか」

アンナ「器用ね・・・、凄く便利そう」

氷雪「便利だぜー、大変だけど」

空「ねぇ、これ・・・・」

会長「うむ、空が言ったエリアはマークが少ないのだよ、
   このマークは恐らく邪教が絡んでいるであろう犯罪の発生地だ」

アンナ「本当によく調べてあるわね、凄いわ」

イン「これ、どういう事だ?」

会長「恐らく、この教会では違う事をしているのであろう、推測だがな、
   他の教会が囮、という可能性も否めないがな」

空「なるほど・・・、あっちが囮の可能性・・・・か」

氷雪「会長、なんか思い付いてたっぽいけど、なんかあったのか?」

会長「他に入り口がないかと思ってな、またそれに関しては調べてみよう」

イン「地下が無駄に広い可能性もあるけどな」

アンナ「それに関しては一つ推測があるの」

空「何か心当たりが?」

アンナ「心当たりまでは行かないわね、あくまで推測、きっと、邪神の復活が近いのよ、
    だから、結界が広がっている、という考え方よ」

氷雪「・・・・・一刻も早いアクションが必要かもな」

イン「作戦を立て直そう、今回分かったことを踏まえて」

会長「同感だ、出来れば一丸となって、だな」

アンナ「私たちが持ってる情報はこれくらいよ」

空「そうですか、今回はご協力いただき、本当にありがとうございました」

会長「色々とご無礼を働いてしまって申し訳なかったです」

アンナ「いいえ、楽しかったからいいわ、
    こちらこそ、神経をさかなでる様なことしちゃってごめんね」

イン「いや、お役所がそういう所だってのは分かってた、あんたに言ってもしょうがねぇのにな、
   俺こそ悪かった、・・・・・あ、申し訳ございませんでした」

氷雪「訂正おっそ、言い切った後じゃねぇか」

イン「う、うるせぇな」

アンナ「いえいえ、構わないわよ、それ位はねっかえりがあった方がいい男になるわ」

氷雪「お、そうなのか、勉強しとこう」

空「氷雪はキャラじゃないから無理」

氷雪「ななな、なんだってー!?」

アンナ「ふふっ、それじゃ、また何かあったらお互いに」

空「はい、ありがとうございます、それではまた」

インM「はぁ・・・・、なんか無駄に疲れたな、けど、本当に疲れるのはこれからか、
    復活がもう少し?冗談じゃねぇ、絶対止める」


アンナ「次回予告」


会長「嫌な予感というのは当たりやすい物である」

氷雪「それを願っている者がいる時、予感は必然となる」

空「次回 箱庭の世界で 第五十八話 ダークポイント」

イン「終わりの時は、刻々と近付いている」


とぅーびー・こんてにゅーど


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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w