箱庭の世界で 第五十六話 表裏の紅蓮

焔♂
スノウ♀



焔♂:
スノウ♀:


焔「ん・・・・・、ぁ、身体動かせる・・・・、マジか、今表に出てるの俺か」

スノウ「ただいま、焔、起きてたのね」

焔「っ、あ、え、お、おかえり」

スノウ「・・・・・え、もしかして・・・・、なんて言ったらいいのかしら・・・・?」

焔「あぁー・・・・、地上にいた方の?」

スノウ「どう、して・・・・」


焔「箱庭の世界で 第五十六話 表裏の紅蓮」


焔「俺もわかんない、今まではスキ狙って無理やりじゃないと出て来れなかったんだけど、
  なんか、今回は目が覚めたらこうなってたんだ」

スノウ「それじゃ、彼は・・・・?」

焔「・・・・消えて無い、身体の優先権はまだあっちだよ」

スノウ「そ、ぅ・・・・、よかった・・・・」

焔「なぁ・・・・、あっちはさ、俺の時の記憶無いみたいなんだけど、
  俺は思い出しちゃったんだよ、だから、ちょっと凹む・・・」

スノウ「あ、ご、ごめんなさい」

焔「あ、いや・・・・、うん、っ、ぐ・・・」

スノウ「っ、焔!」

焔「ぁ・・・・、何慌ててるんだ、スノウ・・・、おはよう?」

スノウ「あ、焔、うん、おはよう」

焔「・・・・・あれ、お、おはよう」

スノウ「・・・・・え?」

焔「なんだ、口が勝手に・・・・」

焔「よぅ俺、始めまして・・・・か?」

焔「っ、んだ、これ・・・・」

スノウ「ちょっと、待って・・・!」

焔「いいじゃんか、ずっと俺だけが知ってるのも不公平だし」

スノウ「お願い、やめて・・・!」

焔「俺だけ知ってる・・・・、もしかしてとは思うけど、邪学で意識が飛んでたのは・・・」

焔「あぁ、俺がお前の代わりに表にいたんだよ」

スノウ「何よ、何よ!どうしたいの、貴方はまた私から焔を奪うの?私がそんなに嫌い!?」

焔「嫌いな訳が無いだろう!俺がお前を嫌いになれる訳ないじゃねぇか!」

スノウ「っ・・・」

焔「どういう事だ?」

焔「・・・・お前は俺の事を知らないだろうけど、俺はお前の事、よく知ってるぜ、
  俺は、お前だからな・・・・」

焔「お前が、俺・・・・?」

焔「あぁ、ちょうど入れ替わる前くらいの記憶は俺も無いんだけど、
  魔界にいた時の記憶は全部思い出した」

スノウ「私が、思い出させた、のよね」

焔「へぇ、俺はお前の事知らないのにな、なんか不公平だ」

焔「俺もそう思ったからこうやって話してんじゃねぇか」

スノウ「ねぇ、それじゃ、貴方も私の事は・・・・?」

焔「・・・・・あぁ、好きだよ」

焔「おい、スノウは俺のだぞ」

焔「分かってるよ、分かってるからこそ自分がすげー嫌なんだよ」

スノウ「・・・・・あの子の事?」

焔「あぁ・・・」

焔「あの子・・・、目が覚めた時にいた?」

スノウ「えぇ・・・」

焔「あれ、誰なんだ?」

焔「お前が寝てた間、俺が表にいた時の恋人だよ」

焔「・・・・嘘、だろ」

焔「俺もスノウと会った時に同じ事思ったよ」

スノウ「焔は何も悪く無いわ、全部記憶を封印した天界とあの女が悪いのよ」

焔「天界に封印された・・・・?」

スノウ「えぇ、魔界の頃の記憶を封印されていたのよ」

焔「けど、あいつが何の理由もなく封印するとは思えないんだよ」

焔「・・・・それが俺を自分の物にするためだったとしたら?」

スノウ「そうとしか考えられないわ」

焔「・・・・絶対他にも理由があるはずだよ」

スノウ「それだって推測に過ぎないわ」

焔「俺が言うって事は、それなりに理由があるんだろ、それにも」

焔「・・・・・あぁ、三年って短い間だけど、ずっと一緒にいたんだ、
  あいつが理由も無くそんなことをするとは思えない」

スノウ「私の事を思い出しても、あの子の事好きなのね・・・」

焔「当たり前だろ!って言うのもお前には言い辛いな・・・・」

焔「なぁ、お前はどっちの方がより大切なんだ?」

焔「・・・・・選べねぇよ、そんなの」

焔「・・・・そうか」

スノウ「あの、どう呼び分けたらいい、かしら」

焔「そっか・・・、あっちを焔、俺は何でも良いから二人称で呼んでくれたら良いよ」

スノウ「えぇ、それじゃ、焔?」

焔「なんだ?」

スノウ「身体の主導権は今焔にあるのよね?」

焔「あぁ、俺の意思で動かせる」

スノウ「それじゃ、その間は二人とも私のもの、どっちもあの子になんてあげない」

焔「そう、か・・・・」

焔「そうだな、俺はそいつの事知らないし、妥当だと思うんだけど、お前は?」

焔「それでいいよ、どうせ自由きかないしな」

スノウ「自由きかないって、貴方は今どういう状態なの?」

焔「状態、か、なんて言ったらいいんだろ、暗い所で拘束されてて、
  口だけ動かせるような感じかな」

焔「確かに同じ空間にいるのは感じるな」

焔「やっと気付いてくれたか、よろしく、俺」

焔「・・・・・よろしく」

スノウ「焔は、なんともないの?」

焔「どういう事だ?」

スノウ「もう一人の自分から影響受けたり・・・」

焔「あぁ、今の所ないな」

スノウ「そっか、良かった・・・」

焔「・・・・俺、引っ込むわ」

焔「そうか・・・・・、なぁ」

焔「・・・・んだよ」

焔「ずっと縛られてるの、窮屈だろ、時々、身体貸してやるから言え」

焔「・・・・・気が向いたらな、それじゃ」

スノウ「どう・・・・?」

焔「いるのは分かるけど、存在を感じにくくなった、かな」

スノウ「それじゃ、今はもうこっちが見えないのかしら」

焔「だろうな」

スノウ「ごめんなさい、無理やり目覚めさせてしまったから・・・・」

焔「大丈夫だ、これくらい、その内なんとかなるさ」

スノウ「そうね・・・・」


焔M「自分との対話、そして俺の中にある、魔族だった頃の記憶、
   火炎への想いは揺るがない、けど、記憶と共に甦ったスノウへの想い、
   自己嫌悪で一杯だ、記憶がなかったのなんて言い訳にならねぇよ、
   大切な人を、傷つけるようなことするなんて・・・・」


スノウ「次回予告」

焔「様々な想いが交錯する今、常に状態は進行していく」

焔「停滞していた物が動き始めたのと連動し、情報は広がっていく」

スノウ「次回 箱庭の世界で 第五十七話 詰めし者たち」

焔「動きを見せた事態は、集束を始める」


とぅーびー・こんてにゅーど