箱庭の世界で 第五十五話 執着と諦めの出逢う時

火炎♀ 18歳 (かえん)
レリクム♂ 25歳
ネロ♂ 21歳

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火炎♀
レリクム♂
ネロ♂



レリクム「付きました、ここですよ」

火炎「ここは・・・、邪教の教会?」

レリクム「えぇ、私が神父を勤めさせていただいている教会です」

火炎「ここで特訓するの?」

レリクム「そうですよ、私は神父でありながら戦闘指南もしていますからね、
     この教会は訓練場も兼ねているんですよ」

火炎「そんな事、私に話してもいいの・・・・?」

レリクム「もちろんです、ここが彼らに見つかってもなんら困ることはありませんから」

火炎「そう、なんだ」

レリクム「では、行きましょうか」


ネロ「箱庭の世界で 第五十五話 執着と諦めの出逢う時」


火炎「修練場、こんな場所が・・・・?」

レリクム「えぇ、道具なんて必要ありません、やる気さえあれば身体一つで強くなれるんですよ」

火炎「やる気・・・、才能とかは・・・・?」

レリクム「自信、なさそうですが、安心してください、大切なのは環境とやる気です」

火炎「環境と、やる気・・・・、うん」

ネロ「失礼致します、神父様、なんでしょうか、御用って」

レリクム「あぁ、いらっしゃい、ネロ君、お待ちしてましたよ」

火炎「あの、彼は?」

レリクム「彼はネロ君です、私の教え子の中ではかなり優秀な子ですよ」

ネロ「始めまして、ネロです、神父様、こちらの美しいお嬢さんは?」

レリクム「今日から私の元で教わることになった火炎さんです、
     これからしばらく、君と彼女、二人を重点的に面倒を見させてもらうことになります」

ネロ「なるほど、それじゃこれから長い付き合いになりそうですね、よろしくお願いします、火炎さん」

火炎「よ、よろしく」

レリクム「さて、ネロ君を呼んだのにはもちろん理由があるのですが、二人とも分かりますか?」

火炎「理由・・・・?」

ネロ「人が強くなる為に必要なものの一つ、競争、比較相手、ですよね」

レリクム「その通りです」

ネロ「聞き飽きましたよ、それ」

レリクム「けど今日は始めて聞く人もいますからね、そのためです」

火炎「競争って事は、ネロ君、強いの?」

ネロ「どうでしょう、まぁ、人に胸を張って強いと言えるほど強くは無いですよ」

レリクム「そういう事にしといてあげます」

火炎「って事は強いの?」

ネロ「神父様の基準がどうかは知りませんが、僕の基準では胸を張れるほどでは、っと言った所ですかね」

火炎「そうなんだ、でも周りに強い人が沢山いるとそう思っちゃうよね」

ネロ「分かってくれます!?いやぁー、気が合いそうだ、僕達仲良くなれそうですね」

火炎「え、う、うん」

レリクム「はいはい、ナンパはそこまでにして、力の程を確認したいので模擬戦でもしてもらいましょう」

ネロ「お、早速ですね、それじゃ魔術無しでやった方が良さそうですね、実力を測る、という意味合いであれば」

レリクム「そうですね、その方がいいでしょう」

火炎「うん、よろしくね」

ネロ「よろしくお願いします」

レリクム「それじゃ、始めましょうか」

火炎「ウィップ・オン!」

ネロ「スローイングナイフ・オン」

火炎「っ、あの武器」

ネロ「さぁ、行きますよ、まずは近接戦からです!」

火炎「偶然だよ、同じ武器を使う人なんていくらでもいるもの、今はこれに集中、
   鞭奏プレリュード!」

レリクム「へぇ、中々器用ですね、風切り音と破裂音で音楽を奏でるとは」

ネロ「見た目にふさわしい美しい技ですね、けどリズムが読めれば回避もた易い!」

火炎「前奏曲を聴いただけで判断しないで、奏打(そうだ)・ビオレンツァ!」

ネロ「っ、これは踏み込めないな、よっ!」

火炎「逃がさない、ディスコード!」

ネロ「二本じゃ捌ききれないか、シュート、セカンド・オン、それ!」

火炎「防がれた、でもまだ、クレッシェンド!」

レリクム「もっと上がってきそうですね、なるほど、面白い戦い方だ、さて、彼はどう来るかな」

ネロ「守ってばっかりじゃテンポが上がるだけですか、ならこちらからも攻めさせてもらいましょう、
   サード・フォース・トリプルオン、フルバースト!」

火炎「っ、やっぱりあの戦い方!くっ、奏壁(そうへき)フォルテッシモ!」

レリクム「鞭の壁で周りを覆って全方位防御ですか、魔力の鞭だからこそ為せる技、
     ふむ、思ったより汎用性の高い武器ですね」

ネロ「発想は悪くないですが、相性が悪かったですね、切り裂け、ソードヴォーテックス!」

火炎「まずっ、防ぎきれない・・・・、ってあれ、攻撃がやんだ?」

ネロ「こんな所ですね」

レリクム「良い判断ですね、ここまでです」

火炎「そ、そっか、模擬戦、なんだったっけ・・・」

レリクム「そういう事です、お疲れ様です」

ネロ「うん、僕が水属性じゃなかったらもうちょっと続いてたかと、いやぁ属性の有利は偉大ですね」

火炎「それであんなに簡単に破られちゃったのか、やっぱりまだまだだな」

レリクム「水属性の攻撃を蒸発させて防ぐなんていうのは規格外のやる事です、念頭に置かないでください」

火炎「そっか、それもそうだよね」

ネロ「規格外の人が言っても説得力無いですね」

レリクム「何かいいましたか?」

ネロ「いえ、何も?」

レリクム「全く・・・・、まぁいいでしょう、とりあえず二人の簡単な課題は見えたのでね」

火炎「たったあれだけの戦いで?」

レリクム「短期決戦だったからこそって言うのもありますけどね、
     まずは火炎さん、貴方は足元が疎(おろそ)かになっている、
     鞭を振り回し続け、更にその軌道まで自分で扱っているのだから仕方ない事とはいえ、
     棒立ちが多いですし、火力も高くないのだからもっと動き回るべきです」

火炎「なるほど・・・、はい、分かりました」

レリクム「次にネロ君、君は女性に甘すぎる」

ネロ「何の事でしょう」

レリクム「とぼけているのか、本当に気付いていないのか・・・・、足元、貴方の武器なら狙えたでしょう」

ネロ「あ、それですか、はい、気付いてませんでした、結構一杯一杯だったので」

レリクム「はぁ・・・、貴方も単純な投げナイフじゃなくてセルフコントロールできるのだから、
     相手の穴をもっとよく探してください、後、相手のリズムに乗ってどうするんですか、
     今回は模擬戦だからいいですが、相手のリズムは乗る物じゃなくて崩すものです」

ネロ「それもそうですね、以後気をつけます、ありがとうございます」

レリクム「ネロ君は今後は細かい所を詰めて行くとして、火炎さんは基礎からですね、
     それに、今回かなり気もそぞろだったようですしね、何か気になる事でもありましたか?」

火炎「あ・・・、その、昔襲われた人と、ネロ君戦い方がよく似ていたから・・・」

レリクム「んー・・・・、あぁ、おそらくヴァルドの事ですね」

火炎「名前までは覚えてないけど・・・、投げナイフを使う天界人だったよ」

ネロ「間違いないですね、僕の兄さんだ」

火炎「えっ!?あの人の弟さん!?こんなにしっかりしてるのに!?」

ネロ「まぁ、お互い孤児ですからね、戦い方も兄さんに教えてもらったから、
   それで似てるんだと思いますよ」

火炎「そうなんだ、って事はネロ君天界人?」

ネロ「はい、正確には地上人と天界人のハーフですけどね」

レリクム「まぁ、この教会には一癖も二癖もある人ばかり来ますからね」

ネロ「神父様だってそうじゃないですか、二癖どころじゃないでしょう」

レリクム「自覚していますよ、私も含めての事です」

火炎「もしかして、私も?」

レリクム「当然です、私に教わろうだなんて、まともな神経では言えませんよ」

ネロ「間違いないですね」

レリクム「君まで肯定しますか、構いませんけど、自覚して言っているのですから」

火炎「あはは・・・、あの、この後はどうするの?」

レリクム「普段と違って二人だけに時間を使えますからね、色々教えてあげますよ、
     まずは基礎訓練からですけどね」

ネロ「楽しみですね、神父様の秘密の特訓」

火炎「強く、なれるんだよね」

レリクム「当然です、挫(くじ)けず付いて来られるのであれば、ですけどね」

ネロ「僕なら大丈夫ですよ、今までだって付いてきたし、今回は綺麗な女性も一緒ですしね」

火炎「あ、ありがとう、お世辞でも冗談でも嬉しいよ」

ネロ「世辞?冗談?まさか、僕は嘘は吐くけれど世辞や冗談は言わない主義ですから」

火炎「え・・・」

レリクム「その、世辞や冗談は言わない、って言うのが嘘だったらどうするんですか?」

ネロ「あれ、そんな事言われたの初めてですね、おかしいなぁ・・・・、
   あぁ、そうか、神父様が男だからか、やめてくださいよ、これ僕の鉄板トークなのに」

火炎「鉄板トークって・・・、もしかして、ネロ君軽い?」

ネロ「そんな事無いですよ!僕が良いと思った女性にしかこういう事は言いません、
   一人一人に本気ですから、僕の愛は重いですよ」

レリクム「それ、完全に軽い発言ですよ、どこにも真心を感じませんけど」

ネロ「あ、あれ、おかしいなぁ・・・」

火炎「ふふっ、二人とも、息がぴったりで面白い」

ネロ「男と息がぴったりでも嬉しく無いなぁ・・・、
   でも、火炎さんがやっと笑ってくれたので、それで良しとしときます」

火炎「あ、ご、ごめんなさい」

ネロ「すぐ謝らないでください、折角の素敵な笑顔なのに」

レリクム「はぁ・・・、それじゃ、そろそろ再開しますよ」

ネロ「っと、分かりました」

火炎「うん、頑張るよ」

レリクム「それじゃ、まずは意識を広げる所から始めましょう、
     二つの事を同時に100%こなせる様にしなくては話になりませんからね」


火炎M「こうして、私の特訓は始まった、最初は不安だったけど、この環境だったらやっていける気がする、
    それに、レリクムの教え方は凄く的確だし、今までに無い物も沢山あった、
    強くなれる、そんな確信を胸に、私は明日もこの教会に通うんだ」


ネロ「次回予告」


レリクム「赤い悪魔、彼を中心に事態は加速した」

火炎「渦中(かちゅう)である彼はどうなるのであろうか」

ネロ「次回 箱庭の世界で 第五十六話 表裏の紅蓮」

レリクム「そのあり方で、全てが変わる」



とぅーびー・こんてにゅーど

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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w