箱庭の世界で 第五十四話 心の強さ

氷雪♂ 18歳 (ひゆき)
会長♂ 19歳 (かいちょう)
藍♀ 19歳 (らん)
イト♀ 20歳

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氷雪♂:
会長♂:
藍♀:
イト♀:



イト「やっふーぃ、お待たせー」

会長「やぁイト、うむ、これで全員だな」

氷雪「いやぁ、ごめんごめん、急に集まってもらっちゃって」

藍「いいえ、全然いいわよ」

イト「でも珍しい面子だよね、何するのかちょっとわくわく」

会長「ぬ、聞いていないのか?」

イト「え、聞いてるよ?」

藍「え、じゃあ何でわくわく?」

イト「え、なんとなく?」

氷雪「なんとなくかよ!」

イト「なんとなくだよ!」

会長「んんっ、本題に入っても良いか?」

氷雪「お、おぅ、ごめん」

藍「召集した本人が乗らないの」

氷雪「ご、ごめんなさい」

イト「氷雪怒られてやんのー」

氷雪「イトのせいだろー!」

藍「氷雪?」

氷雪「ご、ごめんなさい・・・・」


イト「箱庭の世界で 第五十四話 心の強さ」


氷雪「遅くなったけど、本題に入りたいと思います、はい」

会長「うむ、そうだな」

氷雪「今回集まってもらったのは、声かけた時にも軽く説明したけど、
   俺の特訓に付き合って欲しいんだよね」

藍「魔術系の強化だったわよね」

氷雪「そうそう」

イト「魔術が使えない僕がそこにいる、これいかに」

会長「だが、魔力を生成するのはイトがこの中では一番上手いであろう」

藍「そうなのよね、勿体無いわ」

氷雪「へぇ、そうなんだ」

イト「そうなんだって、知ってて話振ったんじゃないの?」

氷雪「いや、シャドウに聞いたら、俺のは参考にならないから会長とか藍、イト辺りに聞くとためになるぞー、
   って聞いたから呼んで見たんだけど、実際会長と藍は知らないうちに大分強くなってるみたいだし」

会長「ほぅ、氷雪からそんな言葉が聞けるとは思っても見なかったな」

氷雪「だって、俺、あいつに手も足も出なかったのに、お前ら二人で撃退できたんだろ?」

藍「私たちはそれぞれ役割に特化してるからよ、一対一だったら勝てるかどうか分からないわ」

会長「そうだな、並みの相手ならば防ぎきれる自信があるが、あれは別格だな、
   総量、出力共に化物だ、勝ち目はないであろうな」

イト「やっぱ魔族って総じてヤバイのかなぁ、焔もやばかったよ」

氷雪「な、なんか始める前から不安にすんなよ」

イト「ごめんごめん、とりあえずやれる事はやっといて損は無いよ、うん」

藍「それじゃ本題、これ、学校でも習わない事だから気をつけてね」

氷雪「・・・・・え、習わない事なの?強くなれることなのに?」

藍「えぇ、ちゃんと理由もあるのだけれどね」

会長「学園で教えてる魔術の強化は安全な物に限定されているからな」

イト「そうだね、万人が出来るものじゃないもんね」

氷雪「だ、だから始める前に不安にすんなって」

藍「ふふっ、ごめんね」

氷雪「可愛く謝っても許しません」

藍「えぇー、許してもらうつもり無いからいいのだけれど」

氷雪「なんだそれ」

イト「まぁまぁ、本題本題」

会長「うむ、氷雪、今まで学園で習った魔力強化って言ったら何があった?」

氷雪「あ?えっと、放出し続けたり、チャージしたものを一気に撃ったり、とかだよな」

会長「そうだな、筋力と同じで魔力も苛(いじ)め抜けば確かに強くなる、瞬間火力も重要だしな」

イト「僕撃つの苦手なんだよねぇ、そっち系の術はからっきしだ」

藍「イトちゃんは体内運用が得意だものね」

イト「そだねー、それもあんまり使わないんだけど」

氷雪「ふむふむ、んで、さっきのが安全なのは分かるんだけど、危険なやり方って?」

会長「感情、だな」

氷雪「感情?」

会長「うむ、経験は無いか?落ち込んでいて魔術の調子が悪い時、
   高揚していていつもより威力の高い時、とかだが」

氷雪「あぁ、あるな」

藍「それを意識的にやるのよ、心構えとか、考え方の違いとかがあるから、
  複数人に同じ事を教えても意味が無いのも学園で教えない理由の一つね」

イト「後は学生って多感な時期だからね、トレーニングで心が過剰に変化しちゃうとマズイしね」

氷雪「なるほどねぇ・・・、でもそれって意識する位で変えられるもんなの?」

会長「変わる、元々魔力は精神力、心から出るものだ、無理やり、というと聞こえが悪いが、
   湧き立たせる、奮い立たせる事で魔力量を増幅する事も、質を変える事も可能だ」

藍「さて、問題です、感情で四つって言ったら何がまず出てくる?」

氷雪「え、四つ・・・・、楽しい、嬉しい、悲しい、むなしい?」

イト「え、喜怒哀楽くらい常識でしょ、ネタだよね?」

氷雪「あ、それの事か」

イト「良かった、そこまでバカじゃなかったみたい」

氷雪「うっせ!」

藍「まぁ、大筋は間違って無いし、良しとしましょ、この四つで量と質が大きく分けられるのよ」

氷雪「量と質・・・、テンション高いと勢いつくみたいに、だよな」

藍「そんなイメージね」

イト「一番簡単なのが怒り、だよね」

氷雪「へぇ、じゃあ怒りながら戦えばいいの?」

会長「安直に簡単な方に逃げるな、簡単だが質が悪い上に一番危険だ」

氷雪「え」

藍「怒りは自分を見失いやすいわ、それゆえに無意識でもかなり魔力は増幅されるわ、
  でも、総量は増えても1あたりの威力が他に比べて劣るのよ」

氷雪「ちょいちょい、1あたりってなんぞ?」

イト「えっ、そこから!?座学でやったじゃん!」

氷雪「え、イトでも分かるのか、なんか悔しい」

イト「ちゃんと聞いて無いだけで聞けば覚えてるもん!」

藍「はいはい、いい子いい子」

イト「えへへー」

会長「ここまでよくある流れだ」

氷雪「へ、へぇー」

会長「まぁ、話を戻すぞ、1あたり、確かに魔力は数字で測れるものではないが、
   同じ量で見た場合、怒りよりも悲しみや喜びの方が威力が高い事が分かっている」

イト「それ、試したの?」

会長「私たちがではないぞ、魔術は膨大な知識が必要な学問だ、研究する機関だってある」

藍「内容はあんまり公表されて無いんだけれどね」

氷雪「じゃあなんでそんな詳しいんだよ?」

会長「ふっ、我々を舐めてもらっては困るな」

氷雪「あー、はいはい、聞いた俺がバカでしたよ」

イト「それじゃ怒り以外の感情でやるんだよね、どれでやったらいいの?」

藍「歯が浮くような言葉になっちゃうけど、人を強くするのは愛って言うじゃない」

イト「喜怒哀楽だから・・・・、哀しい?」

藍「ううん、そっちの哀じゃなくて、愛情の愛」

会長「何かを想う気持ち、って言い換えても問題ない」

氷雪「人を想う気持ち・・・」

会長「家族でも友人でも恋人でも、なんでも構わんぞ」

藍「若干愛って表現するには抵抗ある人もいるかもしれないけどね」

イト「友情とかでも大丈夫だよ、今の氷雪なら簡単でしょ?」

氷雪「・・・・・あぁ」

会長「私は苦労したがな」

藍「そうですね、上達遅かったですものね」

会長「悪かったな」

イト「会長らしいけどね、感情表現へただしっ」

会長「だから悪かったなと言っている」

藍「ふふっ、それじゃ言うより慣れろ、だしデモンストレーションしてみましょうか?」

イト「おっ、僕の出番だね」

氷雪「なるほど、そのためにいたのか」

イト「今更!?」

会長「流石氷雪、予想を裏切らない・・・・」

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イト「さて、始めるよ」

藍「それじゃ、イトちゃん、まずは怒りからお願いしてもいい?」

イト「お任せー、行くね、・・・・・はぁぁぁぁぁ」

氷雪「うぉっ、すげえ圧力・・・・、魔力が噴出してるみてぇだ・・・」

イト「っ・・・・・、ふぅ、これが怒りだよ、かなり無駄に漏れてるでしょ」

会長「やはり勿体無いな」

藍「総量は増えても、大分無駄遣いしてますものね」

会長「うむ」

氷雪「それじゃ、魔術自体の効率は落ちる、ってことか?」

会長「そうなる」

藍「総量が増えるし、出力も上がるから単純にぶつけるだけなら結構な威力が出るのよね」

イト「ただね、未熟な心で怒りに身を委ねすぎると、囚われちゃうからね・・・」

氷雪「なるほど・・・」

会長「その点、喜びと楽しみは取り込まれにくいから一番安全なのだがな」

藍「他ほど伸びないのよねぇ」

イト「近接系的には乗ると超イケイケになれるんだけど、魔術ってそうでもないんだよねぇ」

氷雪「めんどくさいな・・・・」

藍「めんどくさい言わないの」

会長「さて、残った愛、だが、これが一番強い、困った事に一番強い」

イト「大切な事なので二回言いました」

氷雪「しかも困った事なのか」

会長「うむ、困った事にだ」

氷雪「どう困るんだよ」

藍「人嫌いな人もいるでしょ?」

氷雪「え、そんな理由?」

藍「えぇ、そんな理由」

氷雪「えぇー・・・・」

イト「文句言いたげだけど、よくよく考えてみてよ、
   例えばここで僕にどすー!って刺されました、想像して?」

氷雪「・・・・・・はい、想像してみた、いてぇ・・・・」

会長「だ、大丈夫か?」

氷雪「大丈夫だ、スノウにやられた場所がうずうずするだけ」

藍「トラウマね・・・・」

イト「かなり効果的だったみたいだね」

氷雪「うるせぇ、んで、これに何の意味が・・・・」

イト「僕、実は邪教の回し者だったんだよねー」

氷雪「なぁ!?」

イト「って展開だったらしばらく人信用できないでしょ?」

氷雪「既に信用できねぇよ・・・・」

イト「えぇ!?」

会長「・・・・・私も一瞬焦ったぞ」

藍「会長、あなたに向けてやってません」

会長「分かっている」

氷雪「いやでも、なるほどな、確かに、困る人は困るな、愛」

イト「でしょ、まぁ哀しみでもいけない訳じゃないんだけど、
   戦いの上で哀しい時って大体怒ってるしね」

藍「そうね・・・、でも、大切な人の為に、って意識するだけでも心構えって変わるわよね」

イト「うん、だから哀しいよりも愛してるがいいよね」

会長「私も藍がいなければ、ここまで強くなれてなかったであろうな」

氷雪「ちぇー、ノロケかよこん畜生」

藍「よく言うわね・・・・」

氷雪「あー?俺生まれてこの方一人身だぜー」

イト「はぁ・・・・、早くくっ付いちゃえばいいのになぁ・・・・」

会長「本当だな、気付いてないのは当人たちだけだというのに・・・」

氷雪「おいおい、なんの事だよー」

藍「自分で考えなさい、では、今度は自分でやってみましょうか」

氷雪「なんだよー、気になるだろー」

イト「その気になる人を思い浮かべながらやってみよー!」

氷雪「なんか釈然としないけど、まぁいいか・・・・・、
   大切な人・・・・、すぅーはぁー・・・・、はぁぁぁ・・・・!」

会長「おぉ・・・・」

藍「凄く綺麗な気・・・・」

イト「予想以上の出来だ・・・」

氷雪「すげぇ・・・・、優しいのに、こんな力強い魔力、初めてだ・・・・」

藍「綺麗な気、純度の高い魔力はたとえ少なくても凄い力を発揮するのよ」

氷雪「あぁ、これなら、負ける気がしない、なんでも出来る気がする・・・・!」

会長「うむ、後は安定させなくてはな」

イト「それと新しい力を使えるようになったら新しい技だよね、特訓しなきゃ」

藍「そうね、ねぇ氷雪?」

氷雪「ん、なんだ?」

藍「今日はまだ行けそう?」

氷雪「当然!」

藍「ふふっ、素敵」

会長「では、折角だ、我々もトレーニングしてくとしようか」

イト「そうこなくっちゃ!」

氷雪M「この日は日が暮れるまでずっと鍛え続けた、強くなれた、確かに嬉しい事だけど、
   なによりも、大切なあいつらを守れるかもしれない、そう思っただけで心が温かくなる、
   もう、負けない、たとえ遠くに行ってしまったあいつだったとしても、取り戻すためなら、負けられない」


藍「次回予告」

会長「果て無い逆境の中だとしても、決して見失わない未来」

イト「立ちはだかる壁がどんなに高くても」

氷雪「こんな状況だからこそ、強まる決意と結束」

藍「けど、未来を見失ってしまったものは・・・」

氷雪「次回 箱庭の世界で 第五十五話 執着と諦めの出逢う時」

会長「すれ違いは、いつまで続くのだろうか」


とぅーびー・こんてにゅーど




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w