箱庭の世界で 第五十二話 挺身(ていしん)の決意

氷雪♂ 18歳 (ひゆき)
ケア♂ 26歳
フィオ♀ 18歳

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氷雪♂:
ケア♂:
フィオ♀:


フィオ「先生!氷雪が敵にやられたって!?」

ケア「静かに、今、寝てるんですから」

フィオ「あ、ご、ごめんなさい」

ケア「気持ちは分かりますけど、それで患者さんに迷惑をかけちゃ元も子もないですよ」

フィオ「そ、そうだよね、・・・・・廊下の血、氷雪のだよね?」

ケア「えぇ、致傷したのが氷でなければ命を落としてたかもしれませんね」

フィオ「で、でも、生きてさえいれば死なせないのが・・・・」

ケア「生きてさえいればね、ここに来るまでに死んでいれば私でも蘇生できませんよ」

フィオ「っ、そんなに酷かったんだ・・・」

ケア「よっぽど慌ててたんですね、廊下の血を見ればいつものフィオなら気付いたでしょうに」

フィオ「凄く、嫌な予感したから」

ケア「はぁ・・・・、ほら、こっちへおいでなさい?」

フィオ「え、う、うん・・・・」

ケア「よしよし、もう大丈夫だから、落ち着いて」

フィオ「ありが、と・・・・、って私もうそんな年じゃないよ!?」

ケア「ふふっ、でも元気出たじゃないですか」

フィオ「あ・・・・、ありがとうございます」

氷雪「ん・・・・、ぁ、ここ、は・・・・」

ケア「ほら、目が覚めたみたいですよ」

フィオ「っ、氷雪!」

氷雪「お、フィオじゃん、って事は俺生きてたんだなぁ」


ケア「箱庭の世界で 第五十二話 挺身(ていしん)の決意」


フィオ「生きてたんだなぁって・・・」

ケア「彼、運び込まれた時には気を失ってましたからね」

氷雪「いやぁ、最初は自分で走ってたんだけど、途中から足に力入んなくなってさ、
   完全に火炎に任せてたんだよね、んで完全に意識が落ちた時は、死んだかなって思った」

フィオ「っ、バカ!」

ケア「あ、叩いちゃダメですよ、傷開きますから」

フィオ「っ・・・・、ごめんなさい」

氷雪「えー、戯(たわむ)れで叩いたレベルで開くのか」

ケア「それだけ深い傷だったんです」

氷雪「すぐ動ける所まで治してくれないの?」

ケア「前々から言ってるでしょう、魔術で完治させるのは後の為になりません、
   私生活に支障が無いレベルまで治して、後は自然治癒(ちゆ)が一番なんです」

氷雪「それじゃ遅いんだよ」

フィオ「氷雪・・・?」

氷雪「俺、護らないといけない物があるんだよ、そのためには強くならないといけないんだよ、
   敵を倒せるようになんて贅沢は言わない、せめて仲間が護れる位は強くなりたいんだよ」

ケア「仲間を護る前に、自分の命でしょ?」

氷雪「だから動ける所まで治してくれって言ってるんだよ」

ケア「出来なくは無いです、が、私の術は無を有にする訳ではありません、
   私の魔力はもちろん、自然治癒するまでに必要な栄養なども消費されるんです、
   完治させようとするとね」

フィオ「それじゃあ、今すぐ治すってなると・・・・」

ケア「倒れてもおかしくないですね、なので現実的に今すぐ動けるように、
   って言うのは難しいですね」

氷雪「じゃあ、最短何日?」

ケア「・・・・・本気、みたいですね」

氷雪「当たり前だろ」

ケア「ふぅ・・・・、今日明日は絶対安静です」

氷雪「明日もか・・・・、了解」

フィオ「先生、それって本当に危なくないの?」

ケア「もちろん危ないですよ、一瞬で栄養失調状態になりますからね」

フィオ「氷雪、本当にやるの?」

氷雪「あぁ、このままじゃダメなんだよ、何より俺がいやだ」

フィオ「・・・・そ、っか」

氷雪「それじゃ先生、頼んでもいいかな」

ケア「分かりました、それでは手術を開始します、オペレーション・オン」

氷雪「いっ、やっぱり何回見てもその指先から伸びるでかいメス、慣れないな」

ケア「本物の刃物だったら怖いでしょうけど、傷つかないのだから慣れてください、
   それでは、行きますよ」

氷雪「了解っす、・・・・・っ、ぁ、んだ、これ・・・・」

フィオ「っ、先生、氷雪の顔色が」

ケア「話しかけないでください」

フィオ「す、すみません・・・・」

ケア「・・・・・・・・・ふぅ、終わりましたよ」

氷雪「かはっ・・・、み、ず、水・・・・・」

フィオ「水・・・!はい、どうぞ!」

氷雪「ん・・・・ん・・・・、ふはぁ、ありがと・・・・・」

ケア「これも飲んでください、ドリンクタイプの栄養剤です、まずいですよ」

氷雪「ありがとうございます、ん・・・ん・・・・、うぇ、まっずー・・・・」

ケア「食欲は、固形物は食べれそうですか?」

氷雪「で、出来ればすぐは勘弁して欲しいかな、今の水分ですら胃がびっくりしてる」

フィオ「だ、大丈夫?」

氷雪「あぁ、吐くほど運動した後に似てる」

フィオ「大丈夫じゃないじゃんか・・・・」

ケア「まぁ、命には別状ないですから、点滴でも打って、
   体が慣れてきたら固形物でちゃんと栄養さえ取れば明後日には元通りです」

氷雪「ありがとう先生、無茶聞いてくれて」

ケア「いいえ、でも分かりましたか、普段やらない理由」

氷雪「うん、あれはオススメしないね」

フィオ「バカ・・・、でも、もう平気そうだね」

氷雪「フィオも心配してくれてありがとう」

フィオ「お礼、言われる筋合いなんてないよ、それじゃ私行くね」

ケア「焔君を探しに、ですか?」

フィオ「そうだよ、あの女も一緒にいるならそう遠くまで行けないだろうから」

氷雪「待てよ」

フィオ「・・・・・何?」

氷雪「こないだの答、なんだけどさ」

フィオ「この間・・・・、誰の味方、って奴?」

氷雪「そ、あの時、誰の味方もしないって言ったけど、やっぱ違う」

フィオ「へぇ・・・・・、期待して無いけど、教えてよ」

氷雪「俺、もっと強くなって全員の味方になる、それが一番だと思った」

フィオ「・・・・合格点には程遠いけど、大分マシにはなったかな」

氷雪「そっか、へへ、ありがとうな」

フィオ「いいえ・・・・」

ケア「そうだフィオ、私からも一つ聞いていいですか?」

フィオ「なん、ですか?」

ケア「例えばですよ、今は赤い悪魔な訳ですが、もし焔君が私達の知ってる焔君として帰ってこれる、
   そうなった場合はどうしますか?」

フィオ「・・・・・そんなの、わかんないよ」

氷雪「フィオ・・・・・」

フィオ「先生は、そんなの聞いてどうしたいの?」

ケア「どうかしたい訳ではありませんよ、ただ万が一って事があるからね、
   復讐は復讐しか生まない、きっと貴方が彼を殺せば、違う人が貴方を殺そうとする」

フィオ「そんなの分かってるよ!分かってても、理屈でどうにかなんてならないじゃんか!」

氷雪「そうだよ、理屈じゃないんだよ、俺は誰か一人でもいなくなるのは嫌だから、
   だから強くなるんだよ、無茶なのは分かってても、みんな護るって決めたから」

ケア「まだ皆は若いから、感情で動いちゃいけないなんて言わない、理屈で動くのは大人がやるからね、
   けど、終わった後に後悔するような事はしちゃいけない、それが、する前から後悔しそう事なら尚更ね」

フィオ「そんなの、言われなくたって分かってる、全部分かってる、考える時間なら死ぬほどあったもん、
    けど、どんなに考えたって、お兄ちゃんを殺した奴なんて許せなかった、許せなかったの!」

ケア「そうですか、考え直せ、だなんて言わないから、心の隅に留めといて貰えませんか?」

フィオ「分かんないよ、私、そこまで冷静になれない、・・・・・その時になったら考える、答なんて出せない、出したくない」

氷雪「それじゃあ、その時が来るまで俺が守るから、だからもうちょっと待ってくれないかな」

フィオ「・・・・・いいよ、それじゃあ今日は真っ直ぐ帰ってあげる、だから、早く私を守れるくらい強くなってね」

氷雪「あぁ、ありがとう」

ケア「それじゃ、今日は一件落着ですね、さてと、流石にずっと保健室で寝ててもらう訳には行かないからね、
   妹を迎えに呼ぼうかな」

氷雪「あれ、先生の病院じゃないの?」

ケア「今回はちょっと訳ありだから診療所で面倒見るよ、あそこならシャドウもいるから、
   動けるようになったらすぐトレーニングできるしね」

氷雪「なるほど、何から何までありがとうございます」

フィオ「それじゃ、診療所まで付き添うよ」

氷雪「あれ、真っ直ぐ帰るんじゃなかったのか?」

フィオ「っ、変な言葉尻拾わないの、診療所から真っ直ぐ帰るよ」

氷雪「ははっ、ごめんごめん」

ケアM「やっと空気が柔らかくなったかな、全く、私も人の事言えないけど、皆不器用だね、
    人の生死が関わってるから大人が余計な口出しをすべきでない、とは言えないけど、
    彼らも不器用なりに精一杯やってる、だから我々大人は間違った道に進まないように、
    時々道を示してあげるだけできっとやっていってくれる、みんな真っ直ぐな子だから、ね」


氷雪「次回予告」

フィオ「力を求める理由は人それぞれだ」

ケア「守る為、倒す為、奪う為、取り戻す為」

氷雪「動機が負であればあるほど、人は、手段を選ばなくなる」

ケア「次回、箱庭の世界で 第五十三話 それでも私は」

フィオ「力に貴賎(きせん)はない、それを決めるのは行使する人なのだから」


とぅーびー・こんてにゅーど





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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w