チャレンジ学園祭

高木陸♂ たかぎ りく いつでも全力がモットーの元気な少年。
好きな科目は図工、工作が好き。紗智に絶賛片思い中。
山上学♂ やまがみ まなぶ 優しげな雰囲気の少年、のんびり屋さんだけどメンバーのまとめ役。
将来役者になりたいと思い、日々発声練習などに勤しんでいる。
海野紗智♀ うみの さち ちょっぴり気の強そうな少女、実は自分にちょっぴり自信がない。
ピアノを習っていて、音楽が好き。
天道雲♀ てんどう くも のんびりした雰囲気の少女、意外と人に気が使える子。
小説を書いていて、将来仕事に出来たらいいなぁって頑張ってる。




陸♂:
学♂:
紗智♀:
雲♀:


(放課後、とある教室、机をくっつけて集まる4人)

陸「おいお前ら!学園祭だぞ学園祭!」

紗智「のっけからテンション高いわね、
   叫ばなくたって聞こえるわよ」

陸「なんだよ、学園祭だぞ、ワクワクしてこないのか!」

紗智「楽しみだけど叫ぶほどじゃないかなぁ」

陸「ちぇ、ノリ悪いなぁ」

紗智「あんたがぶっ飛びすぎなのよ」

雲「まぁまぁ、まずは落ち着こう、
  計画、立てるんだよね?陸君」

陸「そう!そうなんだよ!雲は話が早くて助かるぜ!」

雲「ふふっ、ありがと、紗智ちゃんも煽らないの」

紗智「ご、ごめんなさーい」

学「よし、それじゃ進行はいつも通り僕でいいかな?」

雲「うん、よろしくね学君」

学「お任せあれ」

陸「よっ!流石がっくん、今日も頼むぜ!」

学「さてさて、今日学園祭の告知があって公に準備を始めてもいいってなったんだけど、
  僕ら世会(せかい)の四人はどう活動していこうかという指針を今日決めたいと思ってるよ」

陸「あ、なぁなぁ、なんで俺たちって世会なんだっけ?」

紗智「あんたまたその話題?」

学「それに発案陸君じゃなかったっけ?」

陸「あれ、そうだったっけ?」

雲「そうだよ、私たち4人の名前見て、これ世界じゃね!って」

紗智「私の苗字から海」

雲「私の苗字から天」

学「僕の苗字からは山」

陸「そして俺、陸!」

紗智「思いだした?」

陸「思い出した思い出した!」

学「よし、それじゃお話進めてもいい?」

陸「おっけー!」

紗智「全くもう、っと一応確認しとくけどがっくんと雲はクラスで実行委員とかにはなってない?」

学「もちろん、謹んで辞退してきました」

雲「私も大丈夫だよ」

紗智「良かった、ちなみに私も大丈夫よ、こいつは言うまでもなし」

陸「おう!呼ばれもしなかったぜ!」

学「それはそれで寂しいね・・・」

陸「いいんだよ、断る手間が省けるからな」

雲「その強さは羨ましいなぁ」

紗智「大丈夫よ、無神経なだけ」

陸「おう、よく図太いって言われるぞ」

紗智「言っとくけど褒めてないから」

陸「え、マジで」

紗智「横槍ごめんね、さぁがっくん進めちゃって」

学「ありがとうね、それじゃあ本題、みんな何かやりたい事とかある?」

陸「はいはい!」

学「はい、陸君」

陸「ステージでなんかでっかいのやりたい!」

紗智「なんかって何よ?」

陸「それはこれからみんなで考えるんだよ」

紗智「丸投げじゃない!どこでやりたいかじゃなくて、
   何をやりたいかの希望を今とってるの」

陸「マジかぁ、じゃあちょっと考えるかぁ・・・」

紗智「あ、あれだけ張り切ってたのに何もネタなかったのね・・・」

学「一応ステージでっていうのはメモしておこうかな、
  他に案ある人いる?」

紗智「んー、ステージでやるってなると模擬店みたいなのは無しよねぇ」

雲「ステージ上でやれることって言ったら・・・、合唱とか?」

学「四人の合唱でお客さん楽しませるのは大変だよね」

雲「そうだよね、パート分けは十分出来る人数なんだけどなぁ」

紗智「他には・・・劇、とか?」

陸「それだ!」

学・紗智・雲「え?」

陸「いいじゃん劇!すげぇやりがいありそう!」

紗智「いや、やりがいあるとかそういうレベルじゃ・・・」

陸「シナリオ書いて、曲作って・・・!」

雲「え、そこからやるの?」

陸「そうだ武器とかもいるよな!」

学「ファンタジーをやりたいんだね」

陸「どうよ!」

紗智「どうよってあんたどれか経験あるの?」

陸「武器ならダンボールで作ったことあるぞ!」

雲「り、陸君が小道具かぁ・・・」

陸「何その不安そうな声!?」

紗智「それじゃ今度その自信作持ってきてよ、
   見れる物だったら任せてもいいわよ」

学「小道具も大事だけど、それより先に脚本じゃないかな、
  新しく書き下ろすのか、既存の脚本を使うのかでも変わってくるし」

紗智「小説とか読むのは好きだけど、流石にお話を書いたことはないわね」

雲「あの、私やってみたいなぁって」

陸「え、雲書けんの!?」

雲「劇の台本とかは書いた事ないけど、小説なら趣味程度で書いてるの、
  だから他にいないならやってみたいなって」

学「んー、それじゃあ大変だと思うけどお願いしてもいい?」

雲「もちろんだよ!」

紗智「え、待って待って、今までスルーしてたけど、本当に劇なの?
   二人とも異論無いの?」

雲「私は面白そうだなぁって思うよ」

学「僕もだ、むしろ大賛成だよ」

陸「それじゃ多数決で劇に決定ー!」

紗智「えぇー!?」

雲「さっちゃんはイヤ?」

紗智「イヤって言うか、人前でそういうの自信ないなぁって・・・」

学「それなら任せてよ、僕小中と演劇やってたんだよ、
  って言っても子供向けに教えますよってやつだけどね」

陸「うぉー!がっくんすげぇなぁ!」

紗智「そ、それじゃあコーチっていうか先生役はがっくんね」

学「頑張るよ!さっちゃんは何かやりたい事ある?」

紗智「んー・・・、やりたい事かぁ・・・」

陸「そうだ、BGM作ってみたらどうだ?」

紗智「へ?」

陸「ほら、ピアノ弾けるじゃん!」

紗智「な、何言ってるのよあんた!楽器出来ると曲作れるは違うでしょ!?」

陸「え、たまにやらない?ノリとテンションでフレーズ作ったり」

紗智「いや、たまにするけど・・・」

陸「なら行ける行ける!ほら、ギターとかいるなら俺も手伝うからさ!」

紗智「じゃ、じゃあやれるだけやってみるわよ、
   その代わり出来なくても文句言わないでよね」

陸「分かってるって!」

学「そしたらBGMはさっちゃんだね、もしどうしても出来そうになかったら無理せず早めに言ってね、
  BGMは著作権フリーの物とか探してもいいんだし」

紗智「んー、そうね、その時は最後まで私が探すわ、やるからにはちゃんとやる」

陸「さっすが紗智!頼りにしてるぜ」

紗智「今回ばっかりは任せて、って大きな声で言えないのが辛いところね」

学「それじゃ今日決めれるのはこれくらいかな?」

雲「あ、お話の内容は私が決めちゃってもいいんだよね?」

陸「剣と魔法の話がいい」(力強く)

雲「ふふっ、それ以外のご注文は?」

陸「俺は大丈夫だ!」

学「僕も大丈夫、さっちゃんは?」

紗智「私も特にないかな、雲に一任するわ」

雲「ではお任せあれ」

学「よし、他に何かある人いる?」

雲「なさそう・・・だね」

陸「よっしゃ、それじゃいつもの行こうぜ、せーの!」

陸・学・紗智・雲「地球は今日も丸かった」

学「それじゃあ今日の集会はおしまい!
  次回はそれとなくそれぞれの活動結果を持ち寄れたらいいね」

陸「任せとけー!」

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(陸と紗智、帰り道歩きながら)

紗智「はぁ・・・」

陸「ん、どうしたんだよ紗智、ため息なんかついて、幸せが逃げちまうぞ」

紗智「あんたねぇ、これから初めてのことやるのよ、
   不安がないわけないでしょ」

陸「俺は逆にワクワクしてくるけどな」

紗智「はぁ、羨ましいわ、私もそれくらい前向きに捉えられればいいんだけどね」

陸「へへっ、紗智なら大丈夫だって」

紗智「っ、その根拠は何よ」

陸「そりゃあ・・・」

紗智「そりゃあ・・・?」

陸「紗智だからだよ!」

紗智「なんの根拠にもなってなーい!」

陸「あっははは!ごめんって!でも俺の予想が外れたことあるかよ?」

紗智「残念ながら沢山あるわ」

陸「あれ、そうだっけ?」

紗智「そうですー、まぁでも少し元気出たわ、ありがと」

陸「お、そうか!そりゃ良かった!」

紗智「全く調子のいい・・・」

陸「おう、俺はいつだってベストコンディションだぜ!」

紗智「そういう意味じゃないわよ!
   はぁっ、よし、帰ったら早速頑張ってみようかな」

陸「気合充分だな!俺も負けてらんないぜ、帰ったら一個作ってこよっと」

紗智「あんたこそダンボールって言ってたけど大丈夫なのよねぇ?」

陸「あったりまえだろ!楽しみにしてろって!」

紗智「ふぅん、じゃあ期待して待ってましょ」

陸「へへん、それじゃあまた明日だな」

紗智「うん、また明日、ばいばい」

陸「まったなー!」

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(次の日、放課後)

学「さて、今日の集会を始めようか、
  みんな、進み具合はどうかな?」

陸「はいはーい!見てくれよ!一個作ってきたんだ!」

紗智「もう作ってきたの!?」

陸「おう、あったりまえだろ、じゃじゃーん!これだ!」

雲「おぉー、凄い・・・!」

学「これを一晩で・・・!」

陸「どんな内容になるか分かんないから、まずは小さいの試しに作ってみた!」

紗智「へぇー、ダンボールに色々張ったり巻いたりしてるのね、
   遠目から見たら一晩で作ったようには見えないかも・・・」

陸「どうよ!」

雲「陸君、昨日はごめんね・・・!」

学「いやぁ、侮ってたなぁ、こんな特技があったなんて」

紗智「負けてられないな・・・」

陸「ふっふっふ、っという訳で安心して小道具を任せてくれよ!」

学「そうだね、これなら心配いらないかも」

雲「じゃあ、はい、私も私も」

学「お、雲ちゃん」

紗智「ま、まさか一晩で台本書き上げたなんて言わないでよ?」

雲「流石にそんな事出来ないよ、でもザックリとプロットは考えてきたの!」

陸「ぷろっと?」

雲「こうしようかなぁっていう考えの事かな」

陸「って事は大体の内容考えてきたって事か、すげー!」

雲「ふふー、発表しちゃっていい?」

学「うん、どうぞ」

雲「剣と魔法ってリクエストがあったから、騎士と魔法使いが出てくる話にしようと思ってね、
  騎士をやってる女の子が、悪い魔法使いに攫われた王子様を助けに行くお話にしようと思ってるの!」

陸「おぉー!いつもと逆だ!いい、それ面白そう!」

雲「よね!いいよね!」

学「中身は書いていけそう?」

雲「ばっちりだよ、イメージは浮かんでるから後は形にしていく作業かな」

学「いいね、楽しみだなぁ」

陸「紗智は今どんな感じなんだ?」

紗智「え、わ、私?えっと・・・、あ、ちょっとお花摘みに行ってくる、
   それじゃまた後でね!」

陸「あ、ちょっと紗智!?」

雲「私も行って来る」

学「うん、いってらっしゃい」

陸「え、お、俺なんかまずった?」

学「ちょっとだけタイミングが悪かったかもしれないね」

陸「が、がっくんは何が起こってるか分かんの?」

学「何となくだけどね、うーん、報告会までの期間、
  一週間ぐらい取っとけば良かったなぁ・・・」

陸「どういう事だってば!」

学「順調すぎたって事かな」

陸「それの何が悪いんだよ、わっかんねぇよー・・・」

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雲「ちょ、ちょっと待ってよー!」

紗智「な、なんで着いてくるのよー!お花摘みって言ってるでしょー!?」

雲「じゃあ何で逃げるのー!」

紗智「あー分かったわよ!止まればいいんでしょ止まれば!」

雲「え、ちょっと急に止まら・・・!」

紗智「嘘!?」

雲「きゃー!?」

紗智「いったたた・・・、あ、危ないじゃない!」

雲「運動音痴は急には止まれない・・・」

紗智「もぅ・・・、それで何よ・・・?」

雲「えっと、焦らないでって言いたかっただけなの」

紗智「っ、あ、焦るに決まってるじゃない、みんな順調なのに、
   私だけ何にも進んでないのよ?」

雲「だってさっちゃんは初めて挑戦するんでしょ?
  出来たら天才だよ、出来なくたっておかしくないんだよ」

紗智「でも雲だって初めて台本書くんでしょ?」

雲「そうだよ、でもお話考える所までは小説と一緒だよ、
  だからここまでは経験済み、初めてはここから先の事なんだよ」

紗智「雲は、不安じゃないの・・・?」

雲「不安だよ、私だって初めてだもん、台本書くのなんて、
  だからこそ止まらずやってないと逆に不安なんだ」

紗智「そっか、そうなんだね・・・」

雲「だから焦らないで、時間はまだ沢山あるんだし、
  ゆっくり、ちゃんとやって行こう」

紗智「うん、そうだね、ありがと」

雲「うん」

紗智「あー昨日からこんなのばっかりだ!もっと元気だそ!」

雲「その方がきっと楽しいよ!」

紗智「間違いない、それじゃあ2人とも心配してるだろうし、戻ろう!」

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陸「紗智!」

紗智「ただいまー、どうしたのよ、そんな一杯一杯な顔して」

陸「だってお前が急に飛び出すから・・・!」

紗智「お花摘みに行くっていったでしょ?」

陸「でも・・・!」

学「それ以上は野暮ってものだよ、陸君」

雲「乙女のお花摘みに理由は聞かない物だよー」

陸「な、なんだよー!俺だけよく分かってない感じじゃねぇかー!」

紗智「あははっ、ごめんね」

紗智「心配かけて」(小声で)

陸「んぁ、最後なんていったんだ?」

紗智「なんでもなーい!さぁ私曲作りの続きしたいし、今日はもう解散しない?」

学「お、意欲的だね、他のみんなもそれでいい?」

陸「なんかしっくりこないけどいいぞ」

雲「それじゃあ・・・」

陸・学・紗智・雲「地球は今日も丸かった」

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(あれから2週間)

学「みんな、2週間経ったけど、進行状況どうかな?」

陸「へへっ、見ての通りだ、4人分の武器!出来上がったぜ!
  後は衣装だ!ちなみに裁縫はやったことない!」

紗智「あ、って事は採寸しなきゃいけないのよね、イヤだなぁ・・・」

雲「私は殆ど書きあがったよ、後はクライマックスだけ!」

学「おぉ、それじゃあ稽古にも入れそうだね」

紗智「読みたい読みたい、何もないよりは思いつくかも!」

雲「いいよ、帰ったらグループにメールで送るね!」

紗智「ありがとー!」

学「助かるよ、そろそろセリフも覚えないといけないからねぇ」

陸「紗智はどんな感じなんだ?」

紗智「いくつか試しに作ってみたって言ってもピアノで主旋律だけなんだけど、
   ・・・聞いてみる?」

陸「聞いてみようぜー!」

(デジタルオーディオのイヤホンで順番に聞いていく)

陸「おぉー・・・、すげぇ・・・」

雲「壮大だぁ・・・!」

学「これは序曲で使えそうだね!」

紗智「本当に!?よかったぁ・・・!」

学「そしたらさっちゃんも雲ちゃんに一回送ってもらっていい?
  雲ちゃんは各曲をどこに使うか考えてみて」

雲「うん、分かった、楽しみだなぁ」

学「ちょっとずつ方向性が見えてきたね、いい感じいい感じ」

陸「それで、がっくんのしんこーじょーきょー(進行状況)はどうかな?」

学「僕の仕事はこれからじゃないか、さぁービシバシ厳しくやってくからね!」

陸「おぉー!たいく会系だ!」

学「違うよ、体育会系」

陸「へ?たいく会系?」

学「た・い・い・く、体育会系、オーケー?」

陸「体育会系、なるほど・・・」

紗智「そうか、私たちも気をつけないとなぁ」

雲「はっきり喋らないといけないんだね」

学「そうだよ、陸君は特別厳しくしないといけないかなぁ、進行状況、だよ?」

陸「お、おぉう、がっくんが怖いぜ・・・」

学「なんて言ったってコーチ役だからね!」

紗智「でもそれ位の方が楽しいね!」

雲「ねー」

陸「あ、そうだ、台本書けてきたなら誰がどの役やるかーっとか決まってるのか?」

雲「うん、もう決まってるよ」

陸「おぉ!マジか!あ、でもどんな役があるかって騎士と王子様しかまだ知らないな」

学「実は先にちょろっと見せてもらってるんだけど、
  後は悪い魔女とその護衛の騎士だったよ」

紗智「へぇー、じゃあ男の騎士も出るんだね」

陸「じゃあ俺は騎士かな!シュッシュッ!」

雲「陸君は王子様だよ」

陸「やっぱりなぁ、ってえぇ!?」

紗智「じゃあ私は魔女かな」

雲「さっちゃんは騎士だね」

紗智「えぇ!?」

学「ってことは僕が騎士で雲ちゃんが魔女だね」

陸「ちょちょちょ、ちょっと待って、マジで俺が王子様?」

雲「うん」

紗智「私騎士って事は主人公だよね?」

雲「うん、そうだよ」

陸「な、なんか今から緊張してきた」

紗智「わ、私も・・・」

学「さぁ2人とも、分かってると思うけど、厳しくいくからね?」

陸・紗智「ひ、ひぇええええええ!」

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(いつもの教室、劇の練習中)

陸「よぉシーナ、今日も精が出るな」(かっこつけて)

学「はいストップ、そこはかっこつけない」

陸「え、かっこつけちゃダメなの!?」

学「かっこつけちゃダメ、キリッてしない役なんだよ、ね、雲ちゃん」

雲「そうだね、誰にでもフランクに、親しみやすく話せる王子様なんだよ」

陸「じゃあいつも通りでいいって事か!」

学「そうだと思うので一回やってみて」

陸「おっけい!」

学「よーい、はい」

陸「よぉ、今日も精が出るな」(フランクに)

紗智「は、はいグラン様!ありがとうございます!」

陸「あっははは!そんな緊張しなくてもいいのに、
  まだ王位継承が決まったわけじゃないんだし、俺なんてまだその辺のガキンチョだよ」

紗智「だ、だとしてもグラン様は王子です、私のような一介の騎士如きが気安く話すなど・・・」

学「硬い!」

紗智「ひゃい!?」

学「確かにそこは女騎士のシーナが緊張してるシーンだけど、
  今はさっちゃんが緊張してるだけじゃないか」

紗智「ご、ごめんなさい」

学「謝らなくていいよ、その代わり次もっとやるんだ」

紗智「は、はい!」

陸M「厳しくするとは言ってたけど・・・」

紗智M「思ってた以上に厳しいよー!」

学「さぁ一個前の陸君のセリフから行こうか!よーい、はい!」

陸「あっははは!そんな緊張しなくてもいいのに・・・」(かっこつけて)

学「またかっこつける!」

陸「は、はいー!」

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紗智「はぁ・・・はぁ・・・、ちょ、ちょっと休憩、させて・・・」

学「うん、分かった、お疲れ様、そしたらその間僕と雲ちゃんのシーンの練習でもしようかな、
  雲ちゃん行ける?」

雲「待ってました、初登場シーンからでいいよね」

学「そうだね、陸君は合図お願い」

陸「お、おぅ、それじゃ行くぞ、よーい、はい!」

雲「退屈だわ、退屈だわ!何か面白いことはないのかしら!」

学「クラウディア様、ご報告がございます」

雲「あらヒルド、何か退屈を凌げることでも見つかったのかしら?」

学「お気に召すかは分かりませぬが、
  とある国に無鉄砲な王子がいるという噂を聞きつけました」

雲「それがどうしたというの?」

学「王子は己の剣がどこまで通用するか試したくて、うずうずしているらしいのです」

雲「実際強いのかしら」

学「いえ、あの程度の太刀筋であれば僕の足元にも及ばないでしょう」

雲「へぇー、ソレの何が面白いというのよ」

学「その国の騎士団に所属するというシーナという女騎士の存在です」

雲「女騎士?」

学「はい、普段は無意識のうちに力を抑えているのですが、
  感情が高ぶると途轍もない実力を発揮するとか」

雲「それが強いのね」

学「僕達2人に届きうる程に」

雲「素敵ね、それにしましょう、もちろん策はもう考えているのよね、ヒルド?」

学「もちろんですともクラウディア様、この僕にお任せください、
  見事あの女騎士の全力を出させて見せましょう」

雲「期待しているわ、久しぶりに楽しくなりそう、
  あはは、あーっははははは!」

陸「す、すげぇ・・・」

紗智「経験者のがっくんは流石だとしても、雲も凄い熱の入り方・・・」

雲「あ、ありがとう、やってる間は大丈夫なんだけど、後から恥ずかしくなってくるね」

学「いい緊張感でやれてるって事だよ、後は練習あるのみだ」

雲「うん!」

陸「くっそー!負けてらんねぇ!紗智、俺たちもやるぞ!」

紗智「よし、やろう!このままじゃ戦うシーンとかで迫力負けしちゃうもんね!」

学「じゃあ休憩はおしまい?」

陸「当然!」

紗智「ばっちりよ!」

学「よーし、それじゃキュー振るよ、よーい、はい!」

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学「カット!お疲れ様、今日はこれくらいにしようか!」

陸「だっはぁー!疲れたぁー!」

紗智「はぁー・・・、こんな声出したの久しぶりだぁ・・・」

雲「ふふっ、2人ともお疲れ様」

学「いやぁ、結構いい感じになってきたんじゃないかな」

陸「おぉ!マジか!」

学「まだまだ直す所はいっぱいあるけどね、形は見えてきたかも」

陸「やったぜー!」

紗智「直す所はいっぱいあるのよ、分かってる?」

陸「分かってるって!その分練習すればいいんだろ!」

紗智「はぁ、本当に分かってるんだか・・・」

雲「きっと大丈夫だよ、やる気満々だもんね」

陸「おぅ!任せとけ!」

紗智「不安でしかないわ・・・」

学「あ、そうだ雲ちゃん、クライマックスはどう?」

雲「忘れてた、書けたんだよ!今日印刷して持ってきてる!」

紗智「本当に!?読みたい読みたい!」

陸「俺も!俺も!」

雲「はい、ちゃんと人数分持ってきてるよ」

紗智「ありがとう!」

陸「楽しみにしてたんだよなぁー!」

学「どれどれ・・・」

紗智「え・・・!?」

陸「うぉ、ま、まじか・・・!?」

紗智・陸「キスシーンがある!?」

雲「あ、大丈夫!そこは演出効果でしてるっぽく見せるだけのつもりだから!」

学「本当にしてもいいんだけどね」

陸「む、無理に決まってんだろ!人前で、き、キスなんて!」

紗智「そ、そうだよ!」

雲「安心してって、っぽくでいいんだからね」

陸「うぉおおおおお!無茶振りだぁああああああ!」

学「あっははは、それじゃあ今日は解散かな?」

雲「そうだね、2人とも、ちゃんと頑張ってねー?」

紗智「や、やる時はちゃんとやるよ!」

雲「ふふっ、楽しみだなぁ」

学「そうだね、っとそれじゃあ今日はこの辺りで」

陸・学・紗智・雲「地球は今日も丸かった」

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学「そして、とうとう当日がやってまいりました、
  今日までみんな、本当にお疲れ様」

陸「何言ってんだよ!そういうのは本番が終わってからだろ!」

学「そ、それもそうだね」

紗智「何、緊張してるの?」

学「今日が本番だって思ったら、ちょっとね・・・」

雲「ここまで来たら後は出番を待って、全力を出すだけだよ」

学「そ、そうだね!全力出すだけだ!」

陸「よーし!時間まで他の出し物見に行こうぜ!」

紗智「よくそんな余裕あるわね・・・」

陸「緊張紛らわすならそれが一番だろ!丁度ステージにも面白そうなイベントあるし!」

雲「ステージなら移動もいらないし、準備もすぐ入れそうだね」

学「他の有志がどんな事をやるかの調査も出来るし、それなら賛成だ!」

陸「おし、そうと決まれば行こうぜ!」

学・紗智・雲「おー!」

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陸「さっきのバンド、超盛り上がったな!」

学「かっこよかったなぁ、体温上がったかもしれない」

紗智「会場凄く温まってるよ!あそこでやるの楽しみ!」

雲「気合入ったぁー!」

陸「俺たちも負けないくらいブチかまそうぜ!」

学「負けるわけないって、あんなに頑張ったんだから!」

紗智「そうだよ、準備期間すっごく充実してたんだもん!」

雲「本番、ばっちり決めようね!」

陸「おう、やってやるぜー!」

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雲「ようこそ私の城へ、歓迎するわ、グラン王子」

陸「な、なんで俺の名前を知ってるんだ、魔女め!」

雲「当然じゃない、私は魔法使いよ、知らないことはないわ、
  あなたが父王に認められたくて焦っていることだってね」

陸「くっ、そんな挑発・・・!」

雲「えぇ乗っていただかなくても結構よ、
  取るに足らない存在が粋がっても鬱陶しいだけだもの、ヒルド!」

学「ハッ、クラウディア様、ここに」

雲「さぁ、やっておしまい」

学「お任せあれ、さぁグランよ、己が無力さを思い知れ!」

陸「舐めやがって・・・!うぉおおおおおおお!」

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紗智「はぁ・・・、グラン様が魔女退治に出て一週間、無事だといいけど・・・」

(ノックの音)

紗智「ん、はーい!ってあれ、誰もいない、・・・手紙?
   ・・・騎士シーナへ送る、王子は預かった、返して欲しければ1人で取り返しに来い、
   魔女クラウディア様の忠実な僕(しもべ)、ヒルドより・・・、
   許さない・・・、待っててグラン様、今すぐ助けに行くわ!」

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学「待っていたぞシーナよ」

紗智「グラン様を返して」

学「開口一番それか、育ちが知れるというものだ」

紗智「グラン様を返して!」

学「ふっ、それ程までに欲するならば、この僕を超えてみろ!」

紗智「簡単なことで良かったわ」

学「ほざけ、はぁぁあああああ!」

紗智「私の邪魔をするなぁぁぁあああああ!」

学「っ、速い!?」

紗智「はぁ!」

学「ぐあぁ!?」

紗智「さぁグラン様はどこ、答えなさい!」

雲「ヒルド!」

紗智「っ!」

雲「あなた、よくもヒルドをやってくれたわね・・・!」

紗智「あなたがクラウディアね、グラン様はどこ?」

雲「お黙りなさい!たかが騎士の癖に、生意気なのよぉ!」

紗智「くぅ!」

雲「なんの力も持たないタダの騎士が、魔女に勝てるわけがないわ」

紗智「確かに私は特別な力は持ってないかもしれない、
   でも、守りたいって気持ちは、誰にも負けない!」

雲「そんな物で強くなれると思ったら大間違いよ、
  孤独、孤独が人間を強くするのよ、だって私はそれしか、知らなかったぁ!」

紗智「っ、凄い力・・・!でも、あなたは大切なものを見落としている、
   いいえ、見ようとしていない!」

雲「うるさい!私にそんなものなんてない!」

紗智「それが認められないなら、私には、勝てない!」

雲「っ、嘘、きゃあ!?」(持っていた杖を飛ばされる)

紗智「私の勝ちよ、さぁグラン様はどこ?」

雲「・・・この奥で眠っているわ、私の魔法でね」

紗智「ありがとう、それじゃあ」

雲「待ちなさいよ!」

紗智「っ!」

雲「私の、私の大事なものって、なんなのよ・・・?」

紗智「あの騎士、ヒルド、だっけ、生きてるわよ」

雲「え、ヒルド、ヒルド!」

学「う・・・、クラウディア様、よかった、無事で・・・」

雲「あなたこそ、生きてて良かった・・・」

紗智「よし、私もグラン様を助けに・・・」

雲「魔法を解く方法を教えてあげる」

紗智「え、本当に!?」

雲「王子の眠りを覚ます方法は、ただ1つよ」

紗智「ただ、1つ・・・?」

雲「そう、それは、愛する者のキス」

紗智「き、キス・・・」

雲「せいぜい頑張りなさい・・・」

紗智「ぐ、グラン様に、私が、き、キス・・・!」

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陸「すー・・・すー・・・」

紗智「グラン様、本当に寝てる、近くで戦ってたっていうのに目が覚めないってことは・・・、
   や、やっぱり、キスじゃないと目が覚めないのね・・・」

陸M「うぉー、マジで来ちまったぞこのシーン!
   お互い緊張でまともに練習出来てねぇのに・・・!」

紗智「ぐ、グラン様、目を覚まして!お、お願い!
   やっぱりダメなのね・・・、でも、私なんかがグラン様にキスするなんて・・・するなんて・・・」

陸M「あ、あれ、紗智、大丈夫か・・・?」

紗智M「ヤバイ・・・!緊張しすぎて、セリフ忘れちゃった・・・!」

学「ど、どうしよう雲ちゃん、さっちゃん多分あれセリフ飛んでるよ・・・!」(舞台袖で小声)

雲「こうなったら・・・!」

学「あ、雲ちゃん・・・!」

雲「どうしたの、騎士シーナ、さっき私に叩いた大口は嘘だったって言うの?」

紗智「あ、く・・・、クラウディア・・・」

雲「あなたのグランへ対する思いはその程度だっていうのかしら、
  目を覚まさせる自信がないのよね?」

紗智「そ、そんな事ないわよ・・・」

雲「じゃあ何を戸惑っているというの、早く目を覚まさせてあげればいいじゃない、
  不安だって言うならその思いの丈をぶちまけてみなさいな!」

紗智「あ、そ、そうだ!わ、私は陸が!あ、ぐ、グラン様が好き!
   ずっと憧れていたの!本当は、もっと仲良くしたかった、
   訓練中に慰めてくれた時、凄く嬉しかった!
   だから、あなたの為なら、私はなんだって出来るの!
   だってずっと前から、好きだったんだから!」

雲「それだけの想いがあれば充分よ、さぁ、目覚めのキスを!」

紗智「っ、陸!」(駆け寄る)

紗智「ちゅ・・・」

陸「んっ・・・!?」

雲「あ・・・!」

学「い、行った・・・!?」

紗智「ん・・・、あ・・・!」

陸「お、おはよう、さ・・・シーナ、た、助けてくれて、ありが、とう・・・」

紗智「あ、あぁ・・・、わ、わた、私、人前で・・・!」

学「こ、こうして!騎士シーナは魔女クラウディアの魔の手から、
  王子グランを助け出したのでした、めでたしめでたしー!」

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紗智「本当にごめんなさい・・・!」

学「だ、大丈夫だよ、あれはあれで会場盛り上がってたし!」

紗智「でも、クライマックスが台無しに・・・」

雲「あれはあれである意味狙い通りだし台無しって程じゃ・・・」

学「雲ちゃん!」

雲「あー!ううん、私もアドリブ楽しかったし、大丈夫だよ!」

紗智「うぅ・・・、でも・・・」

学「気にしないで!って言っても無理だと思うからちょっと2人で休んでて、
  僕たちは片づけしてくるから、ね?」

雲「そ、そうだね、ゆっくりしてていいよ!
  それじゃまた後でね!」

紗智「あ、雲!がっくん!い、行っちゃった・・・」

陸「あ、あの・・・」

紗智「ひゃい!」

陸「さ、さっきの・・・」

紗智「な、なんでもないの!り、陸だって、迷惑でしょ?私なんか・・・」

陸「め、迷惑なんかじゃない!」

紗智「え・・・?」

陸「俺だって、俺だってずっと前から、紗智のこと好きだった!
  ずっと俺みたいなバカが告ってもダメだって思ってたから、
  今日は超嬉しかった!は、恥ずかしかったけど・・・」

紗智「ほ、本当に・・・?」

陸「こんな時にこんな嘘付くほどバカじゃねぇって!
  俺は、紗智の事が大好きだ!」

紗智「陸・・・」

陸「な、なんで泣くんだよ!?」

紗智「だって、だって嬉しくて・・・」

陸「じゃあ泣くなよぅ!」

紗智「じゃあどうしたらいいのよぉ・・・!」

陸「え、えっと、そ、そしたら・・・!」

紗智「んぅ・・・!?」

陸「・・・はぁ、ファーストキスの、やり直し、でどう?」

紗智「ばかぁ・・・、ありがとぅ・・・」

陸「お、おぅ、あ、そうだ、順番逆になっちまったけど、
  俺と付き合ってください!」

紗智「えへへ・・・、こちらこそ、お願いします・・・!」

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陸「っという訳で、俺たち付き合うことになりました!」

紗智「ちょ、ちょっと、ばらすの早すぎでしょ!
   馬鹿じゃないの!?」

陸「いや、どうせばれるなら早いほうがいいっしょ!」

紗智「わ、分かんないわよ、私付き合うの初めてなんだもん・・・」

陸「俺だってだよ!」

雲「ふふふっ、あはははは!」

陸「え?」

学「あっはははは!」

紗智「な、何?何なの?」

雲「2人がちゃんと付き合う事になってよかったなぁって思って」

紗智「も、もしかして・・・?」

学「ずっと前から気付いてたよ、っていうか付き合ってないって聞いた時の方が驚いたくらいかな」

陸「え、マジかよ!?」

雲「お節介焼くのも野暮かなぁって思ってたから、ずっと見守ってました」

紗智「えぇー・・・、な、なんか空回ってたのが凄く恥ずかしくなってきたんだけど・・・」

陸「へ、へへーん、でもがっくんより先に彼女作ったもんねー!」

学「え、僕彼女いるよ?」

陸・紗智「えぇ!?だ、誰!?」

雲「はい、学君の彼女です」

陸・紗智「えぇー!?」

紗智「い、いつから・・・?」

学「2人と知り合った時にはもう?」

陸「ま、マジかよ・・・」

雲「隠してたわけじゃないんだけど、わざわざ言う必要もないかなぁって思ってね」

紗智「で、でもそんな素振り全然・・・」

学「人前ではいちゃつかない様にしてただけだよ、ねー?」

雲「ねー?」

紗智「あ、って事はあの台本と配役・・・!」

雲「それは内緒ー!」

陸「雲・・・!」

雲「あ、もしかして怒った・・・?」

陸「ありがとう!恋のキューピットだ!」

雲「ふふっ、どういたしまして」

紗智「うぅ、釈然としないー!」

学「地球は今日も丸かった」

紗智「綺麗にしめようとしないでー!」



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