蒼い夜の吸血鬼 第四話 ロストバージン

蒼夜♂ 17歳 (そうや) 最近までいたって普通な高校生だった、幼くして両親と死別してる為家事全般完璧。
物腰柔らかな優しい好青年、尽くすタイプ。
ロウガ♂ 50歳(見た目は25歳位) 絹の城に住む狼男、絹の血で人化した狼、使い魔の用な存在。
豪快かつ面倒見のいい兄貴肌。結構ズバズバ言うはっきりした性格。
牙や爪、持ち前の瞬発力で戦う。
リム♀ 19歳 絹の城に住むコウモリ女、こちらも絹の血で人化したもの、完全に使い魔状態。
絹に完全に心酔している、一見抜けているように見えるが、ちゃんとした所もある、やっぱり抜けてる。
カリスト♂ 24歳 ブラッド旗揚げ時に反逆をした吸血鬼の一人。「無機の支配者」の異名を持つ。
意思ある者を全く信用していなく、自分と無機物のみを信用している。
他人を見下した節があり、舐めたような態度をとることが多い。



蒼夜♂:
ロウガ♂:
リム♀:
カリスト♂:


(城の見える森の中)

蒼夜「あれが、敵の城、ですか・・・」

ロウガ「緊張してるのか?」

蒼夜「そ、そんな訳・・・!」

リム「正直に言ってね、その辺りをサポートするのも私たちのお仕事だから」

蒼夜「・・・・・・はい、緊張はあります」

ロウガ「ま、仕方ないわな、慣れる事はないだろうからな、緊張してることに慣れるのが重要、だな」

リム「慣れたら緊張しつつもリラックス出来るようになるわよ」

蒼夜「慣れ、ですか・・・」

ロウガ「今回はそれも目的の一つだからな」

リム「訓練とは違う、本気の殺意を向けてくる敵との戦い」

蒼夜「本気の殺意・・・」

リム「カリストと直接相対したら貴方が戦うんだからね」

蒼夜「僕に、できるんでしょうか・・・」

ロウガ「そん時になれば体が勝手に動くさ、さ、行こうぜ」


カリスト「蒼い夜の吸血鬼 第四話 ロストバージン」


蒼夜「ここ・・・ですか」

リム「そ、ここが無機の指揮者、カリストの城ね」

蒼夜「無機の指揮者?」

ロウガ「奴の能力、もしくは二つ名、って所か」

リム「話でしか聞いたことないからなんとも言えないんだけどね、
   無機物を操るって話を聞いたことあるわ」

ロウガ「ま、行けば分かるって、多分な」

(ロウガ一人先に進む)

蒼夜「ま、待ってくださいよ〜」

(蒼夜、リム、ロウガを追う)

カリスト「貴方達、ちゃんとアポは取りましたか?」(この場にいない、響くような声)

(天井が落ちてくる)

蒼夜「えっ!?」

ロウガ「受け止めろ!」

蒼夜「っ、はい!」

(三人が落ちてきた天井を受け止める)

カリスト「へぇ、いい反応ですね、そこで死ななかった生き物は久しぶりです」

ロウガ「は、吸血鬼なんだ、死んでるようなもんだろうがよ」

カリスト「あっははは、それもそうですね、盲点でしたよ」

リム「ロウガさ〜ん、談笑してないでなんとかしましょうよ〜」

蒼夜「そ、そうですよ、こ、このままじゃペタンコですよ!?」

カリスト「安心してください、入り口で毎回全滅して貰われては面白くないですからね、
     救済は用意してありますよ」

ロウガ「ハン、お優しいこって」

カリスト「出来る出来ないは別ですけどね、そこのボタンを・・・」

ロウガ「この俺を、舐めんじゃ、ねぇえええええええ!」(人狼化し、怪力で天井のギミックを破壊する)

カリスト「・・・・・・・・・・」

リム「えっと、このボタンですよね?」(ボタンを押す音)

蒼夜「ロウガさん、それはダメですよ、反則です」

ロウガ「ふぅ、よっしゃ、行こうぜ」(元に戻る)

リム「そうね、行きましょー」

蒼夜「・・・・・・はい、そうですね」

ロウガ「あぁ、蒼夜、今更だが」

蒼夜「は、はい、なんですか」

ロウガ「余裕そうに見えても油断だけはするなよ、気はいつでも張り詰めておけ」

蒼夜「え?」

リム「いくら吸血鬼になって感覚が研ぎ澄まされてるといってもね、経験不足だし、
   なにより私たちは元動物、天性の感覚があるの、君と違ってね」

ロウガ「そういう事だ、・・・よし、さっきのもあるし用心するにこした事はないな、リム、見てもらえるか?」

リム「はい、お任せあれー、・・・うん、この先もギミック一杯よ」(超音波を用いたエコーロケーションで辺りを調べている)

蒼夜「分かるんですか?」

リム「だって、私、コウモリだもの」

蒼夜「なるほど、そういえばそうでしたね」

ロウガ「はいはい、談笑はいいからさっさと進もうぜ」

蒼夜「ご、ごめんなさい」

リム「でも、どうやって進みましょうね、私とロウガさんはともかく、ソーヤ君は」

ロウガ「ギミックは電動か、仕組みだけか」

リム「仕組みだけよ、残念ながらショートはさせられないわ」

ロウガ「数、密度は、生身でいけるか」

リム「ギリギリ、かな、ロウガさんだったら多分余裕」

ロウガ「よし、走り抜けるぞ、俺について来いソーヤ、
     リムは雷神スタンバイでそこに待機」

リム「分かったわ、危なくなったら援護ね」

(リムがバチバチと帯電し始める)

蒼夜「・・・・・・・ついていけば、いいんですよね?」

ロウガ「あぁ、準備はいいな、行くぞ!」

(ロウガ走り出す)

蒼夜「はい!」

(続いて蒼夜走り出す)

(ギミック起動、刃物の音、石の駆動音)

ロウガ「来たな、よっ!」

蒼夜「っ、はっ!」

カリスト「ふふふっ、そこに飛び込みますか、無謀ですね、私の能力を甘く見られたものです」

ロウガ「げぇ、途中で軌道が変わるかよ、俺でもきっちぃな」

蒼夜「うわ、っと、ひぃ、あ、あぶなっ」

ロウガ「ちぃ、おい、焦んな!落ち着いて動きを見ろ!」

蒼夜「そ、そんな事、言われても!」

(雷鳴響き、周りのギミックが床に落ちる)

リム「ロウガさん!ソーヤ君を!」

ロウガ「おうよ!風神、ソウヤ、掴まれ!」(風の吹く音)

蒼夜「は、はい!」

ロウガ「よっしゃ、行くぜ、おぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」

(風と雷の音、風になったロウガが蒼夜を運び、雷となったリムがギミックを壊してゆく)

カリスト「・・・・・・気に入らないですね、そのやり方」

ロウガ「はぁ・・・はぁ・・・、勝手に言ってろよ、生き残ったもん勝ちだぜ」

リム「そういう貴方のやり方も好かれるやり方じゃないわよ〜」

(しばし沈黙)

蒼夜「黙っちゃいましたね」

ロウガ「そんなもんだ、いや、我ながら失策」

蒼夜「そうですよ!あんな手があるなら最初からしてくださいよ!」

ロウガ「あ?お前はなんの為にここに来てんだ、場慣れするためだろうが、
    最初からやったら練習にならねぇだろうが、甘えんな」

蒼夜「っ・・・・、す、すみません」

リム「はいはい、そこまでにしましょ、次々〜」

ロウガ「ちょ、んだよ、俺悪者みたいじゃねぇか」

リム「そういう事にしときましょ」

ロウガ「おい、待てって!」

蒼夜「・・・やっぱり、緊張感持ちづらいなぁ・・・」

(しばらく進むと大きな扉)

リム「大広間の奥に玉座、って雰囲気かな?」

ロウガ「ここからが本番だな」

蒼夜「はい」

ロウガ「よし、行くぜ!」

蒼夜「え、ろ、ロウガさん!?」

ロウガ「おらぁ!」(扉を蹴破る)

カリスト「やはり気に入らない、気に入りません、特にそこの人狼!」

ロウガ「ハッ、言ってろ」

蒼夜「っ、あれ!」

(甲冑の群が広間に、こちらに向かって行進してくる)

ロウガ「へぇ、この城に他の生き物がいるとはおもわな・・・」

リム「空っぽ、ですね」

ロウガ「あぁ、臭いがしねぇ」

蒼夜「って事は、あれ全部、能力で動いてるんですか!?」

リム「みたいね、思ったよりキャパシティ大きいみたいね、彼」

ロウガ「だな、蒼夜、ここからが本当に本番だ」

蒼夜「どういう、事ですか」

ロウガ「殺気だ、今まで見たいな遊びじゃねぇ、殺す気で来てる」

リム「それに、空っぽとはいえ、あれには彼の気が満ちてるわ、実戦を味わういい機会よ」

蒼夜「はい、分かりました」

カリスト「へぇ、僕は練習台か、ますます気に入らない」

ロウガ「来るぞ、ここから先は面倒見切れないぜ」

蒼夜「・・・・はい、やってみます」

リム「それじゃ、幸運を祈ってるわよ」

(鎧騎士が一斉に襲い掛かってくる)

ロウガ「おっし、蹴散らすぜぇ、おらぁ!」

リム「行くよ、それ!」

蒼夜「習ったとおりにやれば大丈夫、行ける、行ける、はぁ!」

(三人が鎧をなぎ倒して行く)

リム「っと、ソーヤ君、なかなかやるじゃない」(蒼夜とリム背中合わせ)

蒼夜「そう、ですか、ありがとうございます!」

ロウガ「どぉらぁ!おいテメェら、談笑なんかしてねぇで働けぇ!」

リム「ふふっ、談笑って、はぁ!使いたかっただけでしょ?」(ここから戦いながら会話してるイメージ)

ロウガ「悪い、かよ!」

蒼夜「いえ、そういうの、僕好きですよ!」

リム「あらら、もう喋りながら戦えるんだ」

ロウガ「まっ、こいつら程度なら、なっ!」

リム「そうね、っと、やれなきゃ、困るわね!」

蒼夜「後少し!ですね」

ロウガ「ハッ、終わりなんて見てねぇで、前見てろって!」

蒼夜「それも、そうですね、よし、これで、最後!」

(最後の騎士鎧が倒れ、少し間が開く)

リム「ふぅ、思ったより呆気なかったね」

蒼夜「それもそうですね」

ロウガ「後は本体だけか?」

(小さくかちゃっと言う音、三人の背後で剣が浮かび上がり歯を向ける)

リム「っ、後ろ!」

蒼夜「えっ!?」

ロウガ「カマイタチ!」

(カマイタチと剣がぶつかり、剣が翻り空中で待機する)

蒼夜「何、あれ」

カリスト「流石、ですね、大概はここで油断して死んでくれるんですけどね」

リム「私たちを舐めないでくださいよ」

カリスト「半人の金魚の糞のクセして吼えますね」

ロウガ「あぁ?テメェ、よっぽど死にてぇらしいな」

カリスト「死ぬのは、貴方達です、覚悟してください」

(周りの武具が一つ一つ浮き上がる)

蒼夜「今まで、手加減してた、って事ですか?」

リム「そうね、最初からこう来ていれば私たちも最初から本気を出さざるを得なかったもの」

蒼夜「え、じゃ、じゃあ・・・」

ロウガ「そういう事だよ、俺たちだって、まだ本気じゃねぇんだぜ」

カリスト「ならば、見せてもらいましょうか、その本気とやらを!」

(武器が一斉に降り注ぐ)

ロウガ「風神、竜巻!」

(台風が三人を中心に発生し、武器を巻き上げる)

リム「雷神、ライトニングアロー!」

(リムが雷となり、台風に飛び込む、そして武器を砕いてゆく)

蒼夜「す、凄い・・・」

ロウガ「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!
リム  はぁぁぁぁぁあああああああ!」

(風と雷が鳴り止む、バラバラになった武器が床に落ちる)

ロウガ「どうだ三下、これが格の違いだ」

リム「絹様の悪口は許さないんだから」

カリスト「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ロウガ「へっ、ぐぅの音も出ないみたいだな」

リム「そろそろ本人登場、かな」

(扉が開き、鎧の歩く音、カリスト登場)

ロウガ「そう来たか、ちょいと厄介かも知れねぇな」

リム「ソーヤ君、後は貴方の仕事よ」

カリスト「不愉快です、実に不愉快です、最後の最後まで僕は練習台か!」

蒼夜「待ってください!」

カリスト「なんですか」

蒼夜「貴方の負けはもう見えてます、降参、してください」

ロウガ「っ、おまっ」

リム「ロウガさん、ここは任せましょう」

ロウガ「・・・・分かった」

蒼夜「勝てないと分かって戦うことはないと思います、だから」

カリスト「ふざけるな!お前は付いて来ただけだろう!
     自分の力でもないくせに、情けなんて掛けるんじゃない!」

蒼夜「っ、なん、なに、が」

カリスト「一人じゃ何も出来ない奴が、僕を見下すなぁぁぁぁあああああああ!」

(カリスト勢いよく前にとび、蒼夜に斬りかかる、蒼夜爪で受け止める)

蒼夜「っ、見下すなんて、し、して」

カリスト「僕は僕の力で親になったんだ、お前みたいな親の七光りだけで
     城主になったような奴とは違うんだ!」

(カリストが振り払い剣と爪が離れる)

カリスト「どいつもこいつも、人の一生をなんだと思ってるんだ!
     ふざけるんじゃない、僕が何をしたっていうんだぁ!」

蒼夜「待って!僕はそんなつもりじゃ!」

カリスト「何が違う!全部聞いていたんだぞ!僕は練習台なんだろうが!」

蒼夜「ちが、違う、違う・・・」

カリスト「皆そういうんだ!都合が悪くなると違う違う違う!
     そんなつもりじゃなかった?そっちが違っても僕にとっての現実はそこにしかないんだよ!」

蒼夜「ひっ、やめ、た、助けっ」

ロウガ「抵抗しろ!お前は殺されるために来たのか!?」

蒼夜「そん、な、あぁああああ!」

(蒼夜の反撃カリストに当たる、カリスト後ろに少し飛び体勢を直す)

カリスト「ぐっ、はぁ・・・はぁ・・・、まだ、だ、僕はまだ!」

蒼夜「くっ、はぁ!」

カリスト「なっ、っぐぁ!」

(蒼夜、受け流しカリストを地面に押さえつけのど元に爪を突きつける、ヘルムがはずれ転がっていく)

蒼夜「はぁ、はぁ、これ、で、僕の勝ちです、お願いだから降参を」

カリスト「この期に及んでまだそんな事を!」

蒼夜「ぐぅ!」

(カリスト、蒼夜を蹴り飛ばす)

カリスト「甘えと情けを抱えて、そのまま死んでしまえ!あぁぁぁあああああ!」

蒼夜「くっ、うぁぁぁぁぁぁああああああ!」

(交差、蒼夜、カリストの胸を貫く)

カリスト「ぐぅぅ!がふっ、は、はは、結局、僕は、最後まで、負け組、か・・・、
     良かったね、ナイト君、これで、君も晴れて人、殺し・・・」

(カリスト崩れ落ち、息絶える)

蒼夜「死、んだ、僕が、殺した・・・?」

リム「おめでとう、初勝利だね」

蒼夜「おめでとう!?人を殺して、おめでとうですか!?」

ロウガ「人じゃない、そいつは敵だ、敵を殺して生き残ることが出来た、
     それも、味方側に一人も犠牲者を出さずに、だ」

蒼夜「でも!人が一人死んだんですよ!?僕が、殺し、殺し・・・た」

ロウガ「これが現実だ、殺し殺される、敵味方に別れ剣を取った、
     その時点で覚悟はしなきゃならねぇ!」

リム「生きるって事は犠牲の上に成り立っているの、ましてやこれは戦争、
    生きる覚悟って言うのは、殺す覚悟と一緒なの」

蒼夜「それじゃ、僕は、まだ沢山殺さないといけないんですか?
    分かり合えないんですか、お互いに生き続ける道はないんですか?」

ロウガ「全てがそうじゃないだろうさ、だが、決して分かり合えない奴がいるのも確かだ」

リム「じゃなかったら、こんな状況になってないわ」

蒼夜「そんな、そん、な、あ、あぁ、うわぁぁぁぁぁああああ!」


カリスト「次回予告」


リム「あの子には悪いと思うけど、これで、目的は達成、なんだよね?」

ロウガ「あぁ、いずれ経験しなくちゃならない事だ、早い方がいい」

リム「でも、立ち直れるかな、あそこから」

ロウガ「立ち直ってもらわなきゃ困るだろ」

リム「・・・うん、そうだね」

カリスト「蒼い夜の吸血鬼 第五話 ファーストコンタクト」

蒼夜「僕は、どうしたら、どうしたら・・・」

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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w