Arc Jihad(アークジハード)-目覚めと躊躇い-

ヤマトタケルノミコト♂ 25歳 日本の英雄のパーソナリティをインストールされた男性。
普段はおちゃらけているが、やる時はやる男。
神蔵俊久♂ (かみくら としひさ) 35歳 ミスティオン関東支部の支部長、不思議な事が好きな学者。
飄々としていて人をからかうのが好き。
デイヴ・エドキンズ♂ 23歳 ミスティオンの構成員、セレスの助手、学者としては同期。
若干落ち着きが無い、力仕事には自信あり。
セレス・カーライル♀ 23歳 ミスティオンの支部長、オカルトマニアな歴史学者。
ノリは軽いが頭の回転が凄く早い、一部からは天才と言われている。





タケル♂:
俊久♂:
デイヴ♂:
セレス♀:




セレス「ん・・・、ふぁ・・・」

タケル「お、起きたか、おはようセレス」

セレス「おはよう・・・、私、何日寝てた・・・?」

タケル「安心しろ、半日くらいだ」

セレス「よかった、日を跨いでないなら上等よ」

タケル「はぁ・・・、お前、経験あるんだな?」

セレス「あははっ、何回かね、そんな事どうでもいいの、あれから何か動きあった?」

タケル「この女は・・・、まぁいいか、とりあえず克巳と子龍が関西に向かったぞ」

セレス「うん、それは早い方がいいものね、いい動きだと思うわ、他は?」

タケル「これといったのは」

セレス「そっか、それじゃヌアザが動くまでは少し猶予がありそうね、よかった」

タケル「・・・そんで、プランはあるのか?」

セレス「そうねぇ・・・、もう一回同じ事聞くけど、ヌアザと酒呑童子、どっちが強い?」

タケル「だから強さの系統が違いすぎて比較が出来ねぇんだって」

セレス「それって、詳しく説明って出来る?」

タケル「んー・・・、俺も頭で考えるタイプじゃねぇからあんま自信はないけど、
    頑張ればなんとか」

俊久「面白そうな話してるね、僕達も混ぜてくれないかな?」

デイヴ「よぉ、セレス、起きたんだな」

セレス「どうも、お二人さん、見計らったようなタイミングね」

俊久「そうなんだよ、仕事のキリが付いてタケル君に報告しようと思ったらこれだったんだよね」

デイヴ「俺たちもセレスがこんな早く起きると思ってなかったからな」

セレス「背負ってる案件の大きさが違うもの、当然でしょ」

デイヴ「あぁそうだった、お前はそういう奴だったよ」

セレス「そういう事よ」

タケル「なぁセレス」

セレス「ん、何かしら?」

タケル「これからどんな奴と戦うか分からないんだ、
    今後は体ぶっ壊すような事はやめてくれ」

セレス「ぅ、ごめんなさい、気をつけるわ」

デイヴ「おい待てよタケル、何もそんな言い方・・・!」

セレス「いいのよデイヴ、もう二回戦ってるからタケルの言いたい事は分かるの、
    それに、私の命は私だけのものじゃないから、でしょ、タケル?」

タケル「いいや、お前の命はお前だけの物だ、勝手に余計なもんまで背負うな」

セレス「・・・タケルって、優しいのか冷たいのか分からないわね」

タケル「よく言われる」

俊久「現実的だよね、感情を抜きに現状把握が出来る」

タケル「ただ目の前の事こなしてるだけだ」

俊久「でも心を無視しない」

タケル「だから甘いって言われるんだよなぁ・・・」

俊久「ふふっ、元の世界でも似たような事言われてたみたいだね?」

タケル「まぁな・・・、そんな事はどうでもいいんだよ、本題、そろそろ入るか?」

セレス「そうしましょ、この話題、意外と耳が痛いし」

タケル「えっと、ヌアザと酒呑童子の強さの違い、だったよな」

セレス「そうね」

デイヴ「グレアムさんと辰則の担い手、だな」

タケル「あぁ、どっちも化物みたいに強いってのは共通点だな」

俊久「おや、という事は化物ではない、と?」

タケル「んー・・・、ある意味人やめてるのは俺も同じ様な物だからな・・・、
    そうだな、認めたくないだけか、化物だよ、どっちも」

俊久「あぁそういう事が言いたかった訳ではないんだけど」

タケル「いやいいんだ、俺もちょっと自覚が足んなかった、
    あんたらから見たら俺だって充分化物だ」

デイヴ「なんか、同じ形して通じる言葉喋ってんのに、
    そういうのって悲しくねぇか?」

タケル「仕方ないだろ、実際それくらいの力の差はあるんだから」

セレス「んー、そこも後で掘り下げてもいい?」

タケル「もちろん」

セレス「ありがと、それじゃ話を進めましょう、まずは酒呑童子から聞かせて?」

タケル「分かった、そうだなぁ、あいつはあれで結構頭いい奴だぞ、
    狡賢いって言うか」

俊久「初対面で相手のトラウマを見抜き、それに付け入り精神的主導権を握れる、
   そう簡単な事じゃないからね」

デイヴ「俊久が言うとすげぇ重みがあるな・・・」

セレス「当たり前じゃない、経験者は語るよ」

デイヴ「え・・・?」

俊久「嫌だなぁセレス、僕は悪用なんかしたりしないよー」

タケル「確かにそこは重要な所だな、毒にも薬にも使えるだろうからなぁそれ」

俊久「褒めても何もでないよ?」

タケル「はいはい、話先に進めるぞー」

俊久「おや冷たい」

タケル「そんだけ頭回るくせにイッちゃってんのがヤバイんだ、
    一線を簡単に越えれる癖にちゃんと踏み止まれる」

セレス「・・・厄介ね」

タケル「だろ?そんで地力も折り紙付きと」

デイヴ「対処しようがないじゃねぇかそんなん」

セレス「大丈夫、契約者が穴よ」

デイヴ「あ、そうなのか?」

俊久「んー、残念ながらあの子は荒事得意じゃないからねぇ」

タケル「お陰で助かった、って言っとこうか?」

俊久「上司としては複雑な気持ちだけどね」

セレス「そこは役割分担が出来てるからいいじゃない」

俊久「それもそうだね、しかし彼の強さは意外とシンプルのようだ」

タケル「だからこそ、ただただ強いんだけどな」

デイヴ「それじゃあ、ヌアザの強さって一体なんなんだ?」

タケル「・・・あいつは、人じゃねぇから」

デイヴ「人じゃない?」

タケル「躊躇いなく人の心を壊せる奴が、人であってたまるかよ」

セレス「そう、ね・・・」

俊久「グレアムさんが向こう側に取り込まれたというのは聞いたけど、
   ただそれだけじゃないみたいだね?」

デイヴ「待ってくれ、話が全然見えねぇんだが、ただ騙されてる訳じゃねぇって事か?」

セレス「ごめんなさい、一人で抱える事じゃなかったわね」

俊久「今グレアムさんの現状をきちんと把握してるのは二人だけなんだ、
   情報をちゃんと共有してもらわないと、困っちゃうな」

セレス「そうね、私が甘かったわ、何かあってからじゃ遅いもの」

デイヴ「セレス・・・」

タケル「何かあるような事にはするつもりなかったが、そうだよな、
    確かに二人揃って独りよがりだったかもしれないな」

俊久「気付いてくれたならそれでよし、さ、沈んでないで話の続きだ」

タケル「あぁ、それじゃヌアザとグレアムの状態から、簡単に言うと洗脳、だな」

デイヴ「簡単に言うとって事は、まだなんかあるんだな?」

タケル「・・・俺たち担い手の出来る事に、マージ・ウェイクってのがある」

セレス「もしかして、グレアムさんの中からヌアザの声が聞こえてきたのは・・・」

タケル「その通りだ」

俊久「今の口ぶりだと、君も、あの酒呑童子も出来るって事だね?」

タケル「・・・あぁ」

デイヴ「お、おい、そのマージ・ウェイクってのはどんなもんなんだよ?」

セレス「憑依、であってるかしら?」

タケル「ニュアンスは大体それでいい」

俊久「それは穏やかじゃないね」

タケル「不穏を感じる前に説明をさせてくれ」

デイヴ「一番不穏な空気を放ってる奴が何言ってやがる」

タケル「悪かったよ、俺もアレと同じ事が出来るって考えると憂鬱なんだ・・・」

セレス「出来るって事はしない事も出来るんでしょ、タケルが気負う必要ないじゃない」

タケル「・・・それもそうだな、そんじゃ気を取り直してだ、マージ・ウェイク、
    さっきは憑依って言ったが、俺達はシンクロって話してた」

俊久「そっちの方が平和な響きだね」

タケル「そうだな、本当なら担い手と契約者を同調させて一体化する技だ、
    これをすると俺たち担い手の力が数段アップする」

デイヴ「合体して強くなるって事だな」

タケル「また元も子もない表現をしてくれるな・・・、でもまぁそういう事だ」

セレス「それがどうして洗脳に繋がるの?」

タケル「同調してるって事は直接影響しあうって事だ、
    担い手が悪意を持って入り込めばマインドコントロールだって簡単に出来る」

俊久「それは逆も然り、だね」

タケル「あー、まぁそうだな、滅多にないとは思うが、契約者の精神力が強ければ原理上出来なくはない、
    ただ担い手は力があるからな、競い合ったら基本的には担い手が勝つと思うぞ」

俊久「ふむ、なるほどね、そもそも土俵が違う訳だ・・・」

セレス「という事は、行動の主導権は担い手が握るのよね?」

タケル「それはマージ・ウェイクしてる二人次第だ」

デイヴ「相談して決めれるって事か」

タケル「そういう事だな」

セレス「それであの時はグレアムさんの意志で動いてたのね・・・」

タケル「力を使わせていたんだろう、神から力を授かった、
    そう実感すれば信仰はより深まるだろうからな」

俊久「おぉ、という事はアレだね、マージ・ウェイクをすれば僕たちこっちの人間が、
   担い手の力を使う事が出来ると言う訳だ!」

セレス「え、何、本当!?」

デイヴ「マジかよ!ずっりぃなぁ、適合者ってずっりぃなぁ!」

タケル「お、おう、お前ら待て、同じ所で一斉にテンション上がらないでくれ」

俊久「おっと、ごめんよ、ついね」

デイヴ「し、しょうがねぇだろ」

セレス「オカルトマニアだものね」

タケル「そうだったな、真面目な話してるとお前らがそういう奴だって事忘れそうになるな」

俊久「いいや、今は絶対に忘れていたね、その言葉の使い方は間違っているよ」

タケル「はいはい、分かった分かった、俺が悪かった、で満足したか?」

セレス「そうね、少しだけ気が紛れたわ、続けましょう」

タケル「おぅよ、そういう訳で、マージ・ウェイクするとパワーアップもするし、
    お互いがお互いの力も使えるし、超強くなれる訳だな」

俊久「その代わりデメリットが、という事だね」

タケル「あぁ、いくら身体能力が強化されるとはいえ、普段出せない力を出せるようになるんだ、
    身体的疲労は通常とは比べ物にならない、精神的なものはお互いの相性次第だけどな」

デイヴ「いざって時に使う最終奥義か、乱発は出来ないんだな」

セレス「だとしても、しない事にはヌアザには勝てなさそうね」

俊久「さっきの話だと、相手はその状態で向かってくる訳だし、
   四の五の言ってられなさそうだ」

タケル「それに関しては否定できないな、あいつの攻撃から考えてみても、
    守る対象が減るのはいくらか楽になる、
    どうせ一撃で死ぬなら防御力が下がった所で影響はないだろうしな」

セレス「待って」

タケル「ん?」

セレス「今なんて言ったの?」

タケル「守る対象が減るのは楽になる?」

セレス「その後よ」

タケル「一撃で死ぬなら防御力が下がった所で影響はない?」

セレス「そうそこ、パワーアップはするのに防御力は下がるの?」

タケル「そりゃそうだろ、担い手よりも契約者の方が体は脆いんだから」

デイヴ「とんでもない事を普通の事みてぇに言うんじゃねぇよ、それ滅茶苦茶重要じゃねぇか」

タケル「・・・おぉ、そうか、普通じゃないのか、ってそうだ、化物って自覚が足りないんだったな俺は」

俊久「具体的にどれくらい違うんだい?」

タケル「そうだな、してない時なら痛いけどこれ位なら死なないかなってダメージで死ねるくらいには」

俊久「つまり相当違う訳だね・・・」

デイヴ「ってことは逆にマージ・ウェイクしてる時こそチャンスじゃねぇか、
    今まで効かなかった攻撃が効くようになるって事だろ!」

タケル「契約者も一緒に殺すって言うならそういう事だな」

デイヴ「って事は・・・」

セレス「グレアムさんも一緒に、って事よね・・・」

俊久「なるほど、相手は常時人質で楯をとりながら自由に戦ってるって訳だ、
   これは困ったね、何か対処方はないのかな?」

タケル「クラウ・ソラスを、レプリカを壊せば担い手はこの世界で命を保てないからな、
    やるならそれしかない」

俊久「ふむ、もちろんそれはこちらの世界の兵器じゃ壊せないわけだしね、
   これは困った物だ・・・」

デイヴ「マージ・ウェイクを解除させる方法があれば・・・」

タケル「シンクロ率が下がれば自然と解ける、物なんだが、
    あれだと無理やり入り込んでるに近いからな」

俊久「それも期待出来なさそうだ」

セレス「・・・体が死にそうになったら、自分で出ていくんじゃないかしら」

俊久「ほぅ、それは名案だ、と言いたい所だけど、とんでもない事を言っている自覚はあるよね?」

セレス「分かってるわ、もちろん死なせない、例えばよ、逃げられないようにして首を絞める、とか」

俊久「死を予感したら逃げるんじゃないかって事だね」

セレス「そう、これならどうかしら?」

タケル「マージ・ウェイクしてる状態のあいつを、逃げれないように出来るならありなんじゃないか?」

セレス「・・・そっか」

俊久「これは、どちらかを取るしかないのかもしれないね」

デイヴ「っ、やる前から諦めてどうすんだ!そんなんじゃ出来る事も出来なくなっちまうだろうが!」

俊久「覚悟を決めないといざって言う時に選べないよ?」

デイヴ「ぐっ・・・!」

セレス「・・・はぁ、分かったわ、それも視野には入れる、けど、私は諦めたわけじゃないから」

タケル「もちろんだ、あくまで最終手段だからな」

デイヴ「なんで、なんでセレスはそんな簡単にそんな事言えるんだよ・・・?」

セレス「・・・自分の命がかかってるからよ」

デイヴ「っ・・・!」

セレス「もちろん世界を救いたいって言うのもあるわ、でも、その前に、
    今ヌアザに命を狙われているのは私なの」

デイヴ「そっか、そうだよな・・・」

セレス「あぁもう、何でデイヴが落ち込むのよ、これは私の問題でしょ、
    それに、こんな所で死んだら世界を救うことすら出来ないじゃない」

タケル「安心しろって、セレスは俺が絶対守るから、俺が女を死なすような人間に見えるかよ」

俊久「もしそんな風に見える人間がいたら僕見てみたいなぁ」

タケル「辰則は?」

俊久「それは言わないお約束だ」

セレス「ぷっ、あっははは!俊久が言い返されるなんて珍しい!」

俊久「んー、流石の僕も不出来な部下の事を言われると心苦しいんだなぁ」

タケル「よっし、やっと弱点見つけたぞこの野郎」

俊久「ふふん、いい気になれるのは今の内だよー?」

セレス「それじゃ今の内にいい気しときましょ、
    さっ、タケル、後は何かある?」

タケル「パッと思いつくのはこんなもんだな」

セレス「分かったわ、そしたらお話は一旦終わり、
    あぁーお腹空いたわ、ご飯食べましょご飯」

俊久「おっと、そう言えば寝起きだったね、忘れてたよ」

セレス「そうよー、半日も寝てたからお腹ぺこぺこよ、
    みんなはもうご飯食べた?」

俊久「そりゃもちろん、仕事明けの僕が食べてる訳ないじゃないか」

タケル「俺も食べてない、ずっとここにいたしな」

デイヴ「俺もまだだな」

セレス「それじゃみんなで食堂行きましょ!」

俊久「そうだね、さて、何を食べようかなぁ」

デイヴ「っ、タケル!ちょっとだけ聞きたい事がある!」

タケル「ん?なんだ?」

デイヴ「すぐ追いかけるからセレスと俊久は先に行っててくれよ」

セレス「分かったわ、また後でね」

デイヴ「おう、また後でな」

タケル「・・・んで、二人きりで聞きたい事ってなんなんだ?」

デイヴ「そう大した事じゃねぇんだけどよ、銃って、担い手に効くのか?」

タケル「効かねぇよ、ちなみに、マージ・ウェイクしてる状態なら効くけどな」

デイヴ「そうか、分かった、ありがとよ、悪い、そんだけなんだ、行こうぜ」

タケル「あぁ、・・・無理すんなよ」

デイヴ「分かってるよ、俺を誰だと思ってんだ」

タケル「お前、それは知り合って浅い人間に振る流れじゃないぞ」

デイヴ「それもそうだ!まぁつまり大丈夫ってこった、早く行こうぜ!」

タケル「おい、走らなくても飯は逃げねぇって!・・・たく、あいつは・・・、
    ・・・死ぬんじゃねぇぞ、デイヴ」






to be continued...




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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