Arc Jihad(アークジハード)プロローグ第一章 -戦いの始まり-

グレアム・ベックフォード♂ 34歳 ミスティオンの総裁、実績の伴わない活動に頭を抱える
超常的な物を探求している、本業は歴史学者。
ヌアザ♂ 48歳 ケルトの神のパーソナリティをインストールされた男性。
荘厳かつ威圧的、カリスマ的な重圧を持つ。
ヤマトタケルノミコト♂ 25歳 日本の英雄のパーソナリティをインストールされた男性。
普段はおちゃらけているが、やる時はやる男。
セレス・カーライル♀ 23歳 ミスティオンの支部長、オカルトマニアな歴史学者。
ノリは軽いが頭の回転が凄く早い、一部からは天才と言われている。




グレアム♂:
ヌアザ♂:
タケル♂:
セレス♀:




セレス「すみません、グレアムさん、いらっしゃいます?」

グレアム「セレスか、入ってくれ」

セレス「はい、失礼します、こんにちわ、お久しぶりです」

グレアム「あぁ、久しぶりだな、よく来てくれた」

セレス「いえいえ、団長の招集とあれば、それに今回は結構大掛かりな儀式になるみたいですし」

グレアム「そうだな、今回は別室での同時作業が必要になる故、
     信用できるものでなければならんからな」

セレス「ふふっ、一介の支部長である私を、そんなに信頼しちゃっていいんです?」

グレアム「君の支部は優秀な者が多いからな、それは君の手腕であろう」

セレス「そう言ってもらえると頑張りがいがありますね」

グレアム「それは良かった、では、今回もよろしく頼むぞ」

セレス「もちろんです」

グレアム「うむ、では、これが今回の計画書だ」

セレス「拝見します、・・・・・ふむふむ、二つの支点から同時儀式を行い、
    対の存在を反発させ、それぞれの場所に引き寄せる、って感じですね」

グレアム「理解が早くて助かる」

セレス「ありがとうございます」

グレアム「道具などは既に所定の部屋に運んである」

セレス「至れり尽くせりですね」

グレアム「今回は私が依頼をしている立場だからな、当然であろう」

セレス「他の支部もそれくらいの心遣いがあればよかったんですけどねぇ・・・」

グレアム「予算もある、仕方なかろうて」

セレス「それも・・・・うん、そうですね、お陰でうちの支部はいつもカツカツです」

グレアム「今度の予算委員会で相談してみよう」

セレス「助かります、さてと、時間もありますし、部屋に向かいますね」

グレアム「それもそうだ、では」

セレス「えぇ、また後程」

グレアム「・・・・・予算、か」

タケルN「グレアムは独りごちて宙を仰ぐ、彼ら、ミスティオンが発足して早数年、
     あれ程用意した資産も底を見せ始めている、
     一部余興のために協力する有力者の個人資産で持っているようなものだ」

ヌアザN「そもそもの発端はただのオカルトサークルである、超常的な遺物を研究する集まり、
     活動は広く行われ、遺跡の発掘などの実績を残したり、次第に有名になっていった、
     だが、いくら探せど真に力を秘めし物など、見つかりはしなかったのだ」

グレアム「そろそろ何かを成功させねば、資金援助が打ち切られてしまうな、
     それならそれで、またあの小さな活動に戻るだけ、なのだが・・・、
     付いてこぬ者も、大勢いるだろうな・・・」

グレアム「・・・・・いかんな、私がこのザマでは、皆に示しも付かぬ、
     今日成功させればいい、それだけではないか」

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タケルN「ミスティオン本部、大講堂、講壇には大きな魔方陣が描かれている、
     そこで、グレアムは時を待つ、その周りを囲むように団員たちが祈りを捧げていた」

グレアム「・・・・時は至れり、相克する聖と魔よ、今ここに集われたし、大いなる力は反発し、
     引かれ合う陣へと落ちたまえ、我らが前に、その威光を!」

グレアム「・・・・・・・ダメなのか、私の祈りは、届かぬのか・・・!」

タケルN「何も起きず、落胆の息が漏れる中、変化は、訪れた」

グレアム「っ、魔方陣が、光を・・・・くっ!?」

グレアム「・・・・・・収まった、・・・あれは、剣、か?
     やった、やったぞ皆!とうとう成功したのだ!」

グレアムM「なんだ、あの反応の違いは、まさか、あの剣を、見えている者と見えていない者がいるのか・・・・!?」

ヌアザ「ここは・・・、そうか、とうとう辿り着いたか・・・」

グレアム「っ、声?」

ヌアザ「ほう、お主、我が見えるか」

グレアム「・・・はい、はっきりと、私はグレアムと申します、貴方は・・・・?」

ヌアザ「我が名はヌアザ、クラウ・ソラスの担い手なり」

グレアム「なっ、まさか、そんな、神を、召喚してしまったというのか・・・!」

ヌアザ「いや、お主は切っ掛けを作ったに過ぎぬ、選ばれたのだ」

グレアム「私が、選ばれた・・・・?」

ヌアザ「そうだ、気付いているであろう、私の姿が見えぬ者がいる事に」

グレアム「まさか、見える事、そのものが、素質・・・」

ヌアザ「その通り、・・・・私は、この世界を救いに来たのだ」

グレアム「この世界を、救いに」

ヌアザ「だが、あのように私を感じられぬ者もいる、
    手助けが必要だ、そう、お主の様な者の、な」

グレアム「私で、私でよければお使いください!」

ヌアザ「すまぬな、では私の使いである証を授けよう」

グレアム「証・・・・」

ヌアザ「輝け、至宝の剣よ、クラウ・ソラス」

グレアム「クラウ・ソラスが、二振り・・・?」

ヌアザ「今から渡すのは、あくまで形を成しただけの証だ、あの陣に刺さるのが、我が剣なり」

グレアム「なるほど、では・・・・」

ヌアザ「契約は、為った」

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セレス「ここが儀式の部屋ね、・・・・おぉ、もう準備出来てる、魔方陣どころか生贄の配置まで終ってる、
    それだけ今回の儀式は力入ってるのね、でも、何もこっちの部屋、私一人にしなくてもいいじゃない・・・、
    慣れてるとはいえ、血やら爬虫類やら・・・、生贄って結構怖いのよ?」

セレス「・・・うん、よし、手順と呪文の確認しよう、失敗したくないし」

ヌアザN「セレスは椅子に腰掛け、先ほど受け取った計画書に目を通す」

セレス「・・・・・・・うんうん、難しいのは何もないわね、時間をぴったりに唱えるだけ、
    呪文も難しくないし、これなら手順ミスだけはないわね」

ヌアザN「言いながら数回読み返し、計画書をしまう。ふっと時計に目を向けると、予定の時刻が差し迫っていた」

セレス「よし、やるかな・・・・」

セレス「時は至れり、相克する聖と魔よ、今ここに集われたし、
    大いなる力は反発し、引かれ合う陣へと落ちたまえ、我らが前に、その威光を!」

ヌアザN「部屋が静寂に包まれ数秒、彼女はがっくりと肩を落とす」

セレス「はぁ・・・、グレアムさんに報告に行かなきゃなぁ・・・・、
    って待って、これ私のせいにされそうだよ、ちゃんとやったって証人いないもん!
    うわぁ・・・・、凄く、報告に行きたくないなぁ・・・」

セレス「って、何、魔方陣が光って・・・くぅ!?」

タケル「・・・・おぉ、ちゃんと着いたか、本当に、移動できるもんだなぁ・・・」

セレス「・・・・・・人と、剣?」

タケル「ん、お、あんた俺が見え・・・・」

セレス「凄い凄い!これ成功じゃない!?ねぇねぇこれ成功じゃない!」

タケル「ちょ、ちょっと落ち着いてくれないか」

セレス「あ、ごめんなさい、私はセレスと言うの、貴方の名前は?」

タケル「ふぅ・・・、俺の名前はヤマトタケルノミコト、タケルと呼んでくれ」

セレス「ホント!?」

タケル「・・・・へ?」

セレス「うわぁー!凄い凄い!英雄召喚しちゃったんじゃない私!」

タケル「お、落ち着けって言ってんだろ!」

セレス「あ、ご、ごめんなさい、・・・・待って、と言う事はその剣・・・・」

タケル「あぁ、天叢雲剣<あまのむらくものつるぎ>だ」

セレス「・・・だよね。いくつか聞きたい事出来たのだけど、いいかしら」

タケル「どうぞ?」

セレス「まず一つ目、俺が見えるのかって言ったわよね」

タケル「あれ聞けてたのか・・・」

セレス「遮ったのはごめんなさい、話戻すわね、つまり、見えない人がいるって事よね?」

タケル「その通りだ、誰もが見える訳じゃない」

セレス「それじゃあ二つ目、天叢雲剣は日本で奉納されてるはず、
    それにそんなに保存状態は良くないはずよ、それは、レプリカなの?」

タケル「話が本当に早い、正しく、これは神の力が宿った、伝説上の本物を模して作ったレプリカだ」

セレス「・・・・・うん、色々と引っかかる所はあるのだけど、分かったわ、
    それじゃあ、それがレプリカだとして、貴方は誰?」

タケル「・・・・あんた、賢いんだな」

セレス「そういう茶化しはいらないわ」

タケル「こっちは茶化してるつもりはないんだが、まぁいいか、
    先に言っておくが、かなり突拍子も無い話だぞ」

セレス「そういう話は大好物よ」

タケル「そうか、まず、俺は異世界から来た存在だ」

セレス「・・・・凄い、本当に儀式は成功していたのね」

タケル「みたいだな、それで、俺は、ヤマトタケルノミコトのパーソナリティをインストールされた人間だ」

セレス「パーソナリティをインストール・・・、つまり貴方は、ヤマトタケルノミコトではないのね」

タケル「あぁ、元はただのしがない一般人だ、何の力も持たないな、
    そこに伝説上のヤマトタケルノミコトを模した力と情報を乗っけて出来た、英雄のレプリカだ」

セレス「剣どころかその担い手すらもレプリカだなんて、凄い世界ね・・・」

タケル「まぁな、そんだけ戦える人間に困ってるって訳だな」

セレス「・・・・ねぇ、そこまでして戦える人間を作る理由があるのよね」

タケル「本当に聡いな、本当はそこは話したくないんだが」

セレス「どうして?」

タケル「女性を命のやり取りに巻き込みたくない」

セレス「首を突っ込むか突っ込まないかは、話を聞いてから決めるから教えて」

タケル「・・・・・なぁ、さっきから俺の話を鵜呑みにしてるようだが、大丈夫なのか?」

セレス「にわかには信じがたい話だとは思うわ、でもこういう物を探していたのだもの、
    ひとまず聞いてみる、その上で真偽は見極めるつもりよ」

タケル「・・・・分かった、まず、俺がこの世界に来た理由、それは侵略から守るためだ」

セレス「もしかして、その英雄のレプリカが他にも・・・・?」

タケル「あぁ、俺は先遣だからまだ着いてはないだろうけど、これからまだまだ来るな」

セレス「それは心躍るわね・・・」

タケル「は?」

セレス「ごめんなさい、続けて」

タケル「あ、あぁ、まぁ、それでこっちの世界の人間の協力が必須になるんだが・・・・」

グレアム「すまないセレス、いるか?」

セレス「ん、グレアムさん、いますよ」

タケル「っ、この気配・・・!いれるな!」

セレス「え?」

グレアム「失礼するぞ、やはりかセレス、成功しているなら何故早く報告に来ない」

セレス「あ、ご、ごめんなさい、今話を聞いていて・・・ってあれ、グレアムさんにも見えてるんですか?」

グレアム「当然だ、さぁ・・・、早くその聖剣を私によこしなさい!」

セレス「っ、まさか」

タケル「逃げるぞ、セレス!」

セレス「ごめんなさい、ふっ!」

グレアム「ぐぅ!?」

セレス「こっちよ!」

タケル「あぁ!」

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セレス「はぁ・・・・はぁ・・・・、外まで来れば、ひとまず大丈夫かしら・・・」

タケル「いい判断だ、助かったぞ・・・」

セレス「助かったって、よくよく考えたら英雄のレプリカである貴方の方が強いわよね」

タケル「いや、今の俺は無力なんだ」

セレス「・・・・・どういう事?」

タケル「俺たち向こうの世界の人間は、こっちに来ただけでは実体を持つ事が出来ない、
    あんた達、この世界の人間とコントラクト、まぁ契約の事だな、それをしない限り、何一つする事は出来ない」

セレス「なるほど・・・、そのコントラクトって言うのはどうやってするの?」

タケル「だから、出来れば巻き込みたくないって」

セレス「もう巻き込まれてると思うんだけど、そこの所はどう思うのかしら?」

タケル「ぐっ・・・」

グレアム「セレス!どこだぁ!剣を私によこせぇ!」

セレス「このまま見つかったら何も出来ずに共倒れね」

タケル「命の危険に身を晒すために人を脅す女なんて初めて見たぞ、
    後悔するなよ!」

セレス「するものですか」

タケル「あぁ分かったよ!出雲のオロチよりいでし宝剣よ、今こそ我が前にその姿を!天叢雲剣!」

セレス「剣が、二振りに・・・・」

タケル「これを掴めば、もう後戻りは出来ない」

セレス「本当だとしても、嘘だとしても、後悔はしないわ、男のクセにくどいわよ」

タケル「言うじゃねぇか、それじゃ、頼むぜ相棒!」

セレス「えぇ!」

グレアム「セレス、どこだ、剣を、よこせぇ!」

セレス「行きましょう」

タケル「あぁ、今ならまだ敵もコントラクトしたばっかだ、差は担い手の力のみだ」

セレス「グレアムさん!」

グレアム「おぉ、セレス、来たか・・・・、そうか、貴様も契約<コントラクト>したか」

セレス「はい、聞いてください、グレアムさんの所に召喚された物が、魔剣だったんです」

グレアム「そんな筈は無い!ヌアザ様が魔の存在であるものか、輝ける聖剣、クラウ・ソラスを持つヌアザ様が!
     魔であるものか!この世の救世主だ、私は選ばれし者なのだ!」

セレス「グレアム、さん・・・?」

タケル「無駄だ、もう意識を侵されている」

セレス「そんな・・・」

グレアム「輝け、至宝の剣よ、クラウ・ソラス!」

タケル「まさか、セレス!俺の後ろへ!」

セレス「っ、えぇ!」

グレアム「スラッシュ・オブ・シャイン!」

タケル「八咫鏡<やたのかがみ>!」

セレス「くぅ、辺りが光に・・・!」

ヌアザ「ふむ、まさか我がクラウ・ソラスの一太刀を前情報無く防ぐとは」

グレアム「あんな小さな鏡に防がれた、だと」

ヌアザ「鏡から障壁が広がっていたのだろう、思いの他力を持った剣のようだ、中々やる」

タケル「可能性の一つを試したまでだ、そんな事よりテメェ、無理やり乗っ取りやがったな」

ヌアザ「何の事かね、この者は進んで私に身を捧げたのだ、貴様には関係なかろう」

グレアム「私はヌアザ様の使徒、この世界を、救うのだ・・・」

セレス「グレアムさん!」

グレアム「その為には魔剣を滅ぼさねば為らぬ、さぁセレス、その剣をよこせぇ!」

タケル「ちっ、セレス、ここは一旦退くぞ!」

ヌアザ「この私が逃がすと思うか」

グレアム「スラッシュ・オブ・シャイン!」

タケル「くっ、八咫鏡!」

セレス「ダメよ、このままほっとけない」

タケル「バカヤロウ!こんな化物に一人で勝てるわけねぇだろうが!」

セレス「さっきから攻撃防いでるじゃない!」

ヌアザ「その男の言うとおりだ、次は、しとめようか!」

グレアム「おぉ、白い翼で宙を・・・、これが、これが天の使いでなく何だと言うのだ、セレスよ!」

タケル「空を飛んだ!?マズイ、クソ!」

セレス「きゃ!?」

グレアム「スラッシュ・オブ・シャイン!」

タケル「八咫鏡!」

セレス「っ、周りの地面が、抉れて・・・・!?」

タケル「あいつの攻撃範囲は、光の届く場所全てだ、反撃なんか出来るわけねぇ」

ヌアザ「流石に三回目となれば仕組みは割れるか、だが、分かった所でどうしようもなかろう」

セレス「光の届く場所・・・、影が増えればいいんでしょ?」

ヌアザ「グレアム」

グレアム「ハッ、スラッシュ・オブ・・・」

タケル「くっ・・・!」

セレス「私を抱えたまま鏡は出せるわよね!」

タケル「っ、そうか、捕まれセレス!」

セレス「えぇ!」

タケル「よし、よっ!八咫鏡!」

グレアム「シャイン!」

ヌアザ「ふむ、高さを合わせ安全地帯を増やすか、あの二人、実戦経験が無い割りにやる」

グレアム「いかが致しますか?」

ヌアザ「本来ならばここで殺しておきたい所だが・・・」

タケル「これならいける、避ける事だけに集中していれば・・・・!」

ヌアザ「無駄に力を消費する事はない、ここは、見逃してやろう」

グレアム「はっ、ヌアザ様の仰せのままに」

セレス「・・・・・・・帰っていく?」

タケル「あのヌアザも力は無限じゃない、って事か」

セレス「はぁ・・・・・、良かった、何とかなったって事ね」

タケル「おい、あれをいつか倒さなきゃなんねぇんだぞ」

セレス「仲間が増えれば作戦の立てようもあるわ」

タケル「・・・・・前向きだな」

セレス「いいえ、理論を立てる余地が残ってるだけよ」

タケル「ふっ、それもそうだな、よっし、いつまでもここにいる訳にはいかねぇし、どうする?」

セレス「一度私の請け負っている支部に行こうと思うわ、皆にも伝えて行動させないと」

タケル「支部?」

セレス「さっきまでいた所が本部、その組織の支部よ、私、支部長なの」

タケル「そんな安易な逃げ先でいいのか?」

セレス「人質取られる方が厄介よ」

タケル「なるほど、それなら早い方がいいな」

セレス「そういう事、それじゃ、行きましょう」



to be continued...




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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