Arc Jihad(アークジハード) -人の一振りと鬼の狂宴-
岡田以蔵♂ | (おかだ いぞう) | 30歳 | 幕末に生きた人斬りのパーソナリティをインストールされた男性。 はっきりと物事を言う性格。よく言えば忠実、悪く言えば自分がない男。 |
常盤光明♂ | (ときわ みつあき) | 22歳 | 常盤財閥の末子、所謂金持ちのお坊ちゃん。 表面上は丁寧だが、根は捻くれており、他人を見下している。 |
酒呑童子♂ | (しゅてんどうじ) | 27歳 | 伝説の鬼のパーソナリティをインストールされた男性。 粗暴だが悪知恵が働き、人の心をよく分かった男。 |
ゼウス♂ | 45歳 | ギリシャの神のパーソナリティをインストールされた男性。 威厳があり落ち着いている。 |
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成川菫♀ | (なるかわ すみれ) | 24歳 | ミスティオンの職員、自身は聖剣の契約者だが、魔剣に手を貸している。 真面目で苦労人、尊敬する上司の為に身を粉にして働いている。 |
モルゴース♀ | 36歳 | 魔女のパーソナリティをインストールされた女性。 計算高くそれでいて残忍、人を利用する事をなんとも思わない。 |
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モーガン・ル・フェイ♀ | 22歳 | エマ・アッシュベリーの洗脳された姿。 無邪気かつ冷酷、本来の頭の良さも相まって凶悪。 |
以蔵♂:
光明♂:
酒呑♂:
ゼウス♂:
菫♀:
モル♀:
フェイ♀:
以蔵「今日も忙しないな成川、だが一向に俺に仕事が来ないが首尾はどうかね」
菫「朗報よ以蔵、今日は忙しい日になりそうだわ」
以蔵「おっと藪蛇だったか、まぁ刀が錆びるよりはマシとしよう、それでどんな仕事だ?」
菫「魔剣の担い手が二人見つかったみたいよ」
以蔵「・・・この時間なら通勤ラッシュは避けられそうだな」
菫「安心して」
以蔵「何がだ」
菫「徒歩圏内よ」
以蔵「二組共か?」
菫「えぇ、忙しくなりそうでしょ?」
以蔵「・・・やはりその仕事は無しにしないか?」
菫「いきなり何を言い始めるの、色々な方面に申し訳が立たなくなるでしょ」
以蔵「んー、そうか、なら致し方ないな、行くとしよう」
菫「何よ、言いたいことがあるなら言いなさいな」
以蔵「嫌な予感がする、ただそれだけだ」
菫「予感・・・ね」
以蔵「あぁそう大した理由じゃない、雇い主が行くというなら俺はそれに従うさ」
菫「そうね・・・、申し訳ないけど行かないという選択肢は私たちの立場上ないから」
以蔵「獅子身中の虫であろうとしている以上、当然だな」
菫「でも私は貴方を失う訳にはいかない、だから現場での引き際は貴方が見極めて」
以蔵「ほう?」
菫「これでも信頼しているんだから、貴方の腕」
以蔵「はぁ、褒めても何も出んぞ」
菫「結果を出してくれればそれで十分よ」
以蔵「そんな物でよけりゃ」
菫「ふふっ、それじゃ行きましょうか」
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光明「おや、今日も担い手とお出掛けかい菫ちゃん?
精が出るねぇ」
菫「常盤君・・・、何の用?私忙しいのだけど」
光明「そんな嫌そうな顔しなくたっていいじゃんか、
僕たち昔からの馴染みだろ」
菫「だからよ、だって常盤君、話長いんだもの」
光明「君がサバサバしすぎなだけだよ」
菫「はぁ・・・、で、何の用?」
光明「いやぁ、最近働き詰めでしょ、だから少し休んだ方がいいんじゃない?
って思ってさ、全く、君みたいなか弱い女の子にこんなハードワークさせるなんて、忍の奴も・・・」
菫「好きで働いてるんです!もういい?
私に休ませたかったら少しでも早く解放してくれる?」
光明「人の親切を無下にしないようにって子供の頃教わらなかった?」
菫「人に迷惑かけないようにって子供の頃教わらなかったのかしら?」
以蔵「痴話喧嘩は人のいない所でやってくれ、定刻のない仕事とはいえ、
待ってくれるような相手でもないだろう」
菫「だから痴話喧嘩でもなんでもないって言ってるでしょ!」
以蔵「いいから行くぞ」
菫「あ、ちょっと引っ張られなくても行くわよ」
光明「おい待てよテメェ!」
以蔵「何だ、忙しいと言っている」
光明「僕が今菫ちゃんと話してたんだ、
それを邪魔するって事はどういう事か分かってるんだろうな聖剣さんよぉ?」
以蔵「俺たちはヌアザの指示で動いている、
それを妨げるというのはどういう事か分かっているな?」
光明「ぐっ・・・!」
以蔵「ではな」
光明「あんの・・・クソ野郎が!菫ちゃんの契約相手じゃなかったら速攻でぶち殺してやるのに!」
ゼウス「常盤よ」
光明「っ、なんだよゼウス、あんたも邪魔をするなって言いたいのか?」
ゼウス「・・・あの女を生かしておきたいか?」
光明「何を言ってるんだ、当たり前だろう、彼女は僕の物だ、
こんな所で死んでもらっちゃ困る」
ゼウス「ならば行くぞ」
光明「あ?どういう事だ?」
ゼウス「覚えのある気配が近くにいる、奴の接触しようとしているのがそれだったとすると、
生きて帰らない可能性が高いのだ」
光明「何だって、そんな危ない奴が、いやでも彼女は魔剣の者として動いてる、
そいつも魔剣なんだろう?それなら危険はないんじゃ・・・」
ゼウス「この度の戦争では密約がある故少なくとも敵対はせぬだろうが・・・、
そうでなければあのお方の命(めい)を聞くかも怪しいのだ、
人伝いに聞いた情報なんぞ信用するとは思えん」
光明「おいおい・・・、そんな危ない奴が今まで放し飼いだったのかよ」
ゼウス「奴に首輪を付けることは出来ん」
光明「そんな奴まで戦力換算か、そっちの世界はよっぽど困窮してるんだな」
ゼウス「ジョーカーなのだ、どう出るか分からぬ最凶の鬼札、
そう、あちらの世界に放置出来ぬほどのな」
光明「・・・僕たちまでやられないだろうな?」
ゼウス「我がいれば問題はない」
光明「全知全能の神が断言したんだ、信じるからな」
ゼウス「では、行くとしようか」
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フェイ「ねぇ、退屈だわお姉様、トリスタンと戦ったっきり何もないんだもの」
モル「仕方ないでしょモーガン、難なく倒したように見えたかもしれないけれど、
惜しみなく力を使った結果よ、消耗は少なくないわ」
フェイ「あら、そうだったのね、それなら腕を切り落としたのは正解だったわね、
そんな相手ともう一度、なんて嫌ですもの」
モル「退屈と言っていた割にあまり積極的ではないのね」
フェイ「勘違いしないで欲しいわ、私は相手を虫けらみたいに玩ぶのが好きなの、
必要であるのならば叩き潰す、だけど避けられるのなら避けた方がいいに決まっているでしょう?」
モル「それが苦戦を強いられる相手なら尚更、ね」
フェイ「その通りですわお姉様、それに私たちは傾国の魔女、
本来なら前に出て戦う存在ではないもの」
モル「いい子だわモーガン、貴女は自分のことをよく分かっている、
そう、直接手を下すのは下々の者に任せればいいの、
そこで覗き見ている無粋な奴とかにね、出てらっしゃいな、いるのでしょう?」
酒呑「はぁ、覗き見とは人聞きの悪い、盗み聞きと言ってくれ」
フェイ「似たような物でしょう、無粋には変わりないですわ、
何者かしら、見た所魔剣のようだけど」
モル「オーガ・・・」
酒呑「よぉ、久しぶりだなぁ女狐、テメェも担い手になってたとは、
落ちたモンだなぁ、技術主任殿?」
フェイ「お姉様、お知り合いかしら?」
モル「えぇ、あちらの世界での顔見知りよ」
フェイ「そうとは露知らず、失礼いたしましたわ、
初めまして、私はモーガン・ル・フェイ、よろしくお願いします」
酒呑「ハッ、契約者にパーソナリティの妹を名乗らせてるのか、
相変わらず趣味の悪いこった」
モル「お褒めの言葉ありがとう、見事な物でしょう?」
酒呑「あ?」
モル「この魔剣のシステムを真似てみたの、簡易的な物だけどね」
酒呑「・・・人格を植え付けたのか」
モル「その通りよ、思い通りに動く手駒としてこれ以上の物はないわ」
酒呑「流石と言っておこうか、開発に関わっただけのことはあるじゃねえの」
モル「これは私の功績よ、あんな一介の研究者に手柄なんてくれてやるものですか」
酒呑「感謝してるぜ、テメェの野心のおかげで娑婆に来れたんだ」
モル「・・・皮肉も、そこまで来ると笑えないわね、オーガ」
酒呑「おぉやるか女狐、俺ァ今溜まってんだ、
本気出せる相手に全然出会えなくてなぁ」
フェイ「お姉様、魔剣な上に苦戦を強いられる所か、負けてもおかしくない相手ですわ、
冷静になってくださいまし?」
モル「・・・ふぅ、ありがとうモーガン」
酒呑「ハッ、テメェで作った人格に窘(たしな)められてちゃ世話ねぇぜ」
モル「よく出来た子でしょう?」
酒呑「姉と違ってな」
モル「言ってなさいな」
フェイ「安い挑発にはもう乗らなくてよ」
酒呑「そりゃ良かった、もう一組客も来たみてぇだしな」
菫「・・・は、初めまして、成川菫と申します、始めに申し上げておきます、
私も契約者ですが、交戦の意思はありません」
酒呑「へぇー、それで?」
菫「っ、既にご察しかとお思いですが、私は聖剣と契約しています」
モル「担い手は息を潜めているみたいだけど、奇襲でもさせるつもりかしら」
フェイ「知っているわ、日本には居合い斬りという技があるのでしょ、
明らかに構えているその態度じゃ、納刀していても信用は出来なくてよ」
菫「・・・以蔵」
以蔵「分かった、これでいいのだろう・・・?」
酒呑「へぇ、人斬りか」
以蔵「っ、安心してくれていい、鬼退治の逸話は持っていない」
酒呑「おぉ坂田金時でも連れてくるか?まぁ面識なんてねぇだろうが」
以蔵「可能なら敵対したくない、貴様があのオーガだと言うなら本気でな」
酒呑「俺を知ってるか、悪くねぇ気分だ」
以蔵「余計なことは喋らん方がよさそうだ・・・」
菫「お話、進めても・・・?」
酒呑「おぉ、好きにしろ」
菫「はぁ、私たちはミスティオンという組織に所属しており・・・」
フェイ「ミスティオン・・・」
菫「っ、ご存じですか?」
フェイ「お姉様、セレス・カーライルの」
モル「えぇ、貴女、どちらのミスティオンなのかしら・・・?」
菫「ぅ・・・、わ、私は東北支部に所属しており、
魔剣の担い手、ヌアザ様の命の元、同士を募っております」
酒呑「おぉ知ってるぜ、あいつら、聖剣魔剣問わず集めてんだ、
そのヌアザが魔剣派とは限らねぇ、そうだろ?」
菫「た、確かにそうですね・・・」
酒呑「どうした姉ちゃん、息が荒いぜ?」
菫「っ・・・!」
フェイ「まぁセレスがやっている事だもの、グレアムがやっていたとしてもおかしくはないわ」
菫「そ、そうです、ヌアザ様の契約したのはそのグレアムさんです!
その指示で動いているんです!」
フェイ「なるほど!それなら確かに魔剣派かもしれませんわね!」
菫「信じていただけましたか!」
フェイ「もしそれが本当に本当なのならば、ですけれども」
菫「っ!?」
フェイ「ミスティオンに所属しているのならば、本部長であるグレアムの名前を知っていてもおかしくはない、
信用に足る情報ではなくてよ」
モル「残念ね聖剣の契約者さん、どうやら貴女、身の上を立てられないみたいよ」
菫「くっ・・・!」
以蔵「不味いな・・・」
酒呑「おーテメェらよぉ」
菫「なん、でしょうか・・・?」
酒呑「魔剣の味方ですつってりゃ、自分は殺されねぇって思ってねぇか?」
菫「っ!」
以蔵「逃げるぞ成川!」
酒呑「っとぉ、逃がすかよ」
以蔵「くっ、出入り口を塞がれたかよ・・・!」
菫「もう一度言います、私たちに交戦の意思は・・・!」
酒呑「知った事か、なら無抵抗で死んでけや、ここに出(いずる)は厄災の化身、来い、遠呂知(おろち)」
以蔵「下せよ天誅、肥前忠吉(びぜんただよし)」
酒呑「抜いたな?」
以蔵「っ!」
酒呑「開け二門、二股顎(にまたのあぎと)!」
以蔵「クッ!」
モル「・・・向かいに私たちがいる事をお忘れでなくて?」
酒呑「ちゃんと狙いは外してんだろうがよ!」
フェイ「お姉様」
モル「我が故郷よ、呼びかけに応え今ここに顕現したまえ、魔杖オークニー、
モーガン、今回の采配、貴女に委ねるわ、追い詰めて見せなさい」
フェイ「ふふっ、お任せあれ」
以蔵「ちっ、この格を同時には捌けんぞ・・・!」
菫「あなたの予感を信じておけば良かったわね・・・」
以蔵「俺もここまでだとは思っていなかった、外れクジにも程がある」
酒呑「この程度で済むと思ってんのか、舐められたもんだ」
以蔵「は?」
酒呑「女狐!マージ・ウェイクしとけぇ!」
フェイ「ふふっ、面白い提案ですわね、やりましょう」
モル「えぇ、マージ・・・」
フェイ「ウェイク」
酒呑「すまねぇなぁ、生憎俺は今日契約者を連れてなくてよ、
テメェを殺すには人任せしかなくてなぁ」
以蔵「これで俺が囮になり、成川一人逃がす手も塞がれた訳だ」
菫「本気で私ごと殺すつもりなのね・・・」
以蔵「成川、お前の命、俺に預けられるか?」
菫「この状況で他の誰に預けろって言うのよ」
以蔵「ふっ、それもそうだ、行くぞ、マージ・・・!」
菫「ウェイク!」
酒呑「よくその手を選んだ、褒めてやる、褒美に俺の手で殺して、やるよぉ!」
以蔵「体はよし・・・」
酒呑「おぅらぁ!」
以蔵「っ、技もよしか・・・!ちぃ!」
酒呑「ハッ、避けるのでいっぱいいっぱいかぁ?期待を裏切るんじゃねぇぞ!」
以蔵「最初から期待なんぞ、させたつもりはない!」
酒呑「っとぉ、今までで一番早いかもなぁ、テメェ!」
以蔵「打ち合ってなんぞいられんからな、逃げに徹させてもらうぞ、シャ!」
酒呑「逃がすかよ、女狐!」
フェイ「サモンチーム・ソルジャー」
菫「兵隊を召喚した・・・!?」
以蔵「しかも五人もか、全うに相手なんて、してられんぞ!」
酒呑「へぇ・・・!」
モル「同時に三人殺すなんてやるじゃない」
フェイ「でもそれじゃ足りない」
以蔵「その傷でも躊躇い無しか、くぅ!」
菫「命も無ければ恐れもないって事ね・・・!」
フェイ「サモン・シールドナイト、簡単に殺せないのを壁としておいておこうかしらね」
酒呑「気が利くじゃねぇか、そんじゃ遠慮無く行くとしようかねぇ!
出でよ一門、龍ノ顎(りゅうのあぎと)!」
以蔵「加えて飛び道具か、分が、悪すぎる!」
モル「惜しい腕ね、真っ当に戦うつもりなら善戦も出来るでしょうに」
以蔵「ふっ、人の下で働いた事のない奴には分からん、だろうよ!」
フェイ「ちっ、的確に殺してくれますわね、サモンチーム・ソルジャー」
菫「また増えた、まさか底なしなんて言わないでしょうね!」
以蔵「魔女本来の力ならいざ知らず、あの杖が本体である以上底はあるさ」
菫「安心した、なら絶望せずに戦えそう」
酒呑「おためごかしかもしれねぇぜ?」
菫「それで充分よ、仕事仲間にかける言葉なんて、そんな物でしょう!」
(菫、懐の銃を抜き酒呑童子に向けて撃つ)
酒呑「っ、ちぃ!?」
以蔵「おい、成川!?」
菫「どうせあの鬼はこんな銃じゃ死なないんでしょ、
威嚇射撃よ威嚇射撃」
以蔵「・・・ふっ、流石は俺の雇い主だ」
酒呑「いい度胸だ、気に入ったぜ、褒美だ・・・!」
モル「モーガン」
フェイ「えぇ、ウォール」
酒呑「開け四門、四股顎(しまたのあぎと)!」
以蔵「クッ、避けきれんか・・・!」
ゼウス「雷よ、盾と化せ」
酒呑「横槍、いれやがって・・・!」
モル「しかも今の力、魔剣ね、姿を現しなさい不敬者、
ファイアボール」
光明「不敬者はどちらでしょうね、ここにおわす方をどなたと心得る!
全知全能の神、ゼウス様ぞ!」
菫「なっ!?」
以蔵「ここに来て神までもか・・・!」
ゼウス「常磐よ、今回は茶番は結構だ、言ったであろう、覚えのある気配だと」
光明「知らない菫ちゃんへのデモンストレーションって奴だよ、気にしないでくれ」
菫「常盤君!なんでこんな所に!」
光明「おやおや、折角助けてあげたってのにあんまりな言葉じゃないか」
菫「助けた・・・?」
ゼウス「オーガ、そして元技術主任、お遊びはそこまでだ、武器を納めよ」
モル「元、ですって・・・?」
酒呑「あぁ?人の獲物を横から盗った上に見下してんじゃねぇぞ、
アインマーシュの腰巾着がよぉ!」
ゼウス「その者は我らの手先として動いている、勝手に殺してもらっては困るのだ」
フェイ「ふぅん、良かったですわね成川さん、信憑性のある証言ですわよ」
菫「ちっ、これで、信じていただけましたか?」
フェイ「えぇ、残念ですけど」
酒呑「それとこれとは話が別だ、人の玩具取り上げんのも大概にしとけよ・・・?」
ゼウス「もう一度言えば良いか?この世界は、貴様の玩具ではない、と」
酒呑「テメェ・・・!」
モル「お待ちなさいオーガ」
酒呑「あぁ!?テメェまで邪魔するつもりか女狐!」
モル「本当はそうしたい所だけど、手出しだけで許してあげる、
私にも、その男を殺させなさい・・・!」
酒呑「ハッ、特別に許してやらぁ・・・」
光明「お、おい、ゼウス、どうなってるんだ、大丈夫だったんじゃないのか?」
ゼウス「我の意思はあの方の意思、契約違反となるが構わないのか?」
酒呑「テメェがこれに耐えれたら考えてやんよ!」
モル「軽口をあの世で後悔なさい!」
ゼウス「雷海(らいかい)」
酒呑・フェイ・モル「ぐっ!?」
ゼウス「落ちろ、神の雷!」
酒呑「あがぁ!?」
ゼウス「これで、頭は冷えたかね・・・?」
モル「この、舐められたものね・・・!」
フェイ「やめましょうお姉様、万全じゃない今では勝ち目は薄くてよ・・・」
ゼウス「・・・良い、契約者を持ったな、女狐よ」
モル「ちっ、毒気を抜いてくれるわね・・・」
ゼウス「オーガも武器を納めよ、ここで戦う利点はお互い無いはずだ」
酒呑「俺にゃ憂さ晴らしって利点はあるんだが、確かに見合わねぇか」
以蔵「あの攻撃を受けて、平然としているだと・・・?」
酒呑「平然とはしてねぇよ、こんだけ痺れてちゃ気持ちよく動けねぇからな」
菫「本当に人間がベースなの、あれ・・・?」
モル「鬼よ」
ゼウス「あぁ鬼だな」
光明「ゼウス、冗談だよな・・・?」
ゼウス「比喩表現だ、冗談は好かぬ」
酒呑「だとさ、俺のベースは人間じゃねぇそうだ」
以蔵「一つ聞かせてくれ、本当にあのオーガなのか?」
酒呑「さぁな、そのオーガが俺の事かは知らねぇよ」
ゼウス「あちらで広くオーガと呼称されているのは貴様くらいだ」
以蔵「やはりか・・・、命があるだけでも僥倖だな・・・」
菫「貴方がそこまで言うって事は、相当なのね」
以蔵「戦場に生きた者で知らん奴はおらんだろう、
敵国の将に囚われたと聞いていたが、まさかこの戦争に投入されているとは・・・」
モル「その将がそこの守護神よ、良かったわね、神のご加護よ、神のご加護」
以蔵「場違いにも程があるな・・・」
フェイ「さて、一先ず満場一致で休戦、と言う事で良かったかしら?」
酒呑「おーもうそれでいいぜ、面倒くさくなっちまった」
ゼウス「我は元よりそのつもりだ」
モル「冷静になってみればここで争う理由なんてないのだもの」
フェイ「聖剣のお二方は如何かしら?」
以蔵「負け組に選択権なんぞ端からないだろう」
菫「私は最初から言っています、戦闘の意思はありません」
フェイ「では一件・・・」
光明「一件落着という訳だ!いやぁ一時はどうなるかと思ったけど、
流石は全知全能の神だ、感謝するよゼウス」
ゼウス「今回はお主の意思があってこそだ」
光明「いやいや、僕は今回何もしていないからね」
菫「本当、その通りだと思うわ」
以蔵「成川、一応命の恩人かつゼウスの契約者だ、やめておけ」
菫「うっ、そ、それもそうね」
光明「おぉ、やっとお前も理解したかよ、僕の偉大さを」
以蔵「長いものには巻かれる質でな」
光明「中々見所があるじゃないか、流石は菫ちゃんの認めた担い手だ」
ゼウス「常磐、我はこの者らと話がある、二人を連れ先に帰るが良い」
光明「ん、そうかい?それじゃ行こう菫ちゃん」
(光明、菫の腰に手を回し強引に連れ去ろうとする)
菫「うっ、そ、そうね、行きましょう」
菫「いつか絶対ぶっ飛ばしてやる・・・」(小声)
酒呑「で、話って何だ、裸の王様の腰巾着さんよぉ」
ゼウス「今後の事だ」
酒呑「へっ、どっかの女狐と違って安い挑発には乗らねぇか」
ゼウス「・・・教えておこうオーガよ」
酒呑「あ?」
ゼウス「この世には琴線に触れらようと挑発に乗らぬ者がいる事を」
モル「っ・・・!」
ゼウス「我はなんと言われようと構わん、
だがあのお方を愚弄する者は許さん・・・!」
モルM「これが、守護神と呼ばれた男の気迫・・・!」
酒呑「そりゃ悪かったよ、まっ気にすんな、ただの冗談だよ」
ゼウス「冗談は好かんと、言ったばかりのはずだが?」
フェイ「あーゼウス様?充分挑発に乗ってますわ、
掴み掛からない事を挑発に乗らない、と言わないと思いますの」
酒呑「クッ、あっははははは!テメェ、面白いじゃねぇか!
気に入ったぜ、知らねぇってのは幸せなもんだ、あっははは!」
ゼウス「・・・ふぅ、いかんな、あちらよりも些か短慮になっているようだ、
これもゼウスのパーソナリティのせいか」
モル「貴方ほど克己心(こっきしん)の強い方でも影響を受けてしまうなんて、
私の作り上げたシステムは素晴らしいわね」
ゼウス「あぁそうだな、恐ろしい技術だ、これが敵の手に渡ってさえいなければ、
今頃この世界は我らの手の内だったろうに」
モル「っ・・・!」
フェイ「藪蛇ですわ、お姉様」
モル「少し、静かにしているわ」
ゼウス「では、話を始めるとしよう、貴様らも知っているだろうが、
今我々は戦力の一極化を行っている」
酒呑「この頃日本に剣が増えてんのはテメェらの仕業かよ」
ゼウス「あちらも同じ事を考えているようでな、全面戦争はそう遠くないだろう」
フェイ「そこに参加しろと、そういう事ですわね」
ゼウス「理解が早くて助かる」
酒呑「俺は嫌だぜ」
ゼウス「何だと?」
酒呑「テメェらはやりたいようにやれ、俺もやりたいようにやる」
ゼウス「相手の陣営に、ヤマトタケルがいると知ってもか?」
酒呑「・・・天叢雲、ハッ、まだ生きてやがったか、嬉しいじゃねぇか」
ゼウス「ならば・・・」
酒呑「必要になったら呼べ、集団行動はしたくねぇ」
ゼウス「分かった、最大限の譲歩を感謝する」
モル「なら私たちもそうして頂戴」
ゼウス「ほぅ?」
モル「私にも目的があるの、尊重、してくれるのよね?」
ゼウス「アーサーの事だな」
モル「えぇ」
ゼウス「情報を掴み次第連絡しよう」
モル「感謝するわ」
フェイ「冷静になりさえすれば早い話でしたわね」
モル「ごめんなさいね、本来なら守護神がここにいる時点で逆らう理由なんてないのだもの、
その大局が読めないのは狂犬くらいなものよ」
フェイ「狂犬?」
モル「えぇ、何にでも噛みつく頭のおかしい奴がいるのよ」
ゼウス「彼奴か、魔剣を持たしたという話は聞いたが」
モル「飛びっ切り頭のおかしい刀を持たせてあげたの、
上手くいくか少し不安だったけど、問題なく動作したみたいね」
酒呑「おぉ、そんなすげぇの持たせるほどの有名人、あの女以外にいたか?」
モル「黒焔(こくえん)の事かしら、あれにも飛びっ切りを持たせてるわよ」
酒呑「・・・他にめぼしい奴いたかよ」
ゼウス「貴様が入所した初日に戦った囚人だ」
酒呑「おぉ、あの雑巾か!」
フェイ「気の毒な評価ですわね・・・」
ゼウス「その二枚のジョーカーも情報が入ったら教えてくれ」
酒呑「黒焔ならまだしも、雑巾の情報なんぞいるのかよ」
ゼウス「女狐が評価する刀だ、放置は出来ん」
酒呑「そういう事な、気に留めとくぜ」
モル「ふふっ、正当な評価ね、当然だわ」
酒呑「ハッ、高いプライド持っちまうと大変だなぁ、モルゴース?」
モル「お互い様よ、厄介な器に入れられたものね、酒呑童子?」
酒呑「ハッ、俺は気にいってんぜ?」
モル「そ、なら良いのだけど」
ゼウス「では今後ともよろしく頼んだぞ」
酒呑「おー」
モル「我らが頭上にかつての栄光を・・・」
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以蔵「・・・ここまで離れれば一先ず安心か」
光明「感謝して欲しいなぁ、僕がいなかったら今頃仲良くあの世行きだぜ?」
菫「それとこれは別、いつまで腰に手を回してるつもりよ!」
光明「おっと、君の命を救ったの、誰だと思ってるんだい?」
菫・以蔵「ゼウス」
光明「・・・否定出来ないな、いや、僕の意思だって言ってたでしょ?」
菫「それには感謝してる、だからといって心どころか体まで許す訳がないでしょ」
光明「僕はゼウスから学んだんだ」
菫「何を?」
光明「欲しいものは無理矢理にでも手に入れる、
忍なんかに君を渡すもんか」
菫「はぁ・・・、本当に貴方って残念ね・・・」
光明「何だって?」
菫「そもそも前提条件が違う、私は既に秋観(あきみ)さんのものなの」
光明「じゃあ言い方を変えよう!忍から取り戻してやる」
菫「貴方のものだった事なんて一時もないんだけど?」
光明「ああ言えばこう言う・・・、まぁいいや、今この時はなんと言われようと腹が立たない、
僕は菫ちゃんの命の恩人だ、それは絶対に揺るがない」
以蔵「思い上がるのも大概にしておけ」
光明「あ?」
以蔵「確かにお前がいなければ俺たちは殺されていただろう、
だがゼウス含め奴らは根本的に目線が違う、利用されているだけだと気付け」
光明「僕が利用されている?あっははは!笑わせてくれるじゃないか!
そんなの、分かりきってる事だろ?」
以蔵「何?」
光明「魔剣と契約者の関係なんてそれ以外に何がある、
欲望のために利用し合ってるだけに決まってる、
ゼウスやヌアザが僕を利用しているように、
僕だって神に仕え、神の力を代行する立場を利用する!」
菫「貴方、それが分かっているなら何で・・・!」
光明「心地良いからに決まってるだろう!そうか可哀想に、
君はまだバージンなんだな・・・?」
菫「なっ・・・!?」
光明「殺しはいいぞ・・・?この手に残る肉を裂く感触・・・、
権力や金じゃなく、正にこの手で直接手を下す快感!
一度覚えたら病み付きになる・・・、お前なら分かるだろう人斬り以蔵!?」
以蔵「分からんな」
光明「は?それを知らない奴が人斬りと呼ばれるわけが・・・!」
以蔵「国を変える手段に力を選んだだけだ、生憎俺は頭が良くないんでな、
龍馬や勝先生のようには生きれん、ただそれだけの事だ、」
光明「ならお前は殺しが楽しくなかったって言うのか、
そんなはずはないだろうが!?」
以蔵「鍛えた剣の技を思う存分振るう事を楽しんでいた事を、
殺しを楽しむというのであれば楽しんでいたのだろう、
だが一つ言わせてもらおう、手に感触が残るのは素人の斬り方だ」
光明「なっ・・・!」
以蔵「力に溺れれば滅ぶは自分だぞ?この俺のようにな」
光明「やっぱりテメェも気にくわねぇ、いつか殺してやる、覚えてろ!」
菫「・・・相変わらず情緒不安定な人ね」
以蔵「はぁ・・・、付き合う友は考えた方が良いぞ、成川」
菫「知らないわ、秋観さんと仲が良いから仲良くしてただけよ」
以蔵「そうか、なら何も言うまい」
菫「そういう貴方も、従う相手を考えた方が良い時期かもね」
以蔵「何故だ?」
菫「今日はたまたま助かったけど、また同じ目にあうかもしれないわよ?」
以蔵「お前には雇い主云々の前に恩義がある」
菫「あれの事?いつも言うけど命を懸ける程の事じゃないでしょ」
以蔵「馬鹿を言うな、龍馬の残したこの国を見れた、俺にはそれだけで充分なんだ、
命を懸けるに値する」
菫「はぁ・・・、何度聞いても同じ返答なのね」
以蔵「俺の最期はこの上ない程みっともない物だった、
聞けば口を割ったのは俺だけだと、
そんな俺がやり直す機会を得たのだ、それでいいんだ」
菫「・・・本当に、貴方以蔵なの?」
以蔵「さぁな、もしかしたら器になった俺の色が濃いのかもしれん」
菫「ふふっ、そういう事にしておきましょう」
以蔵「あぁ、そうしておいてくれ、いやしかし、本当に生きて帰れるとは思ってなかったぞ」
菫「怪獣大戦争だったわね」
以蔵「軍隊を連れてこい、黒船だ黒船」
菫「大砲なんかで勝てるかしら?」
以蔵「国を開く切っ掛けになったんだ、なんとかなるだろう」
菫「あははっ、それもそうね、それじゃ私たちもなんとかしましょう」
以蔵「あぁ、ゼウスが出張る程に俺たちは重宝されている、
この戦い、分は悪くない」
to be continued...
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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w
こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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