Arc Jihad(アークジハード) -新しい世界と迷いなき一歩-

テオドール・ブランシェ♂ 25歳 フランス人、自称サイコ寄りの人間、人で遊ぶのが好き。
ランスロット♂ 29歳 ランスロットのパーソナリティをインストールされた男性。
実直で固い性格。


テオ♂:
ランス♂:


フランスのとある街、人々の行き交う大通りを場違いな鎧姿の男が何かを探すように右往左往している。
通行人はその姿をいぶかしむ事すらなく、日常を過ごしているようだ。
ただ1人の男を例外として。


ランス「契約者を探して早数時間、これだけ人が行きかっているというのに、
    ままならない物だな・・・、目線すら合わないとは・・・」

テオ「おい」

ランス「どうしたものか・・・」

テオ「おい、そこのお前、鎧姿で剣を腰に下げてるお前だ」

ランス「っ、私が見えるのか!」

テオ「ん・・・、あぁ、なるほど、見ないようにしていた訳ではなく見えていなかったのか」

ランス「ん、今なんと・・・?」

テオ「いやなんでもない、場所を移そう、こっちだ」

ランス「あ、あぁ」

-------------------------------------------------------------------

テオ「この公園なら人通りもそんなに無かったはずだな」

ランス「人目を避けてくれたのか、配慮感謝する」

テオ「あぁ気にしないでくれ、鎧も重いだろう、椅子に座ったらどうだ?」

ランス「重ね重ねすまない」

テオ「構わない、それで、お前はいったい何なんだ?」

ランス「何、とは、いやその前に貴方は座らぬのだろうか?」

テオ「いや俺はいい、で、お前は何なんだ?」

ランス「すまない、その問いの意味が掴めぬのだが・・・」

テオ「見える人間の方が珍しい存在が、ただの人間である道理はないだろう」

ランス「っ、いつ気付いた?」

テオ「私が見えるのか、その一言で十分じゃないのか」

ランス「なるほど、確かにそうだ、そこまで分かって貰えているのなら話が早い、
    驚かず聞いて欲しい、私は異世界から来た者なのだ」

テオ「ほぉ、異世界か、それで?」

ランス「協力者を探している」

テオ「協力者?」

ランス「あぁ、私はまだこの世界で何かをする権利を持ち合わせていないのだ、
    貴方のように私を知覚出来る者を適合者と言う、
    その適合者と契約することでようやく私はこの世界で事を起こせるのだ」

テオ「なるほど、で、何をするつもりなんだ」

ランス「・・・宿縁を」

テオ「ん?」

ランス「宿縁を断ち切る」

テオ「どういう意味だ」

ランス「奴を、アーサーを斬る為に私はここにいる」

テオ「ここはフランスだ、アーサーを斬りたければ英語圏へ行け」

ランス「そうではない!ログレスの王アーサーだ!」

テオ「アーサー王だと?」

ランス「そうだ!我が名はランスロット、私は奴を斬らねばならんのだ!」

テオ「・・・なるほど、で、そのアーサーとやらがこちらに来ているというのは確実なんだろうな」

ランス「っ・・・!」

テオ「ではないのか、まぁそうだろう、見た所お前もこちら側に来たばかりの様だしな」

ランス「だが奴は必ず来る、遅かれ早かれこの世界に必ず来るのだ!」

テオ「追ってきた訳ではないんだな、ならば何故お前はここにいる」

ランス「っ!」

テオ「そしてその自信と根拠は何処から来る、包み隠さず答えろ」

ランス「・・・分かった、だがその前に1つ信じて欲しい」

テオ「今まで話したことか」

ランス「あぁ」

テオ「話を聞いてから決める」

ランス「・・・私はここに、魔剣の担い手として戦争をする為に来た」

テオ「相手はどこだ」

ランス「私の世界の者だ、彼らは聖剣の担い手としてこちらに来ている」

テオ「自分の世界の者と戦争をする為に違う世界へ行く、理解できないな」

ランス「私は騎士だ、政(まつりごと)は分からぬ、ただ剣を振るうのみ、
    故に己が立場で言葉を選んでしまったが、我らが王は、この世界を侵略するつもりだ」

テオ「・・・ほぉ」

ランス「聖剣の者はそれを阻止するためにこちらに来ている」

テオ「まるで代理戦争だな」

ランス「代理戦争?」

テオ「どうせ聖剣もこちらの人間が手を貸さねば何も出来ないんだろう?
   つまり聖剣にも魔剣にもこちらの人間が付く」

ランス「・・・確かにそうだ」

テオ「まぁそこまでは分かった、何故アーサーがこちらに来ると言える?」

ランス「我々の核は武器なのだ、私であればこのアロンダイトが核となり現界している」

テオ「つまり武器ありきの存在だと言う事か」

ランス「その通り、故に世界との繋がりが薄く、
    契約をせねば深い干渉が出来ないのだ」

テオ「そして聖剣の代名詞であるエクスカリバーが現れない筈がないと」

ランス「正(まさ)しくその通り、このアロンダイトが魔剣として選ばれたのであれば、
    必ず現れる、そう必ずだ」

テオ「なんとなくだが理解できた、それでこの世界との繋がりが欲しい訳だな?」

ランス「協力してくれるのか!」

テオ「戦うのはお前なんだろう、俺はこの世界の案内をするだけだ」

ランス「それだけでもありがたい、感謝する、では早速契約を、
    堕ちし聖剣の淀んだ輝きよ、今ここに、来い、アロンダイト!」

テオ「ほぅ、何もない所から剣が」

ランス「これを取れば契約となる」

テオ「侵略者の片棒を担ぐか、面白そうじゃないか、よっ」

ランス「契約はなった、これからよろしく頼む」

テオ「あぁ、テオドール・ブランシェだ、好きに呼べ」

ランス「ありがとう、では・・・」

テオ「っ、待て」

ランス「ぬっ、何だろうか?」

テオ「あれか、聖剣とやらは」

ランス「そうみたいだ、あちらは臨戦態勢の様子、どうする?」

テオ「各々自分の世界の人間を相手すればいいだろう、
   俺に戦う意志がないのが分かればこちらは何もないだろうしな」

ランス「・・・くれぐれも気をつけて」

テオ「あぁ、適当にやってくるさ」

--------------------------------------------------------------

ランスM「聖剣の担い手としばらく戦っていると、急に相手の存在感が薄くなる、
     それと同時に私たちの目線が契約者の方に向かった、
     そこには、地に伏せった聖剣の契約者と、
     こちらに向かって歩いてくる、テオドールがいた」

テオM「俺が今殺した女に駆け寄ろうとしたんだろう、
    横を走りぬけようとする異界の男を斬り伏せる、
    どうやら契約が切れていてもこちらからは手を出せるらしい」

ランス「だ、大丈夫、なのだろうか・・・?」

テオ「怪我はない、すまなかった、もう少し早く終わらせられたな」

ランス「いや、そうではない、初めて、人を殺したのだろう・・・?」

テオ「ん、あぁそうだな、あの女の言う通りなら問題はない」

ランス「何も、感じないのか?」

テオ「なんだそっちか、思ったよりな、もう少し興奮するかと思ったんだが、
   あっさりとやりすぎた、やはり過程は重要らしい」

ランス「そ、そうか、それならば大丈夫だ」

テオ「人間らしい心配ならいらんぞ」

ランス「む?」

テオ「他の人間とは頭の作りが少し違うらしい、
   罪悪感だの恐怖だのはない、安心しろ」

ランス「・・・なるほど、そういう事ならば」

テオ「後はそうだな、奴は殺す覚悟も殺される覚悟もあった、
   ならば異物は俺だろう」

ランス「貴方が、異物・・・?」

テオ「何の意識の変化もなしに戦場に立つ兵士がいるか?」

ランス「いや、戦場では殺し殺される、それが当たり前のことだ」

テオ「そうだろう、ならば同じにならなくては」

ランス「あぁ、それは尤もだ、反論のしようもない」

テオ「ではさっさと引き上げるとしよう、調べたい事もあるしな」

ランス「御意」

------------------------------------------------------------

生活観の薄い無機質な部屋で、所在なさげにランスロットが座っている。
その傍らテオドールは淀みない手つきでパソコンを操作している。

テオ「これでも当たらんか、なるほどな・・・」

ランス「取り込み中すまない、先ほどから何をしているのだろうか・・・?」

テオ「お前はインターネットと言って分かるか?」

ランス「インターネット・・・、こちらに来る際、知識としては得ているが、
    様々な情報を得られるものという認識で大丈夫だろうか?」

テオ「問題ない、それでこの戦争の事を調べていた」

ランス「っ、そんな事出来るのか!?」

テオ「結果から言えば出来なかった」

ランス「ふぅ・・・、こちらの世界は異世界の事をそんなに簡単に調べられるのかと・・・」

テオ「それは不可能だろうな、だがこちらの世界で起こった事ならば簡単に調べられる、
   例えば何処かの国で正体不明の人間がおかしな力を使い戦っていた、だとかな」

ランス「調べられなかったと言う事は、我々の存在が認知されていない、という事か?」

テオ「いいや、そんな事はありえないんだ」

ランス「ありえない?」

テオ「先ほど殺した女は、仲間がいたと言っていた、そいつが魔剣に殺されたともな、
   敵討ちを果たしたとかも言っていたか」

ランス「ふむ・・・?」

テオ「つまりはこの世界でそれなりの人数が死んでいると言う事だ」

ランス「その事すら調べられない、と言う事だな」

テオ「あぁ、更に言えばSNSが広まっているこのご時世、
   あれだけの物が噂にすらならないのはありえない」

ランス「遠隔地で起こった事ならばそういう物ではないのか?」

テオ「馬鹿を言え、人の口に戸は立てられん、全く無いのはおかしいと言っているんだ、
   言論統制が敷かれているとしか思えない」

ランス「この世界で、言論統制が、だと・・・」

テオ「お前らの世界の奴が既に世界の上層部に潜り込んでる可能性もあるだろうな、
   何にせよ相当大きな権力が動いている」

ランス「それも全世界規模で、という事だな」

テオ「そういう事だ、面白いじゃないか、世界の規律を捻じ曲げるか」

ランス「・・・・・・」

テオ「申し訳なさそうな顔をするな、お前は侵略者の手下なんだろう」

ランス「そう、だな、私は喜ぶべき立場の者なのだろう」

テオ「ふん、統制の取れていない組織だな、魔剣とやらは」

ランス「すまない」

テオ「構わない、俺には関係のない話だ、そんな事よりも明日だ」

ランス「旅立ちか?」

テオ「いや、準備がある、それはまだ先だ、さっきの現場へ行くぞ」

ランス「聖剣と戦ったあの場所にか、何をしにだ?」

テオ「その時になれば分かる、その時になればな」

--------------------------------------------------------------------

翌日、事があった公園に再度訪れたテオドールとランスロット。
そこには数人の警官が何かを作業をしている。
テオドールは警官と短いやり取りをし、ランスロットの所に戻った。

ランス「あれはこの世界の治安維持をしている組織だろう?
    大丈夫なのか?」

テオ「見ての通りだ、大丈夫でないのならば俺はすぐに牢屋行きだろうさ」

ランス「ならば何故そんな危険な事を・・・!」

テオ「昨日の女の言う通りなら全く問題がないからだ」

ランス「何を言われたのだ・・・?」

テオ「この戦争の参加者同士の殺し合いは罪に問われないらしい」

ランス「罪に問われない、だと・・・?」

テオ「あぁ、そうらしい、何がどう動いているかは分からんが確定だ、
   あの死体が事故で片付けられている時点でな」

ランス「我々の戦争が、この世界に受け入れられている、そういう事か」

テオ「その通り、クッククク、面白い、俺は全く新しい規律の中に生きている、
   正当な理由を持ち、正当な権利の元人を斬れる、なんて素晴らしい世界だ」

ランス「・・・・・」

テオ「少しだけ時間を貰う、下らん日常の清算を付けてこよう、
   そうしたらお前の宿縁を断つ為の旅とやらに付き合ってやる」

ランス「っ、すまない、感謝する」

テオ「気にするな、さぁ、始めるとしようか、新しい日常を」





to be continued...




もどる

シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちら