Arc Jihad(アークジハード)-鎧の遺志と優しき想い-

ジュリウス♂ 25歳 騎士、クロエの側近、真面目で面倒見がよい。
冗談も分かるいいお兄さん。
クルト♂ 21歳 アイン派から亡命してきた魔術師、
ぶっきらぼうであまり気づかいを知らない。
フーゴ♂ 32歳 アイン派から亡命してきた魔術師、
物腰が柔らかく、丁寧な性格、クロエの事が好き。
クロエ・アルミュール♀ 23歳 アルム派の長、故アルミュール代表の子孫。
優しく真面目な性格、魔術使いでもある。
シルヴィ・アルミュール♀ 25歳 クロエの姉、策略家、人をからかうのが好き。
物事を遠まわしにはっきり言う性格。





ジュリウス♂:
クルト♂:
フーゴ♂:
クロエ♀:
シルヴィ♀:





クロエ「はぁ・・・・」

ジュリウス「溜息なんてついてどうした?クロエ」

クロエ「っ、ジュリウス、ふふっ、また見られてしまいましたね」

ジュリウス「最近ずっとだからな、・・・無理はするなよ」

クロエ「してませんよ、食事も取ってますし、夜だってちゃんと寝ています」

ジュリウス「・・・確かに、生活や仕事で無理なことはしていないか」

クロエ「そうです、ジュリウスは心配性なんです」

ジュリウス「返す言葉もないな・・・」

フーゴ「フーゴです、連絡に参りました、入ってもよろしいですか?」

クロエ「はい、どうぞ」

フーゴ「失礼いたします」

クロエ「様子はどうですか?」

フーゴ「装置、術式共に安定してます」

クロエ「よかった、担い手の希望はありました?」

フーゴ「はい、ただ概要を説明した所、一日考えさせて欲しいとの事でして」

クロエ「分かりました、ありがとうございます」

フーゴ「恐れ入ります」

ジュリウス「担い手たちの様子はどうだ?」

フーゴ「僕が先ほど確認した段階では、新しい戦死者はいませんでしたよ」

ジュリウス「そうか、ありがとう」

フーゴ「以上で報告終わり・・・」

クルト「クルトだ、入るぞ」

クロエ「ん、どうぞ」

クルト「失礼する、報告だ、戦死者が発生した」

クロエ「っ!」

ジュリウス「・・・戦士の名は?」

クルト「オークスだ」

ジュリウス「つい最近来たばかりの者だな」

クロエ「・・・そう、ですね」

フーゴ「クロエさん・・・」

クルト「はぁ・・・、毎回思うんだが、聞いてもいいか?」

クロエ「なん、でしょうか?」

クルト「あんたらが心痛める必要って、あるのか?」

フーゴ「っ、クルトさん!?」

クルト「フーゴ、あんたはいい、静かにしててくれ」

フーゴ「っ・・・」

クルト「どうなんだ、クロエ、ジュリウス」

ジュリウス「必要性、というなら俺はないと思うがな」

クロエ「私は、アルミュールの血族として、組織の長として、大切な事だと思っています」

クルト「どう思ってるかは聞いてない、俺は必要かどうかと聞いているんだ」

クロエ「それ、は・・・」

シルヴィ「必要なかったとするのならば、悼んではいけないのかね」


フーゴ「Arc Jihad(アークジハード)-鎧の遺志と優しき想い-」


クルト「シルヴィ」

シルヴィ「さん」

クルト「は?」

シルヴィ「シルヴィさん、だ、曲りなりにも私は君の上司だぞ、クルト君」

クルト「シルヴィ、さん、なんなんだ、俺はこの二人に聞いて・・・」

シルヴィ「お二方、だ、クロエはこの組織の長だぞ、ジュリウスはまだしもな」

ジュリウス「おい」

シルヴィ「君は上長ではないだろうて、まぁ敬意はもちろん払うべきであろうが」

クルト「・・・・・・」

フーゴ「あ、クルトさん!」

シルヴィ「おっと、何処へ行くつもりだい、君が始めた話であろう?」

クルト「俺はてっきり終わりだと思ったけどな」

シルヴィ「終わりでよかったのか、あの答えで満足かね」

クルト「っー!横槍を入れたのは貴様だろうが!」

シルヴィ「ほー、貴様・・・?」

クルト「っ・・・!」

フーゴ「し、シルヴィさん、お、落ち着いてください!」

シルヴィ「ふふふ、私は落ち着いているぞー」

クロエ「あ、あの、姉さん、私は気にしてないから」

シルヴィ「いいや、私が気にするんだ、それにこういう細かい遺恨を残すと後から大きな捩れになる、
     それは、そこ二人が一番よく分かってはいると思うのだがね?」

フーゴ「っ!」

クルト「・・・当て付けの、つもりか?」

シルヴィ「いいや、足止めのつもりさ」

ジュリウス「はぁ・・・、長くなりそうだな、椅子と机のある場所へ移動しようか」

クロエ「そうですね、お二人もいいですか?」

フーゴ「もちろんです」

クルト「・・・あぁ」

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ジュリウス「それで、クルトは何が話したかったんだ?」

クルト「俺が聞きたかったのは、いちいち心を痛める必要があるのかって事だよ」

シルヴィ「君はそれを聞いてどうしたかったんだ、何かあるんだろう?」

クルト「・・・余計な事に気を取られて、心労を溜めるのがくだらないと思っただけだ」

フーゴ「クルトさん、それだと、聞き方があまり良くなかったんじゃないかと・・・」

クルト「他にあったか?」

クロエ「間違ってないと思います、うろたえてしまった私がいけなかったんです」

クルト「それで、結局あんたの答えはどうなんだ」

クロエ「必要かと問われれば、ないとは思います」

クルト「ならあんたも魔術師、科学者の端くれなら数字として捕らえればいい」

クロエ「・・・・努力、してみますね、ありがとうございます」

シルヴィ「ふむ、それは違うぞクロエ」

クロエ「え?」

シルヴィ「我々の名は何だったかね?」

クロエ「・・・アルミュールです」

シルヴィ「そうだ、己が思考に恥じる事はないぞ、アルミュールとしては正しい」

クルト「ならなんだ、アルム派であるなら見知らぬ他人の死すら悼めっていうのか」

フーゴ「それじゃ、心が擦り切れてしまいます、
    現に、クロエさんだって最近毎日浮かない顔をしてらっしゃいます!」

シルヴィ「だろうな、なぁジュリウスよ」

ジュリウス「なんだ?」

シルヴィ「お前さんは私が何を言いたいか分かるか?」

ジュリウス「それとなくはな、だが俺は組織の長でなければ、お前の様に策略家でもない、
      ましてやお前自身でもない」

シルヴィ「ふふっ、全くもって上手いかわし方だ、ちなみに、クロエは分かるか?」

クロエ「故タリス・アルミュールの遺志、ですか?」

シルヴィ「遠からず、って所かね」

フーゴ「ふざけないでください、遥か昔に死んだ人の確かかどうかも分からない遺志なんかのために、
    なんでクロエさんが苦しまなければならないんです!」

クロエ「フーゴさん・・・」

シルヴィ「フーゴ君、君の言っている事は最もだよ、
     しかしな、その遺志なんかを忘れては我々ではなくなるのだよ」

フーゴ「いいえ、そんな物なくたってクロエさんはクロエさんです」

シルヴィ「だがクロエ・アルミュールではなくなる」

フーゴ「っ!」

クルト「シルヴィさん、あんたはそんなに家名が大事か、そんなに人の上に立ちたいのか?」

ジュリウス「クルト、それは・・・!」

シルヴィ「いいジュリウス、私の口から言うさ、家名、もちろん大切さ、
     これが無ければ誰も私たちに付いて行こうなんて思わないだろうからな」

クルト「聞いたかフーゴ、結局は地位だ、どんなに立派な事を並べても所詮はそんな物さ」

クロエ「違います!姉さんはそんな人じゃありません!」

クルト「っ!」

クロエ「姉さんは、目的の為には手段を選ばないから、悪い人に見えるだけなんです!」

シルヴィ「おい、褒めるのか貶すのかどっちかだけにしないかクロエ」

クロエ「あっ、ご、ごめんなさい!」

フーゴ「・・・目的って、なんなんですか?」

シルヴィ「んー?アルム派の目的、いや夢と言った方がいいかね、そんな物分かりきっているだろう、
     この世界と共に生き永らえる、それもみな笑顔で、な」

フーゴ「今と昔は違います、この世界と共に、そんな物は夢物語じゃないですか」

シルヴィ「あぁ、私もそう思っていたよ、君たちがアインマーシュから技術を持ってくるまではな」

クルト「俺たちの、技術・・・」

シルヴィ「あぁ、そうだとも、なぁジュリウス?」

ジュリウス「確かにな、人の精神を物質に込め、それを核に行動する技術、
      更には、情報を送り込み、プロフェッショナルを即席で作る技術」

クロエ「どちらも、この世界には無くてはならない技術です、
    長い戦いで人々は疲弊しています、何かをしようにも、出来る人が足らなかった」

ジュリウス「いつだって先に犠牲となるのは、そういう技術を持った大人だったからな」

クロエ「お二人は更なる戦乱を生み出したと思っていらっしゃるかもしれませんが、
    使い方次第では、私たちの悲願を叶える物なんです」

クルト「なら、なんで見知らぬ世界の為に戦い続ける、ほっとけばいいだろう、
    そうすればアインマーシュは勝手に異世界に行って、ここは平和だっただろう」

クロエ「それをしてしまっては、アルミュールではなくなってしまうんです、
    そうでしょ、姉さん?」

シルヴィ「そういう事だ」

ジュリウス「俺たちがアルミュールの遺志を継ぎ、理念に則る、だから人々は付いてきてくれる、
      この世界と生き永らえる為には、俺たちだけじゃ出来ない」

シルヴィ「だから家名が必要なのさ、例え偽善と言われようと、いっそ独善だと言われようと、
     我らが悲願を達成する日まではな」

クルト「悲願を達成する為には・・・」

フーゴ「でも、それがクロエさんが心を痛めなくちゃいけない理由にはなりません」

クロエ「いいんです、私はクロエ・アルミュールだから」

フーゴ「クロエさん・・・」

シルヴィ「後は、だ、人心を忘れた支配者の辿る道を考えて頂ければ、と言った所か」

ジュリウス「国を滅ぼすのは何も他国からの侵攻だけじゃないって事だな」

クルト「アインマーシュを滅ぼすのは、アインマーシュだった俺の技術・・・」

フーゴ「でも、あそこで逃げなかったら、僕たち絶対に殺されてましたよ」

クルト「分かってるよ、それは分かってる」

シルヴィ「まだまだ青いぞ、技術が開発者の思い通りに使われない事なんて往々としてあることだろう、
     殺すのは技術ではなく、扱う人間だ」

ジュリウス「過程はどうあれ、最後は救いに使う、それまでは待っていてくれないか?」

フーゴ「僕は有用に使って頂ければいいと思ってます、ただ、技術さえ提供すれば開発者は不要だっていう、
    そんなアインマーシュにはいられなかっただけです」

シルヴィ「フーゴ君が根っからの研究者だって事はよく分かっているから心配していないぞ」

フーゴ「そんな!?」

クロエ「ふふっ」

フーゴ「く、クロエさんまで笑って!あ、でもクロエさんがやっと笑って・・・」

クロエ「あ、ご、ごめんなさい」

ジュリウス「謝らなくていいんじゃないか、久しぶりに笑わさせてもらったんだし」

クロエ「っ、うん、そうですね」

シルヴィ「・・・クルト君よ、君は何を思ってその技術に至ったのかね?」

クルト「俺は・・・、どうせ滅ぶなら、好きなように思い切りやって、
    この世界と共に滅べばいいと思ってたんだ、戦えないなら戦えるようにしてやるって」

シルヴィ「なるほどな、君は、この世界と共に滅ぶ事を望んだのか」

クルト「どうせ滅ぶならな、違う世界に乗り込んで、その世界と滅ぶのは筋違い、
    世界を滅ぼすような種族は、責任を持って食い潰した世界で滅ぶべきなんだ」

シルヴィ「最もな意見だな、すまないな、君の技術は君の思惑と違う使い方をさせてもらうぞ」

クルト「それでいい、よりよい使い道があるのなら、そう使うべきだ」

シルヴィ「ん、それが聞ければ結構、さて、他に何か言い残した事がある者はいるかね?」

ジュリウス「俺は最初から聞かれる側だったからな」

クロエ「私も、お二人がよければ」

フーゴ「僕も大丈夫です」

クルト「・・・ないよ」

シルヴィ「それじゃ一先ず解散かね!」

クロエ「そうですね」

シルヴィ「クロエも久しぶりに元気が出たようだしな」

クロエ「ふふっ、そうですね」

シルヴィ「よし、では私も異世界とやらに行って来るとするかね!」

クロエ「そうで、っ、ダメです!」

シルヴィ「おっと、勢いで言ってくれると思ったが、やはりダメか」

クロエ「当たり前です!」

シルヴィ「んー、あいつもまだ生きているようだし、英雄のパーソナリティとやらは凄いのだろう?」

クロエ「そういう問題じゃありません、ダメなものはダメです」

ジュリウス「はぁ・・・、あいつの時も散々もめたんだ、もう少し大人しくしててくれ」

シルヴィ「仕方ないな、もう少しだけだぞ、だが必要だと思ったら無理やりにでも決行するから、
     心しておくように」

ジュリウス「そうならない事を願ってるよ」

フーゴ「あの、まだ必要だとは思っていないという事ですか?」

シルヴィ「そうだな、私の頭脳は最終兵器の予定だ、まだこの局面では早いかね」

クルト「向こうの様子が、分かるのか?」

シルヴィ「予感だな、女の勘という奴だ」

クルト「また当てのならない物を・・・」

クロエ「でも、姉さんの勘は良く当たるんですよ?」

フーゴ「確かに、計算とは思えないタイミングもよくありますし・・・」

シルヴィ「褒めるな若者、何も出ないぞ」

フーゴ「そ、そんなつもりじゃないですよ」

クルト「そう言えば、シルヴィさんはいくつなんだ?」

シルヴィ「ほぅ、女性に年を聞くか、中々挑戦的ではないか」

クルト「あぁいや、そういう意味ではないんだ、
    フーゴを若者と呼べるような年には見えないからな」

シルヴィ「・・・ほぅ?」

ジュリウス「フーゴ、お前何歳なんだ?」

フーゴ「僕ですか?32歳ですよ」

シルヴィ「・・・・年上だったか」

クロエ「ずっと、同じくらいだと思ってました・・・」

フーゴ「あははっ、僕もまだまだ行けそうですね」

ジュリウス「人は見かけによらないとはこの事か・・・、
      ん、って事は、クルトは・・・?」

クルト「・・・21だ」

シルヴィ「おぉ・・・、年下だったか・・・」

クルト「おい、人の事を何歳だと思ってたんだ」

シルヴィ「少なくとも上だと思っていたな」

ジュリウス「つまり26以上か」

シルヴィ「おい待て、さらりと私の年がばれる様な発言をするな」

ジュリウス「ん、なんだ、俺は自分より上だと考えての発言だったんだけどな」

シルヴィ「ぐっ、ぬぬ・・・」

クロエ「ふふっ、あははは!姉さんが悔しがってるの久しぶりに見たわ」

ジュリウス「してやったり、だ」

シルヴィ「ちぃ、今回だけは勝ちを譲ろう、だがしかし、次は無いと思えジュリウス」

ジュリウス「はいはい」

シルヴィ「ぬー、まぁいい!しかしそうか、この中ではフーゴが一番上だったか、
     てっきり会話を聞いていて、クルトの方が上だとばっかり思っていたぞ」

フーゴ「あはは、半分くらいは僕のせいだと思います、敬称外すの苦手なんですよ」

クロエ「そうですね、クルトさんはフーゴさんの事、フーゴって呼んでますし」

フーゴ「っ、クロエさんが、僕のことを・・・!」

クロエ「え、私何かおかしな事言いましたか?」

フーゴ「い、いえ、なんでもないですよ、なんでもないんです」

クルト「はぁ・・・」

ジュリウス「全く、分かりやすい」

シルヴィ「だと言うのに我が妹と来たら・・・」

クロエ「え、え?」

ジュリウス「気にするな、とりあえず今はまだそのままでいいぞ」

クロエ「は、はい、分かりました」

シルヴィ「さて、それじゃそろそろ持ち場に戻るとするかね!」

ジュリウス「それもそうだ、少し時間を使いすぎた、
      二人とも、引き続き装置と術式の確認をよろしく頼む」

クルト「分かった」

フーゴ「かしこまりました、よーし!この後も頑張れるぞー!」

ジュリウス「それじゃクロエ、今日はいつもと違うこともしたし疲れただろ、
      いったん休めよ」

クロエ「ありがとうございます、ジュリウス」

ジュリウス「あぁ、それでは、また後でな」

クロエ「はい、また後で・・・、
    言えないよね、死んだのがあの人じゃなくて、ほっとしたなんて、
    きっと私は、アルミュール失格なんだ、でも、それでも、
    あの日みんなで見た夢を、叶えたいの、許して、くれますよね、ご先祖様・・・」









to be continued...




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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
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