Arc Jihad(アークジハード)-騎士への憧憬と剣士の意地-

ディートリッヒ♂ 24歳 ベルンの王子のパーソナリティをインストールされた男性。
真面目な好青年、少し早とちりする所がある。ウィルとは恋仲。
聖ロンギヌス♂ 30代後半 聖槍『ロンギヌス』の担い手で、レギーナの契約者。
強力な兵士で、敵を圧倒するような威厳を持つ。
槍の能力を最大限に発揮させるために数多の人間を殺している。
聖剣の能力
持ち主の傷を瞬時に回復させる(代償:槍で他人の血を流させる必要がある)
風を操る(代償:室内または屋根のある場所では威力が半減する)
ウィルミヒルデ・アインハルト♀ 23歳 ミスティオン、ドイツ支部の構成員、地域の守護をしてる一族の跡取り。
負けず嫌いで強気な女性、親しい人の前以外では口調を変えている。
レギーナ・ザカリアス♀ 20歳 勝ち気でお嬢様口調の女騎士。
騎士の称号を持っていない没落貴族で、フィーネとは祖父の代から顔見知り。
嫉妬深く、実力もあり騎士の名をも所有しているフィーネを妬んでいる。





ディート♂:
ロンギヌス♂:
ウィル♀:
レギーナ♀:






レギーナ「はぁ・・・はぁ・・・、ここまで逃げれば一先ずは大丈夫そうですわね・・・」

ロンギヌス「マージ・ウェイク、解除」

レギーナ「っ、ロンギヌス、どうかしましたの?」

ロンギヌス「その空腹は些か不愉快だ、手早く食事を済ませよ、
      聖槍による洗礼もせねばならんのでな、時間はないぞ」

レギーナ「分かっていますわ、わたくしをこの様な目に遭わせた者に、
     報復しなくてはなりませんしね」

ロンギヌス「分かっているのならばよい、あの女魔剣士だけは絶対に許さぬ、
      我が手で、必ず血の洗礼を・・・!」


ディート「Arc Jihad(アークジハード)-騎士への憧憬と剣士の意地-」


ウィル「はぁ、はぁ・・・、レギーナ、どこに行ったのかしら」

ディート「思ったより騒ぎが小さいからな、自分と人の間にある認識の差を実感させられたよ」

ウィル「周りの人に異世界から来た殺人鬼が逃げ出した、とは言えないものね・・・」

ディート「そうだな、早く探さないと、ロンギヌスの性質を考えても、
     時間を与えるのはまずい」

ウィル「また一般の人が狙われかねない・・・」

ディート「食事を抜いたのが幸を為したか?」

ウィル「まさか、先にご飯食べてるとか?」

ディート「それなら騒ぎが起きないのも肯ける」

ウィル「確かに・・・、でもそれじゃ探しようがないじゃない」

ディート「虱潰しに当たってくしかないか」

ウィル「しかないかな・・・、っ、悲鳴!」

ディート「行こう」

ウィル「えぇ」

-----------------------------------------------------------------

レギーナ「あら、貴方でしたの、ウィルミヒルデ、期待外れですわ、
     ゼラフィーネの事だから、騒ぎになれば来ると思っていたのですけれど」

ロンギヌス「あの女騎士でないのならば用は無し、聖剣であるのならば尚更だ、
      要らぬ傷を負う前に去るがいい」

ウィル「そういう訳にもいかないわ」

レギーナ「なんですって?」

ウィル「ミスティオン ドイツ支部、ウィルミヒルデ・アインハルト、
    聖剣ナーゲリングの名の下、レギーナ・ザカリアスとその担い手ロンギヌスを、ここで止める」

ロンギヌス「聖剣が聖剣を止める、何を言っているのか分かっているのだろうな、担い手よ」

ディート「当然だ、俺はこの戦いがどのような物か分かった上で、自分の立場を理解し、
     契約者であるウィルの意思を尊重する」

ロンギヌス「契約者だけならまだしも、担い手すらこのザマか、実に救い難い」

レギーナ「丁度いいですわ、悪戯に一般人を狩るのにも飽き飽きしてましたの、
     聖剣の担い手が相手なら不足はありませんわ、
     わたくしを楽しませてくださいな、ウィルミヒルデ」

ウィル「・・・ディート!」

ディート「分かった、来い、一振りの輝き、ナーゲリング!」

ウィル「マージ・・・!」

ディート「ウェイク!」

レギーナ「このわたくしを無視するだなんて、いい身分ですわね・・・!
     ロンギヌス、行きますわよ!」

ロンギヌス「言われなくとも、愚かなる者に血の洗礼を、ジーベン・ヴィント!」

ウィル「布石もなしに下段が、当たるものか!」

レギーナ「ゼクス・ヴィント」

ウィル「その程度の攻撃!」

レギーナ「で終わると思ってまして!」

ロンギヌス「はぁ!」

ウィル「っ、くぅ!?」

ロンギヌス「ふん、初発の下段が布石だとは思わなかったのか」

ディート「その布石が上手くいった上で仕留め損ねた気分はどうだ、ロンギヌス」

ロンギヌス「減らず口を、その余裕いつまで維持できるか見物だな」

レギーナ「フンダート・ヴィント!」

ウィル「連射・・・!」

ディート「だが、見切れない程度ではない、はぁぁあああああ!」

レギーナ「やりますわね、でもまだ、止まりませんわよ!」

ディート「このままだと押し負けるか、ウィル!」

ウィル「えぇ、ベルンの名馬ファルケよ、その力を我に貸したまえ」

ディート「ブリッツ・オブ・ファルケ、ふっ!」

レギーナ「っ、あの嵐から抜け出したですって!?」

ロンギヌス「うろたえるな、来るぞ!」

ウィル「はぁあああ!」

レギーナ「っ!」

ウィル「よく受けたわね、でもここは!」

ディート「俺たちの間合いだ!」

ウィル「行くわよ、うらぁあああ!」

レギーナ「くぅぅうううう!」

ウィル「さぁ、この猛攻に、いつまで耐え切れるかしら!」

レギーナ「ぐっ、ロンギヌス!何とかできませんこと!?」

ロンギヌス「見苦しい、がよかろう、この体借り受けるぞ!」

ウィル「その隙を、私が見逃すわけないでしょう!」

レギーナ「っ、ちゃんと避け・・・!ぐぅ!?」

ロンギヌス「この程度の傷で、うろたえるなぁ!」

ウィル「嘘、ぐぅ!?」

ディート「づぅ、飛ばされたかよ、ウィル早く体勢を!」

ウィル「がはっ、くっ・・・!」

ロンギヌス「間に合わぬよ、さぁ、愚か者に血の洗礼を!」

ディート「くそ、借りるぞウィル、っはぁ!」

レギーナ「あそこから弾くですって?」

ロンギヌス「だがそれまでだ!」

ディート「そんな剥き出しの殺意なんかでぇ!」

ロンギヌス「何!?」

レギーナ「避けた!?」

ディート「ちょっとの傷じゃ再生するらしいな?」

レギーナ「ひっ!」

ディート「死ね」

レギーナ「いや、わたくしはこんな所で・・・!」

ロンギヌス「っ、恐れるなレギーナ!」

ディート「遅い、ふっ!」

レギーナ「きゃあ!?」

ロンギヌス「ぐっ、槍が・・・!」

ディート「よっと、武器はこっちの物だ、まだ続けるか?」

レギーナ「え、あ、な、なんで・・・!」

ロンギヌス「フェイクか・・・!」

ウィル「当たりよ、本当に殺すわけがないで、うっ、げほっげほっ!」

ディート「ご、ごめんウィル、思いっきり動いてしまった」

ウィル「あー・・・、内臓大丈夫かしら・・・」

レギーナ「くっ、ウィルミヒルデ、槍を返しな、うっ・・・!」

ウィル「それ以上近寄らないで、斬るわよ?」

ロンギヌス「まだ血の祝福は残っている、痛みを恐れるな、槍さえ取り戻せば傷など・・・」

ウィル「ならレギーナの腕を切り落としてから槍を叩き折ろうかしら」

レギーナ「っ・・・!」

ウィル「私は誇り高い騎士様なんかじゃない、私の使命は任せられた場所を守ることだけ、
    抵抗する気配のある相手に容赦はしないわ」

ロンギヌス「よいのかディートリッヒよ」

ディート「何がだ?」

ロンギヌス「貴様なら分かったはずだ、我がどれ程の担い手か」

ディート「あぁ、確かに強かった、それで?」

ロンギヌス「我を失う事、それがどれ程の損失か分かるだろう、
      本当によいのか、ディートリッヒよ」

ディート「はぁ、自信があるのは結構、だが言っておくぞ、あんた程度がいなくなった所で、
     そう大した損失にはならないぞ、ロンギヌス」

ロンギヌス「何だと!?」

ディート「シグルズにロキ、そして俺にも負けた、なのに自分の有用性で命乞い?
     見苦しいにも程がある」

ロンギヌス「今までの敗北はどれも我の物ではない、今回だってそうだ!
      この小娘でなければ!」

レギーナ「っ!」

ロンギヌス「まともな契約者であれば貴様なんぞに負けるものか!」

レギーナ「その槍を折りなさい」

ロンギヌス「なっ、貴様・・・!よせ!」

レギーナ「その槍を折りなさい、ウィルミヒルデ!」

ウィル「そんな大声で言われなくても、よっ」

ロンギヌス「やめろぉおおおおおおお!」

----------------------------------------------------------

ウィル「いったたた・・・」

ディート「大丈夫かウィル?」

ウィル「あはは、病院は行った方がいいかもね」

ディート「当たり前だ、ごねても無理やり連れて行く」

レギーナ「誰も彼もわたくしを見下して・・・」

ウィル「ん、レギーナ?」

レギーナ「わたくしの何が悪いって言うの、騎士の名を持たないのがそんなにいけない事!?」

ウィル「はぁ、呆れた、そんなだからゼラフィーネに勝てないのよ」

レギーナ「何ですって!?」

ウィル「貴方、騎士であることが特別だと思ってるでしょ、それがそもそも間違いなのよ」

レギーナ「なら何故フィーネはあんなに高貴で優雅で余裕があるっていうの?
     騎士だからでしょう、でなければあんな女・・・!」

ウィル「彼女の場合そうかもしれないわね、
    でも騎士になれば誰しもがああなれる訳じゃない」

レギーナ「じゃあ何だって言うの」

ウィル「騎士とは何かを成した者に授ける称号じゃない、
    何かを成す為に授かる称号よ」

レギーナ「っ・・・!?」

ウィル「騎士だから国を守るの、騎士だから信念を貫くの、騎士だから誇り高くあろうとするの、
    貴方は何もなくただ騎士になろうとした、だから彼女に勝てなかったのよ」

レギーナ「うるさい、うるさい!騎士ですらない貴方に何が分かるって言うの!
     たかが田舎の守衛のくせして、このわたくしに偉そうな口をきかないで!
     あなたなんて慣れた武器だったら負けなかったって言うのに!」

ウィル「・・・・・・」

ディート「あ、キレたな」

ウィル「なら剣を取りなさい、レギーナ・ザカリアス、
    その鼻っ柱、叩き折ってあげる」

レギーナ「普通の剣でコピーと戦えって言うの?」

ウィル「ディートこれ返すわ」

ディート「あ、あぁ」

ウィル「これでいいでしょう、抜きなさいレギーナ、
    それとも手負いの、たかが田舎者に背を向けるって言うの?」

レギーナ「くっ、騎士たる者、挑まれた勝負に背を向けるわけがないでしょう」

ウィル「行くわよ!」

レギーナ「っ、はぁ!」

ウィル「ふっ!」

レギーナ「くっ、その様な太刀筋で・・・!」

ウィル「遅い」

レギーナ「えっ」

ウィル「はぁ!」

レギーナ「づっ、剣が・・・!」

ウィル「チェックメイトよ、レギーナ」

レギーナ「そんな・・・、たった、これだけで・・・」

ウィル「いい事を教えてあげる」

レギーナ「え・・・?」

ウィル「他人を地位や出身で差別する貴方自身が、
    自分の出身にコンプレックスあったら成長出来るわけないでしょう」

レギーナ「わ、わたくしは由緒正しい貴族の・・・」

ディート「ウィル、待った」

ウィル「え、ディート?」

ディート「後は任せて」

ウィル「ん、分かったわ・・・」

ディート「レギーナ、だったな、君がウィルに、
     いや俺たちに勝てなかった簡単な理由を教えてあげよう」

レギーナ「簡単な理由・・・?」

ディート「ディートリッヒ・フォン・ベルン」

レギーナ「っ・・・!?」

ディート「我は騎士であり、そして国の名を冠する王族でもある、
     貴様のような貴族が勝てるわけがないだろう」

レギーナ「あ・・・、あぁ・・・・」

ディート「行こう、ウィル」

ウィル「え、あ、待ってディート!」

----------------------------------------------------------------

ディート「はぁ、慣れない事するもんじゃないな」

ウィル「ディート、待ってよ、あんなのが勝敗の理由になる訳ないでしょ!」

ディート「レギーナは何を言っても納得しなかったよ」

ウィル「だからって!」

ディート「ウィル」

ウィル「っ、何よ」

ディート「俺は怒ってるんだぞ」

ウィル「え、な、何に・・・?」

ディート「さっきの立会いだ、一歩間違えたら死んでたんだぞ」

ウィル「あ・・・、ご、ごめんなさい」

ディート「無事だったからよかった物を・・・、次からは気をつけてくれよ」

ウィル「は、はい・・・」

ディート「って言っても無駄なんだろうな」

ウィル「ちょ、ちょっと酷くない!?」

ディート「酷くない、さぁドイツ支部に帰るぞ、報告が終わったら病院だ」

ウィル「あ、ま、待ってよ、ディートー!」




to be continued...



もどる

シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w


こちらの台本はコンピレーション企画「Arc Jihad(アークジハード)」にて
書かせて頂いたものです。
他の参加者様の台本はこちら