Assault Memories ~重機戦乱~ 第一話 円卓
♂ザヴォル・デスグラッサ:第17代デスグラッサ領主。54歳。絶大なカリスマ性を持ち、相対する人に畏敬の念を抱かせる人物。
領地拡大を画策し、隣国シュナイドリスへ侵攻を開始した張本人。
♂カーマン・ヴァルター:43歳。デスグラッサ軍エリートメンバー【ナンバーズ】のランク1。
デスグラッサ軍の中で一番の強者。デスグラッサに忠誠を誓っている。
障害となるものは容赦なく排除する冷淡さと、物事を冷静に見る目を持つ。
搭乗機体は中量二脚型アームドメタル『インモルタル』
♀デニス・ロミア:28歳。デスグラッサ軍エリートメンバー【ナンバーズ】のランク4。
上昇志向の強い人物。下層階級の人間であったが成り上がるために戦場を駆け、現在のランクに至る。
性格は気が強く、自分が認めた相手以外には攻撃的。戦闘に於いてそれが最も顕著に表れる。
搭乗機体は高火力高防御二脚型アームドメタル『クロコディール』
♂ジャーメイン・マーミック:25歳。寡黙で生真面目な性格。『人々の安定した生活を守る』という信念を持つ。
デスグラッサ軍エリートメンバー【ナンバーズ】のランク5。
搭乗機体は中距離射撃二脚型アームドメタル『シュッツェン』
♂ウィルバー・マクルーア:25歳。軽薄なお調子者タイプ。しかし、やる時はやる天才肌。
デスグラッサ軍エリートメンバー【ナンバーズ】のランク7。
搭乗機体は高防御機動二脚型アームドメタル『ゼラニウム』
♀ラナリィ・ロヒター:25歳。規律に厳しい仕事人間。だが根は穏和で他者思いの優しい性格。
デスグラッサ軍の戦場情報管制を担当する上級管理官。
ウィルバーとは幼なじみであり、アカデミーの同期。
ザヴォル♂:
カーマン♂:
デニス♀:
ジャーメイン♂:
ウィルバー♂:
ラナリィ♀:
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ウィルバー :よぉ。ジャーメイン。久しぶりだな。
ジャーメイン:ん?ウィルバーか。南部から帰ってきていたのか?
ウィルバー :ああ。一昨日、通達が来たんだ。シュナイドリス侵攻作戦に参加しろってな。
お前もか?
ジャーメイン:そうだ。常駐警備だったが突然、招集が掛かった。前線支援に加わるようにと。
ウィルバー :前線で苦労してんのかねぇ?
カーマン :今回の侵攻作戦は、ナンバーズの過半数が出ている作戦だ。
我々が押されることは、まず無い。・・・そう思いたいのだがな。
ジャーメイン:カーマン。貴方まで招集ですか?北部のレジスタンスはどうなりました?
カーマン :部下に任せた。すぐにでも収まる。
ウィルバー :ナンバーズのランク1まで招集とはねぇ。ちょっとキナ臭くないか?
カーマン :詳細の所は解らん。とりあえず、総統直々の招集だ。真意の程は彼に聞こう。
ジャーメイン:そうですね。
ザヴォル :諸君。集まっているな。ウィルバーも。苛烈を極める南部遠征からよく帰ってきた。
ウィルバー :どうも。総統のお呼びということで駆けつけてますよ。
ジャーメイン:ウィルバー。その言い方は総統に失礼だろう。
ザヴォル :ジャーメイン。構わぬ。さぁ皆、大儀であった。卓に付くと良い。
ジャーメイン:失礼します。
ウィルバー :遠慮無く。
ザヴォル :さて、諸君。ここに呼んだのは他でもない。
現在、行っているシュナイドリス侵攻の件についてだ。
カーマン :多くのナンバーズが制圧に向かったと聞きましたが?
ラナリィ :それは私、ラナリィ・ロヒターが、ご説明させていただきます。
ウィルバー :お、ラナリィじゃねぇか。どうした。お前は現場じゃないのか?
ラナリィ :戦線の状況をお伝えするために一時的に戻ってきたの。
それより、説明に入っても良い?ウィルバー。
ウィルバー :おう、わりぃわりぃ。
ラナリィ :現在。シュナイドリス制圧に向けて多数のアームドメタル隊が投入され、
また、それに随伴する機甲部隊、ヘリ部隊も投入されてます。
カーマン :数の詳細は?
ラナリィ :1ブロックにつき戦闘用アームドメタルは15機。
物資トラック100台、戦闘ヘリ10機、戦車30台。
カーマン :存外、送ってる訳ですね。
ザヴォル :もちろんだ。徹底的に、完膚無きまでにたたきつぶす。それが我々のやり方だ。
ウィルバー :いいねぇ。そんなバイオレンスな感じ大好きだ。
ジャーメイン:それで?進行状況は?
ラナリィ :それが・・・。戦況は芳しくないのです。
ジャーメイン:大部隊を送っているのにか?
ラナリィ :ええ。山岳地形がシュナイドリスに味方をしたようで、侵攻速度は遅いです。
また、山岳一帯を警備する防衛部隊の練度もなかなかの物で、4ブロック分を落とした所で止まっています。
カーマン :ふむ・・・まぁ、4ブロックも初手で取れたのは大きいか。
ラナリィ :しかし、その前線も少しずつ押されています。
ジャーメイン:押されている?
デニス :そうよ。少し、厄介な事が起きているの。
ザヴォル :おお、戻ってきたか、デニス。
デニス :はい。総統閣下。参上がおくれてしまい申し訳ありません。デニス・ロミア。只今、帰還致しました。
ザヴォル :構わん。私が無理を言って戻したのだ。
カーマン :で、その厄介な事とは一体どういうものだ?
デニス :3日前、前線の一部が謎のアームドメタル2機の襲撃に遭って壊滅したのよ。
たった2時間でね。
ジャーメイン:2時間・・・
カーマン :かなりの手練れだな。
ザヴォル :襲撃による被害状況を聞かせてやれ。
ラナリィ :襲撃を受けた地区のアームドメタル部隊は全て撃破され、戦車やヘリ部隊も過半数が沈黙。
デニス :その際ナンバーズのランク9、マティウス・ケラーが所属不明機によって撃墜。戦死しています。
ウィルバー :はぁ!?マティウスのオッサンが!?
カーマン :ナンバーズの下位ランクとはいえ、奴も熟練のパイロットだぞ?それが落とされるとは・・・。
ジャーメイン:その所属不明機はシュナイドリスの物なのか?
ラナリィ :その件に関しては現在調査を進めている所ですが、その可能性はあるかと思います。
ザヴォル :これは、ゆゆしき事態だ。それが今、戦場で起こっている。
ラナリィ :そこで、現在集まって貰いました皆様に、増援としてシュナイドリスの侵攻作戦に参加して貰いたいのです。
デニス :謎のアームドメタルが居るってことだから、戦力は多いに越したことはないでしょう?
カーマン :確かにな。
ジャーメイン:これ以上アームドメタルの部隊を失う訳にはいかない。
ザヴォル :そのために、諸君等には前線に出て貰おうと考えている。・・・いけるか?
カーマン :承りました。
ウィルバー :ま、総統のお願いならやりますよ。
ジャーメイン:作戦参加は了承します。ですが、この国の守りは手薄になりませんか?
ザヴォル :ランク2のギュンターに残って貰う。また、警備隊も温存してある。心配はない。
ジャーメイン:左様ですか。承りました。
ラナリィ :では早速、現時点での作戦領域をご説明しましょう。
この地図をご覧下さい。
デニス :西部地域のうちデスグラッサに近いこの3ブロック分は完全に制圧。
現在、仮設の駐屯地を作って展開中。
ザヴォル :兵の数はどうだ?
ラナリィ :現状、こちらの方が勝っています。しかし、それは西部に常時駐屯しているシュナイドリスの兵力のみを見た場合です。
ジャーメイン:となると、東部や南部に配備されていた他の部隊が西部に集結すると考えたならば・・・。
ラナリィ :はい。その数はすぐに逆転されるかと。
デニス :可能であるのでしたら、更なる増員を望みます。
ザヴォル :よろしい。ならば、アームドメタルの追加配備、戦車部隊及び歩兵の増員を送ろう。
デニス :ありがとうございます。それとこれは提案なのですが。
ザヴォル :申してみよ。
デニス :はい。アルティサノンに技術提供の打診をしてみるのはいかがでしょう?
ウィルバー :その根拠は?
デニス :山岳地帯での戦闘に苦戦を強いられているから。
ラナリィ :先程も言いましたが、山岳地帯という、我々には不慣れな地形が作戦侵攻を遅らせています。
そもそも、その侵攻を遅らせている一端に、『我が軍が使用するアームドメタル』と『山岳地形の相性』が悪いというデータがあります。
デニス :我々が基本配備しているアームドメタルは装甲に特化した重量級。
しかし、細い道や崩れやすい山岳地形を侵攻する際、落盤を引き起こす可能性がある。
ラナリィ :それを避けるために必要のない迂回を強いられ、結果として侵攻が遅れています。
ウィルバー :そこで技術提供を得て、山岳戦闘に適したアームドメタルを作ろうってことか。
カーマン :たしかに、それは重要だな。山脈越えはシュナイドリス侵攻の一番の要(かなめ)だ。
現時点で改善出来る問題があるのならば、改善した方が良い。
ウィルバー :とは言ってもだぜ?一般兵共ならまだしも、今から俺らのアームドメタルまで、改修する時間はねぇだろ?
ジャーメイン:それに、カスタム機で慣れてしまった身体で、新型をいきなり扱うのも支障が出ないと言いきれないでしょう。
ザヴォル :ナンバーズに関しては、現状の機体で向かえ。
ラナリィ :ですが、地形との相性を鑑みた場合・・・
ザヴォル :それは、ナンバーズ各々が持つ適応力によってカバーせよ。
数多くの戦場を生き延びた経験は、機体性能なぞを上回る。
カーマン :では、一般兵用の汎用機(はんようき)のみ、改良を加えると言う事ですね?
ザヴォル :左様。さすれば、現状の混乱もある程度は収まるだろう。
ジャーメイン:アルティサノンは協力を承諾するでしょうか?
ザヴォル :幾度ともない作戦に協力してきたのだ。今回も協力するに決まっている。
ジャーメイン:だといいのですが。
ザヴォル :案ずるな。アルティサノンには我が血縁も居る。シュナイドリスに比べれば、要請は通りやすい。
ウィルバー :んじゃあ、とりあえず。俺らはすぐにでもシュナイドリスに行きますかねぇ。
カーマン :まぁ待て。担当する地域の振り分けがまだ決まっていない。
ザヴォル :それは既に考えた。
カーマン :総統自らがですか?
ザヴォル :不満か?カーマン。
カーマン :いえ、決してそのようなことは。
ザヴォル :デニス。マルゴと共に南西部を攻めていたな?
デニス :はい。現在もマルゴが指揮を執り、南西部を攻略中です。
ザヴォル :よろしい。再び戻り、マルゴと連携して南西部を進め。
デニス :かしこまりました。
ザヴォル :ジャーメイン。お前は死んだマティウスの担っていた地域を担当せよ。
ジャーメイン:任務、拝領いたします。総統閣下。
ラナリィ :地域は西部中央です。山岳地帯の中心で一番攻めあぐねている場所です。
ウィルバー :うわ、めんどくさい所だな。
ザヴォル :ナンバーズの中でも中型機の扱いに長けたお前ならば、出来るだろう?
ジャーメイン:やってみせます。
ザヴォル :ウィルバー。お前は北西部の侵攻を担当せよ。
ウィルバー :あれ?そこはコーネリアの担当じゃないです?
デニス :コーネリア?彼女は機体を失ったわ。
ウィルバー :まさか、戦死じゃないよな?
デニス :ええ。戦死はしてない。敵前線基地に単騎で突っ込んだの。
敵殲滅と同時にアームドメタルが行動不能になっただけ。
ウィルバー :相変わらずのバーサーカーだな。早死にするぞ。
デニス :それは本人に言ってあげて。
カーマン :私は後方支援でしょうか?
ザヴォル :いや、カーマンには遊撃部隊として活動して貰おう。
ジャーメイン:例の所属不明機ですか。
ザヴォル :ランク1の実力を遺憾なく発揮する良い機会だ。
カーマン :了解。ご期待に必ず沿ってみせましょう。
ラナリィ :皆さんの機体はすでに整備班によって調整済みです。
チェックが済み次第、搬入に移ります。
ウィルバー :なら、後は俺たちの準備次第って訳だ。相変わらず仕事が早い。
ラナリィ :貶してるようにしか聞こえないんだけど?
ウィルバー :褒めてんだよ。
ラナリィ :まったく・・・。現地到着後、ツェリア・シャミン情報管理官より作戦情報の伝達があります。
必ず前線基地へ出頭してください。
ザヴォル :以上で諸君等への伝達を終える。なにか聞きたいことはないか?
ジャーメイン:1つ。よろしいでしょうか?
ザヴォル :なんだ?ジャーメイン。
ジャーメイン:欠けたナンバーズの補填はどうするのです?
ランク9が空席のままでは、戦力の保持や、作戦遂行を指揮する人員が減ります。
ザヴォル :それに関しては、問題無い。諸君等の派遣と同時に候補者の選別も行っている。
ラナリィ :選別が終わり次第、皆さんに合流するよう手配しています。
ジャーメイン:なるほど。わかりました。
ザヴォル :以上か?ならば、すぐにでも行動に移ってくれ。皆の活躍の知らせを期待している。
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デニス :厄介な役回りを押しつけられたわね。カーマン。
カーマン :問題無い。私の力が所属不明機の討伐に於いて重要と判断された結果だ。
デニス :油断してあっという間に撃墜される、なんてやめてよね?ランク1の名前に傷が付くから。
カーマン :その心配は無用だ。私と私の機体『インモルタル』。・・・そう簡単に墜ちはせん。
デニス :だといいけど。私とマルゴが、いずれランク1の席に座るんだから、ちゃんと綺麗にして置いてよね?
カーマン :フン、その前に死なぬ事だ。デニス。
デニス :はいはい。わかってるわ。それじゃ、現地でね。
カーマン :所属不明機・・・。シュナイドリスに新型を開発し、即時に戦場に投入する力があるとは思えんがな・・・。
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ウィルバー :なぁ、ジャーメイン。
ジャーメイン:なんだ。
ウィルバー :この戦争。どう見るよ?
ジャーメイン:長引くだろうな。
ウィルバー :やっぱり?面倒だなぁー。ちゃちゃっと終わらせてカワイコチャンと遊びたいのに。
ジャーメイン:ラナリィに蹴られるぞ。
ウィルバー :何でそうなるんだよ。アイツは俺の女じゃねぇ!アイツは・・・
ジャーメイン:解っている。『ラナリィは幼なじみであり、同期』だろう?目付役から怒られるぞという意味だ。
ウィルバー :へいへい。じゃーお目付役に怒られない程度にがんばりますよ。
ジャーメイン:・・・死ぬなよ?
ウィルバー :お前こそ。一番面倒な場所が担当なんだ。簡単に落ちたら承知しねぇぞ?
ジャーメイン:ああ。とりあえず、担当は違えど連絡は欠かさないようにしよう。
連携を取って攻める。そうすれば、長引くものを少しでも短くできる。
ウィルバー :元よりそのつもりだ。多分、俺の方が先に地域を押さえられる。遊撃が入り用なら言ってくれ。
ジャーメイン:ああ、頼むぞ。
ウィルバー :それじゃ、後は向こうで。派手に暴れてやろうぜ。
to be continued...
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