鏡合わせパラノイア

神無月 透 (かんなづき とおる) 双子の兄、都の事を妹としてではなく一女性として意識している。
しかし血の繋がっているという現実と板ばさみになっている。
神無月 都 (かんなづき みやこ) 双子の妹、透の事を兄としてではなく一男性として意識している。
しかし血の繋がっているという現実と板ばさみになっている。
鏡の中のトオル 鏡に映る透の姿、だがしかしその正体は、双子鏡に宿る悲恋の中死んだ兄の霊。
鏡の中のミヤコ 鏡に映る都の姿、だがしかしその正体は、双子鏡に宿る悲恋の中死んだ妹の霊。



透♂:
都♀:
トオル♂:
ミヤコ♀:


透M「俺達は生まれた時から合わせ鏡だった」

都M「双子なのに私は女、透は男、私は右利き、透は左利き」

透M「俺が右手を怪我すれば、都は左手を怪我をした」

都M「気づいた時、幼いながら少し気持ち悪かった、だからちょっと前髪の分け目を変えてみた」

透M「お互い同じ事を考えてたらしく、逆にしたはずなのに鏡合わせ、諦めて二人で笑った」

都M「いつだって透を見れば自分が見えた、本当に、鏡を見てるみたいに」

透M「でも、そんなある日、両親が離婚した」

都M「透はお父さんに、私はお母さんについて行く事になった、離れ離れに、なった」

透M「幸い、二人とも実家が近くだったから学校も同じで、会えなくなるなんて事はなかったけど」

都M「私達は向かい合わせだったから鏡だったのに、向かい合わせだったから、双子だったのに」

透M「半身、いや、もっと大切なものをなくした気持ちだった」

都M「無くしてから気付いた、透は、兄弟なんかじゃなくて、もっと大切なものなんだって」

透M「家に都が居ないなんて考えたくなかった、だから、二人で鏡を買ったんだ」

都M「デザインも左右対称の双子鏡、鏡に映った虚像の私は、きっと透だから」

透M「鏡に映った虚像の俺は、きっと都だから」

透・都M『鏡の前なら寂しくない』


ミヤコ「鏡合わせパラノイア」


都「いや、やめて、こないで、きゃぁ!?」

トオル「俺から逃げられると思ってるのかよ、都」

都「いた、痛いよ透、なんでこんなことするの?」

トオル「分かってるくせに・・・」

都「え・・・?」

トオル「俺にとってお前はただの、双子の妹なんかじゃねぇんだ・・・」

都「わ、私にとってもそうだよ、透は、兄なんかじゃない、もっと大切な・・・」

トオル「けど!俺達は血の繋がった家族だ!・・・いつか、他の奴に渡すくらいなら」

都「っ、やめ・・・・!」

トオル「うあぁ!・・・・殺して、一生俺の物に・・・・」

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透「うわぁ!・・・・はぁ・・・はぁ・・・、なんだ、今の夢・・・・、
  都を、殺す夢・・・?しかも、俺が・・・なんで、どうして・・・?」

トオルM「俺は鏡を、あの双子鏡を覗き込む、酷い顔だ」

透「都・・・、なんであんな夢見ちまったんだろ、俺・・・」

トオル「それは、俺が求めてるからだよ」

透「っ、誰だ!?」

トオル「誰だって、俺だよ」

透「俺って誰だよ、どこから!」

トオル「何きょろきょろしてんだよ、目の前だよ、目の前」

透「目の前には鏡しか・・・!っ、なんで、鏡が、俺と違う動きを・・・」

トオル「やっと気付いてくれたか、俺」

透「お前、なんなんだよ・・・」

トオル「俺以外の誰かに見えるか?鏡に映るのは自分自身だろ、それともこの鏡に映るのは」

ミヤコ「私なのかな?」

透「うわぁ!?」

トオル「あっはっは!悪かったよ、冗談だ、あぁ、冗談は置いといて、夢」

透「っ・・・・」

トオル「見たんだろ、あれが、俺の、求めているものだ」

透「違う!」

トオル「違わないな、俺は都が欲しい、けど都は妹だ、それも血の繋がった双子だ、
    結ばれる事は、許されない」

透「・・・・そんな事は、分かってるよ」

トオル「けど、他の奴に渡したくない」

透「・・・・・・」

トオル「渡すくらいなら、この手で・・・・・」

透「やめろ!」

トオル「おっと、その先に続く言葉が分かるのか?」

透「この手で、都を殺すなんて・・・」

トオル「あれ、なんで分かったんだろうなぁ、俺は最後まで言ってないだろ?」

透「それは、さっき、夢で見たから・・・」

トオル「それが証拠だ」

透「違う、違う・・・・」

トオル「そう思っていられるのも今日までだ、明日、俺は、自覚する、楽しみだな」

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都「透、おはよ!」

透「っ、み、都おはよう」

都「ん、どうしたの?疲れた顔してるよ、クマ出来てるし・・・」

透「あ、あぁ、ちょっと寝付きが悪かったんだよ・・・」

都「嘘、何か隠し事してるでしょ?」

透「な、なんでもねぇよ・・・」

都「むー・・・・、じゃあ、今じゃなくてもいいから、ちゃんと話してね?」

透「っ、あ、あぁ、ご、ごめん、ちょっとトイレ行ってくる!」

都「あ、うん、行ってらっしゃい!」

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透「なんだよさっきの、都の顔が、血で・・・・」

トオル「だから言ってるだろ、それが俺の望んだことなんだ」

透「っ、お前、こんな所で・・・!」

トオル「安心しろって、俺は虚像だ、俺の声は俺にしか聞こえない」

透「なら俺が鏡から離れればお前の声は聞こえないって事だよな」

トオル「くくっ、俺は俺だぜ?自分の心から逃げられると思ってるのか?」

透「当たり前だ、今までだってずっとそうしてきたんだ、今更・・・」

都「あ、お帰り透」

透「っ・・・・なんだよ、これ・・・っ」

都「透?透!?」

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都「すみません、兄をよろしくお願いします・・・、では失礼します、
  はぁ・・・・、大丈夫かなぁ、透・・・」

ミヤコ「大丈夫よ、私の愛しい透だもん」

都「っ、ここに鏡なんて・・・!」

ミヤコ「私は私だもん、って言いたかったけど、こっちこっち」

都「こっち・・・?っ、そんな・・・」

ミヤコ「そう、ガラスの中、自分の姿を映すものなんていくらでもあるでしょ、
    自分から逃げるなんて無理なの」

都「けど、私はそんな事望んでないって言ってるでしょ!・・・・あっ」

ミヤコ「ふふっ、人前で叫んじゃだめよ、場所変えましょう?」

都「・・・・・ごめんなさい!」

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ミヤコ「いいの?教室なんかで、また叫んでも知らないわよ」

都「・・・・・・・」

ミヤコ「・・・無視する気なんだ、いいよ、私の声は私にしか聞こえないから、一方的に喋るだけ、
    ねぇ、私だけがあんな事考えてると思ってる?私と透は鏡合わせ、私が考えてるって事は・・・」

都「やめてよ!透がそんな事考えてるわけ・・・!・・・・!」

ミヤコ「ほら、言ったでしょ?」

都「・・・・すみません先生、私、保健室で休んできます」

ミヤコN「皆の訝しげな視線を背に受け、私は透の寝ている保健室に向かった」

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都「透・・・、ごめんね・・・、きっと私があんなんだから透倒れちゃったんだよね・・・」

ミヤコ「逆かもしれない、透も同じ事考えてるから私もこうなのかもしれない」

都「っ、こんな所でまで・・・!」

ミヤコ「あら、叫んじゃダメだよ、透に障っちゃう」

都「・・・・・!・・・ねぇ、あなたは私をどうしたいの・・・・?」

ミヤコ「私は私をどうもしないわ、そんな事よりも、私は、透を、どうしたいの?」

都「私は、透を・・・、抱きしめたい、抱きしめて欲しい、けど、そんなの許される訳ないじゃん・・・、
  双子なんだよ?元は一つだったんだよ?例え透が私を好きだったとしても、許される訳ない・・・」

ミヤコ「そう、許されない、だから私はどうしたいの?」

都「どうしたいのかなんて分かんないよ!どうしたらいいのかなんて、分かんないよぉ・・・!」

ミヤコ「本当は分かってるくせに、許されないのなら、誰かにとられる前に・・・」

都「透を・・・・殺す・・・・?」

ミヤコ「私だけのモノにする」

都「違う!私じゃなくたって、透を幸せにしてくれる人なら・・・・!」

ミヤコ「透を幸せに出来るのは私しか居ないって確信してるのに?」

都「っ!?」

ミヤコ「嘘や詭弁はもう沢山、人前で取り繕う上辺だけの繋がりなんていらない、
    私が欲しいのは、透だけ」

都「違う、違うぅ・・・!」

ミヤコ「もういい、私がやらないなら、ワタシがしてあげる」

都「え、きゃあ!?」

ミヤコ「そこで見てなさい、私が望むことを、ワタシがしてあげる」

都「何、ここ、鏡の中?やだ、ダメ、やめてぇ!」

ミヤコ「透、私の大切な大切な透、愛してる、愛してるから、殺してあげる」

都N「私が透に跨り、首に、手をかける」

透「ぐ・・・・」

都「透!目を覚まして、透!」

ミヤコ「無駄よ、知ってるでしょ、そこからの声はワタシ以外には聞こえないわ」

都「そんな・・・、透、透!」

透「ぐぅ・・・、く、あぁ!」

ミヤコ「きゃあ!」

透「げほっげほっ・・・、クソ、誰が・・・、っ、都・・・?」

ミヤコ「そうだよ透」

透「なんで、お前が俺を・・・・」

ミヤコ「なんで?そんな事分ってるくせに」

透「え・・・?」

ミヤコ「私と透は鏡合わせ、私が考えてる事は・・・」

透「ち、違う、俺はそんな事考えてない!」

ミヤコ「私も最初はそう思ってたんだ、でもね、寝てる透の顔見たら愛しくて、
    唇を重ねたくなって、けど、許されないんだって思ったら・・・」

透「都・・・・、くっ、俺はそんな事思って無いから、正気に戻ってくれよ都!」

ミヤコ「・・・・私に嘘吐くんだ、ちゃんと話してっていったよね・・・?」

透「っ、待てって、ハサミなんて、どうするつもりだよ!?」

ミヤコ「分りきったこと聞かないで、でも大丈夫、ここならどれだけ殺しても、死なないから」

都「ダメ、透逃げてぇ!」

透「っ、なんだこれ、ドア、開かない!?」

ミヤコ「逃がさないよ、んっ!」

透「ぃ、あぁぁぁあああああ!腕、腕がぁぁぁああああ!?」

ミヤコ「避けちゃダメだよ、胸を一突きにして楽にしてあげるつもりだったのに・・・、
    けど、透が怪我したなら・・・」

透「何やって、待て!」

ミヤコ「私も怪我しなきゃ、ね!」

都「っ!?あぁぁぁあああああ!?なんで、なんで鏡の中の私まで・・・!?」

透「お前、何やって・・・」

ミヤコ「だって、私と透は鏡合わせ、透が右腕を怪我したら、私は左腕を怪我しなきゃ・・・」

透「そうじゃないだろ、俺たちそんなんじゃなかっただろ!」

ミヤコ「こうなるしかなかったんだよ、覚えてる?前髪の時の事」

透「小学校の頃・・・、あまりにも鏡合わせで気持ち悪くて・・・」

ミヤコ・都『前髪の分け目を左右変えたらお互い変えててまた鏡合わせに』(あわせるのが難しい場合はミヤコ役で)

透「覚えてるよ、忘れるわけない、あの時から、都はただの妹じゃなくなったんだから・・・」

都「なんでそれを知ってるの、私と透しか知らないはずなのに・・・」

ミヤコ「それはね、私が私だからよ」

都「っ!」

透「けど、二人共生きて、それぞれ幸せになればいいだろ!?」

ミヤコ「何?自分に言い聞かせてるみたいだよ、透」

透「そんなこと、そんなこと無い!」

ミヤコ「大丈夫、全部、分かってるから」

透「ひっ、く、来るな」

ミヤコ「透酷い、私を拒絶するんだね・・・」

透「やめろ、やめてく、っ・・・・・!」

都「透ぅぅぅうううううう!」

ミヤコ「ふふっ、これで、透はワタシのモノ、ふふふっ、あっははははは!」

都N「私と世界を阻む鏡が段々曇っていく、外が完全に見えなくなると同時に、意識が飛んだ」

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都「ん・・・・、ここ、は・・・、私の、部屋・・・、どうして、どう、やって・・・?」

ミヤコ「おはよう、私がここまで帰ってきてあげたんだよ」

都「っ・・・!」

ミヤコ「そんなに驚かなくてもいいでしょ、折角私の望みをワタシが叶えたって言うのに」

都「あ・・・・、そうだ、透・・・、私が、この手で、殺し、た・・・・、あ、あぁ、あぁぁぁあああああ!」

ミヤコ「もう、願い叶ったからってそんなに喜ばなくたっていいじゃんか」

都「これが喜んでるように見える!?おかしいんじゃないの!?」

ミヤコ「鏡、見てみてよ」

都「何言って・・・!え・・・、何、これ・・・」

ミヤコ「泣くほど嬉しかったんだね、満面の笑みで泣いて、どう?今の気持ちは」

都「嘘だ・・・、違う、私じゃない、これはお前だ、私じゃない、私じゃない・・・」

ミヤコ「違う鏡で見てみたら?」

都「映る場所だったらどこにでも居るくせに・・・!」

ミヤコ「じゃあいいよ、私はここにいるから、見てきて?」

都「分かったわよ!・・・・・っ!ほ、ほら、やっぱりここにも・・・」

ミヤコ「でしょー、それが本当の私の姿だよー!」

都「・・・・え、なんで、あっちから、声が・・・」

ミヤコ「もうこっちに来ちゃっても良いかな、ね?それが、私の、素顔」

都「違う・・・」

ミヤコ「違わない、透を独り占めできて、自分だけの物に出来て心の底から嬉しいの、
    もう他の誰にも渡らない、奪われない」

都「でも!もう、二度と話せないんだよ!?微笑みかけてくれるあの顔も、
  優しく頭を撫でてくれるあの手も、私が壊した、この手で・・・」

ミヤコ「大丈夫だよ」

都「大丈夫な訳ないじゃんか!」

ミヤコ「大丈夫だよ」

都「ふざけないで!」

ミヤコ「学校に行けば会えるから」

都「え・・・・・?」

ミヤコ「行けば分かるよ」

都「・・・・・・うん」

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透「っ、都、お、おはよう」

都「透・・・・、生きてた・・・・」

透「あぁ、生きてた、朝目が覚めてびっくりした」

都「うん・・・、でも、よかった・・・」

透「自分でやっといて?」

都「あれは・・・!」

透「・・・・いいんだ、分かってるから」

都「え・・・?」

透「ごめんな」

都「なんで透が謝るの?悪いのは私じゃんか」

透「こんなに追い詰めたのは、俺が・・・」

都「っ・・・・!」

透「・・・都?」

都「ごめん、ちょっとお花摘みに行ってくるね・・・!」

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都「嘘だ・・・、そんなの嘘だ・・・・、透の顔が血に染まって見えるなんて・・・」

都M「それが、嬉しいだなんて・・・・」

ミヤコ「表情と言葉が一致しないね」

都「だって、こんな感情、透が持ってるわけない、このままじゃ、私と透がどんどん違ってっちゃう・・・」

ミヤコ「大丈夫、もうすぐ分かるから」

都「・・・・本当に?」

ミヤコ「うん、大丈夫だから、絶対ね・・・」

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透「あいつ、大丈夫かな・・・、まぁ俺もあまり人の事言えないんだけど・・・」

都「ただいま、・・・待っててくれたんだ?」

透「ん、あぁ、心配、だったからな」

都「あ、ありがと・・・」

透「・・・・・なぁ」

都「な、何?」

透「生きてたんだし、あまり気にするなよ」

都「・・・・・うん、それじゃ、また後でね」

透「あぁ、また後で・・・、言われて、気にしないようになったら苦労しないよな・・・」

トオル「俺が気にしないなんて出来ないように、な」

透「・・・・そう、だな」

トオル「けど分かっただろ、都だって求めてるんだよ、俺だけじゃないんだ、そうだろ?」

透「けど・・・」

トオル「殺されても死ななかったんだ、じゃあ逆は・・・?」

透「そうなるとは限らないだろうが!」

トオル「なるんだよ」

透「そ、そんなの、信用できるわけ・・・!」

トオル「俺だって経験してるじゃねぇか、だって言うのに信用できないのか?」

透「・・・・100%は、言えないじゃんか・・・、それに、あれ、痛かったし・・・」

トオル「分かったよ、そんなに不安なら、オレが変わりにやってやるよ・・・」

透「それ、どういう・・・、っ!?」

トオル「そっちから見てろよ、俺」

透「なんだこれ、鏡の中!?」

トオル「さてと、都の教室はあっちだな」

透「お、おい、待てよ!」

トオル「安心しろよ、オレの映る所なら俺はいられるから」

透「鏡とかガラスの中なら・・・って事か・・・!くっ!」

トオル「ここだな、よっ」

都「ねぇ!早紀!理香子!皆!何これ、何で動かないの!?」

トオル「やぁ都」

都「っ、と、透?なんで透は動けてるの・・・?」

トオル「昨日の、忘れたのか?」

都「きのう・・・、もしかして、透、も・・・?」

トオル「あぁ、俺も、お前を他の奴に渡したくない、渡すくらいなら・・・」

都「はっ、あはは、あっははは、そ、っか、それじゃ心配する必要なんて、なかったんだ・・・」

透「はぁ・・・はぁ・・・間に合った、都!」

都「ごめんね早紀、カッター借りるね・・・」

透「みや、こ・・・・・?」

トオル「嬉しいよ、ちゃんと鏡合わせで嬉しいよ都!」

都「うん、私も、私も嬉しいよ、透!」

透「これ、どういう事だよ・・・、やめろよ、そうだ、都も俺と一緒で変な奴に唆されて・・・」

ミヤコ「変な奴って、私の事?」

透「っ、なんで、こっちにも都が・・・!?」

ミヤコ「昨日はごめんね、余計な所刺しちゃって・・・」

透「まさか・・・」

ミヤコ「そうだよ、昨日の私はワタシ、じゃあ、あそこにいる私は・・・?」

透「そん、な・・・・」

ミヤコ「ねぇ透、顔と声がちぐはぐ、だよ?」

透「はっ、はは、そ、そんな訳・・・・」

都「きゃあ!」

透「っ、都!」

トオル「俺に力で勝てるわけがないだろ、ちゃんと、鏡合わせにならないとな、ほら、見ろよ」

都「ぁ、その傷・・・」

トオル「あぁ、昨日お前に殺された時の傷だよ・・・」

都「素敵・・・、ねぇ、私も見て、私の胸、綺麗でしょ・・・?ちゃんと一緒に、して・・・」

トオル「あぁ、分かったよ・・・」

透「やめろ・・・」

トオル「これで、また鏡合わせになれるよ・・・」

都「うん、嬉しい・・・」

透「やめろ、都は俺のだ、お前のじゃない、やめろぉぉぉおおおおおお!」

トオル「都、愛、してるよ!」

透N「カッターが都の胸に突き刺さり、吹き出した血は視界を紅く染める、
   その時俺の心に沸き上がった感情は、歓喜そのものだった」

ミヤコ「やっと気付いてくれたんだね、透・・・」

透「都・・・、ごめんな、ずっと一緒だったのに、気付いてやれなくて・・・」

ミヤコ「いいんだよ、これで私たち、また一緒だよ・・・」

透「あぁ、また、一緒・・・」

ミヤコ「今は、ゆっくり休んで、また、明日・・・」

透「また、明日・・・・」

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トオル「上手く、いったね」

ミヤコ「うん、うまくいったね」

トオル「神様は残酷だ」

ミヤコ「愛し合う運命の二人を、血で繋げてしまうなんて」

トオル「この世に許されない愛なんてあっちゃいけないのに」

ミヤコ「まるで、あの頃の私たちみたい」

トオル「でも、もう二人は大丈夫」

ミヤコ「うん、今の私たちには、力があるの」

トオル「二人が、望む形で、永遠に一緒にいられる方法」

ミヤコ「誰にも渡さない、ずっと、二人は二人の物」

トオル「鏡の魔法」

ミヤコ「双子鏡の魔法」

トオル・ミヤコ『許されなかった愛の魔法』

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透「ん・・・、ここ、は・・・?」

都「昔、一緒に住んでた、家・・・?」

透「都、おはよう」

都「おはよう、透」

透「ほら、窓の外見てみろよ」

都「鳥が、空で止まってるね」

透「今なら、不安も、恐怖もないよ」

都「うん、私も、ずっと、鏡合わせだったんだね、私達」

透「あぁ、ずっと、逃げてただけだったんだ」

都「ねぇ透、私透が、透の命が欲しい」

透「俺もだよ、都が、都の命が欲しい」

都「ふふっ、一緒だね」

透「あぁ、一緒だな」

都「なんでか分からないけど、私、確信してるの」

透「ここなら、死んでも、また明日、生きてる」

都「考えてることも一緒、嬉しい」

透「それじゃ、そろそろ始めようか」

都「うん、胸が、疼くの、透に残してもらったこの傷が、疼くの」

透「俺もだ、都に残してもらったこの傷が、早くって疼いてる」

都「始めよう」

透・都『殺し愛を』


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シナリオの感想とか演じてみて台本としての感想とかいただけると作者がよろこぶかも・・・w