二人の距離


裕人(ゆうと) 大学生、皐月とは幼馴染、皐月の両親とも面識がある。
皐月(さつき) 高校生、裕人とは幼馴染、両親がお金持ち、過保護。


裕人♂:
皐月♀:


裕人「はい、今日の範囲はこれでおしまい、お疲れ様でした」

皐月「ほんと!?ねぇねぇ、今何時?」

裕人「ん、今は・・・、九時かな」

皐月「おぉー!凄いじゃん私!最速記録じゃない?」

裕人「そうだな、お陰で1時間も余っちゃったよ」

皐月「へへー、頑張っちゃったもんね!
   だから何かご褒美頂戴ー?」

裕人「んー、あ、いいのがある、ちょっと待ってて」

皐月「やった!なんだろ、楽しみだなぁ」

裕人「はい、これ」

皐月「ありがとー!・・・え、何これ?」

裕人「ちょっといい大学レベルの参考書」

皐月「えぇー!こんなの全然ご褒美じゃないんだけど!」

裕人「あれ、皐月って勉強好きなんじゃないの?」

皐月「全然好きじゃないよー!やれって言われるからやってるだけだもん!」

裕人「なんだ、そうだったのか、それじゃこれはナシだな・・・」

皐月「もー、センスなさすぎだよー」

裕人「はぁ、割と分かりやすくて良かったんだけどなぁ、
   久しぶりに使い潰した参考書だってのに・・・」

皐月「使い潰した?」

裕人「ん?あぁ、結構何回も読み返したぞ、しばらく愛読書だったし」

皐月「やっぱ頂戴!」

裕人「はぁ?別にいいけど、勉強好きじゃないんだろ?」

皐月「いいの、頂戴?」

裕人「あ、あぁ、んじゃどうぞ」

皐月「ありがと!へへー、裕くんがべたべた触った本だぁ・・・」

裕人「え?」

皐月「あ、なんでもないよー、なんでもないないー」

裕人「そ、そっか、ならいいけど・・・」

皐月「ふふっ、それでいいのー」

裕人「はぁ・・・、最近の若い子は分かんないなぁ」

皐月「そんな事いってー、3つしか年変わんないじゃん」

裕人「大学生からしたら高校生なんて若いって、
   周りの奴もみんな揃って言ってるよ、いいなぁJKって」

皐月「そんな変わんないと思うんだけどなぁ・・・」

裕人「変わるよ、周りの環境が変わるからね」

皐月「んー・・・、そっかぁ・・・」

裕人「うん、そうだよ」

皐月「むぅ、それじゃあ裕人は・・・」

裕人「先生」

皐月「やだ、裕人がいい」

裕人「だめ、今は家庭教師の時間でしょ」

皐月「でも私たち幼馴染でしょ?」

裕人「でもじゃない、今は先生と生徒」

皐月「・・・そんなんだったら裕人に家庭教師してもらう意味ないんだけどなぁ」

裕人「そう思うんだったら違う人に頼めば?」

皐月「それもやだ」

裕人「はぁ・・・、じゃあ皐月はどうしたいんだ」

皐月「やるなら楽しいほうがいいじゃんか、
   だから裕人にお願いしてるんだよ」

裕人「勉強は楽しい物じゃないだろ」

皐月「裕人は楽しくないの?」

裕人「俺は楽しかったよ、勉強好きだったからな、
   皐月はそうじゃないって言ってたじゃないか」

皐月「だから裕人にお願いしてるんでしょ!」

裕人「はぁ・・・、ねぇ皐月さぁ、本当は学校の授業だけで、今の成績取れるでしょ?」

皐月「・・・取れるよ、だから何?」

裕人「じゃあわざわざ家庭教師頼まなくてもいいんじゃないの?」

皐月「だって、ママが勉強しろって言うんだもん・・・」

裕人「ならもっといい人に頼んだら?意味ないじゃんか」

皐月「なんで」

裕人「ん?」

皐月「なんでそんな事言うの?」

裕人「はぁ・・・、折角お金払ってるのに、意味のない勉強したって勿体無いだろ?」

皐月「五回目」

裕人「え?」

皐月「ため息、五回目だよ、・・・私といるの、いや?」

裕人「・・・そんな事ないよ」

皐月「それじゃ楽しくない?」

裕人「そんな事ない」

皐月「じゃあなんでそんな事言うの?」

裕人「さっきも言っただろ、意味ない事にお金払っても勿体無いじゃんか、
   皐月のためを思って・・・」

皐月「そんなの嘘だよ、だって裕人はパパとママがお金持ちなの知ってるもん」

裕人「それは・・・」

皐月「・・・変わったよね」

裕人「そんな事ない」

皐月「変わったよ!裕人は変わっちゃったよ・・・」

裕人「・・・皐月だって変わった」

皐月「そうじゃないもん、私が言ってるのはそういう事じゃない」

裕人「わかんないよ、逆に皐月が教えてくれよ、なんでそんな事言うんだ」

皐月「・・・覚えてる?大きくなったら結婚してくれるって約束したの」

裕人「・・・覚えてるよ」

皐月「私、結婚出来る年になったんだよ?」

裕人「それ、いつの頃の約束だと思ってるんだよ」

皐月「私が5歳の時」

裕人「そんな頃の約束、大きくなっても本気で想ってる奴がいると思うのかよ!」

皐月「私はまだ本気だもん」

裕人「なんで・・・」

皐月「だって私は裕人の事大好きだもん!」

裕人「やめてくれ!」

皐月「っ・・・!」

裕人「許してくれる訳がないだろ・・・!あの二人が・・・許してくれるわけないだろ!」

皐月「・・・そんなの、言って見なきゃわかんないじゃんか!」

裕人「でももし、もしそんな事言って、会えなくなったらどうするんだよ・・・」

皐月「裕人・・・」

裕人「だから、だから聞きたくなかったし、言いたくなかった!
   どうせ踏み込めないなら、ずっとこのままで良かった・・・!」

皐月「裕人も、裕人も私の事・・・」

裕人「やめてくれって言ってるだろ!」

皐月「っ・・・、ごめんなさい・・・」

裕人「俺は、俺はこのままでいい、このままでいいんだ・・・」

皐月「ねぇ裕人」

裕人「・・・なに?」

皐月「付き合お?」

裕人「っ・・・!」

皐月「裕人も私の事好きなんでしょ、なら、付き合おうよ」

裕人「だから、無理だって・・・!」

皐月「やってみなきゃ分からないもん、・・・それとも裕人はいや?」

裕人「・・・・答えない」

皐月「いじわる」

裕人「・・・俺は、このままでいいんだよ」

皐月「このままこのままっていうけど、この関係ってなんだろうね?」

裕人「幼馴染で、家庭教師と生徒」

皐月「そっか、裕人はそれでいいんだ」

裕人「いいんだよ、それで」

皐月「・・・そっか」

裕人「・・・そろそろ時間だ、今日は帰るよ、
   次は明後日だから、よろしくね」

皐月「うん、またね、・・・意気地なし」





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こちらの台本は【テーマシャッフル台本執筆企画!】
という企画で書かさせていただいた台本です。

全体テーマ【憧憬】

【引いたセリフ・お題】「この関係ってなんだろうね?」・操り人形